論文要旨(Abstract)一覧

国際開発プロジェクトにおけるプロジェクト・パフォーマンスに関する考察
– ICTプロジェクト等のプロジェクト・パフォーマンスの比較 –

Kaimasu Masatoshi


一般的にはプロジェクトが当初の計画から遅延すれば、それに応じてコストが上昇する。プロジェクトの遅延に応じてプロジェクトコストは増大する。しかしインフラ整備などを行う借款に特化した国際開発プロジェクトではプロジェクトの遅延が生じたにも関わらずプロジェクトコストは増大せず当初の予算内に収まるものがほとんどである。かつ、大多数の国際開発プロジェクトはプロジェクトが遅延して、終了している。遅延は、主に借入人である途上国の入札手続き、承認や土地収用などの遅れに起因している。一方で、最終的なプロジェクトコストが当初の予算内になる理由に議論している先行研究がない。本稿では事例から国際開発プロジェクトのパフォーマンスについてスケジュールやコスト面から考察を行い、ICTプロジェクトとの一般的なプロジェクトとの比較する。


開発現場のデジタル化による情報と技術の標準化
~人の「ふるまい」をデータ化する取り組み~

荒木 辰也、 今井 達朗、 石田 兼司、 松山 新


昨今,AIやセンシング技術の急速な発展に伴い,数多くの企業で,先端技術研究・開発への人材シフトが進められている.一方で,各開発現場では高齢化した熟練者・高技能者の離職も増えており,キーパーソンの離脱によるチーム力低下のリスクが以前に比べて高まっていることは,とくに経験を重ねたプロジェクトマネージャは実感として持っているのではないか.これに伴い,これまで頼りにしてきた「人」に紐づく技術や知恵の伝承が大きな課題となっている.本稿では,高スキル者の「ふるまい」を可視化しデジタルデータ化する中で技能の標準化を図る取り組みについて紹介する.


プロジェクトマネージャのキャリアデザインに関する研究動向分析

一栁 晶子


プロジェクトをいかに成功裏に遂行するかという方法論やプロジェクトマネージャのスキル向上や育成に関する研究が盛んに行われているが,プロジェクトマネージャを対象にしたキャリアデザインに関する議論はまだ少ないのが現状である.2018年に実施した日本国内におけるプロジェクトマネージャのキャリアに関する文献の発表時期や発表件数の調査の結果より,国内での研究傾向が確認された.本稿では,国内に限定せずプロジェクトマネジメントに関するトピックを扱うジャーナルを中心とする文献を対象とし,プロジェクトマネージャのキャリアデザイン研究に関して議論されているテーマの分析を行う.また,3類型のテーマ(A.組織とプロフェッショナリズム,B.キャリアモデル,C.必要な能力・条件)に着目した文献レビューを行う.最後にこれらの結果からプロジェクトマネージャのキャリアデザイン研究における最新動向を考察する.


超回復を考慮した最適筋力トレ-ニング計画

伊藤 弘道、 伊藤弘道、 和田直也


アスリートは筋力トレーニングにより体力を向上させる.従来の筋力トレーニングでは,基本的なトレーニングメニューをコーチの経験に基づき修正して使用した.そのためトレーニングメニューがアスリートの体力の限界を越えてしまい,トレーニングを継続できない場合が生じた.一般に,管理は定量的データを用いて行う.プロジェクトマネジメントでは,品質・コスト・日程などについて定量的データで管理を行う.いま,アスリートの体力向上を一つのプロジェクトとみなすならば,定量的データを用いることで適切な管理が行えるだろう.トレーニング継続を挫折させるものとして,トレーニング後一定時間後に発生する遅れ疲労(DOMS)がある.また,トレーニングによる体力向上を説明する仕組みとして超回復(Superconpensation)がある.ここではアスリートの筋疲労とトレーニングによる体力向上効果を定量化し,体力向上効果を最大にする筋力トレーニング計画を示す.


オフショア開発を成功に導くための品質確保マネジメント

伊藤 陽子


システム基盤開発は,アプリケーション開発で使われる世界共通のプログラミング言語とは異なり,多種多様な製品が存在し,用途も様々である.そのためシステム基盤開発でオフショア開発を活用する場合,メンバ間でのより緻密なコミュニケーションが必要となる.しかし,メンバの多くは母国語と英語を主としており,日本語でのコミュニケーションが取りづらい.また,システム基盤開発の経験が乏しいことから,いかにしてコミュニケーションを取りつつ,日本での積み上げ式品質確保の考え方を伝授し適用させていくかが重要である.本稿では,これらの課題に対して,システム基盤開発プロジェクトにおけるオフショア開発を成功へ導くための取り組みを論述する.


要件定義フェイズにおけるプロジェクトマネジメントの一考察

今泉 貴則、 高橋 泰之、 桑原 貴、 井原 伸浩


 要件定義工程は、対象となるシステムの機能・非機能要件を定め、当該システムの開発に係るコストやスケジュールを計るためにも重要な役割を担う工程である。 一方で、本工程は後工程と比較すると、低コスト・短納期による成果を求められることが非常に多く、また顧客要求を漏れなく要件に落とし込んでいく必要がある。  本論文では、筆者が要件定義工程にPMとして参画した際に、発生した課題に対する対策とその効果を述べると共に、要件定義フェイズにおけるプロジェクトマネジメント手法のあり方についての考察を行う。


小規模多数プロジェクトマネジメントに着目した問題予兆検知の手法について

岩野 雄輔、 梅村 豊彦、 山田 佳則


当社の特定部門で社外事故や不採算プロジェクトを短期間のあいだに頻発させたことがあった.問題発生の要因を分析した結果、1人のプロジェクトマネジャ(以下,PMと略す)が多数の小規模プロジェクトをマネジメントしているケースで多くの問題が発生していることが判った.そこで,小規模多数プロジェクトのマネジメントにおける課題に着目した予兆検知手法および対象とすべきPMの抽出手法を検討した.一部の部門で適用・評価した結果,問題の予兆を検知することができ,上位管理者へのエスカレーションによって組織的な対応が推進できた.現在,全社で本格適用を開始しており,今後,適用結果をふまえて施策の改善・充実を進めていく.


RPAと監査ツールの組み合わせによる監査業務の効率化ついて

内田 孝、 北條 武


 2008年度から日本版SOX法が適用され、毎年SOX監査を実施している。近年、事業の拡大によりSOX監査対象の拡大が予想されている。また、新制度や新技術に対応していく必要もあり監査業務の拡大が予想されるがリソースは限られている。そこで、既存の監査業務を自動化し効率化を行うことで監査対象の拡大、新制度、新技術の検討といった監査業務の拡大稼働を確保することとした。監査業務自動化の実現はRPAで行うことを計画したが、RPA単独では難しい点への対応、より効率的な方法を検討した結果、他のツールと組み合わせることで実現を行うこととなった。このツールを組み合わせる対応が効果的であり、監査業務の自動化を効率的に実行できた。監査業務の自動化の結果、SOX監査の実稼働は監査自動化未導入の2015年度と比較し34%の削減となった。  本稿ではRPAによる業務の自動化の事例として監査業務の自動化を紹介する。また、RPAを利用した監査人としてRPA利用時の注意点と対応案を提案する。


今、日本のPMに求められるコンセプチュアルスキル

浦田 有佳里、 永谷裕子


PMI®がこれからのプロジェクトマネージャのコンピテンシーとしてタレント・トライアングルを提唱している.「戦略的およびビジネスのマネジメント」「リーダーシップ」「テクニカル・プロジェクトマネジメント」の3つの分野のスキルセットが必要と言っている.また,ロバート・カッツは「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つのスキルが必要であり,上位マネジメントになるに従い,コンセプチュアルスキルが必要となると言っている.近年,プロジェクトは複雑化し,QCDだけでなく,価値を創出することが求められてきている.このような時代に,必要なスキルとしてのコンセプチュアルスキルを紐解き,スキルを獲得する方法を考察する.


国際規格 ISO 21500(プロジェクトマネジメントの手引)の導入を、企業側の立場で考えてみる

榎本 徹


 国際標準化機構(略称ISO)は、2012年にプロジェクトマネジメントの国際規格ISO 21500(Guidance on project management)を発行しました。ISO 21500は技術的な内容などに変更を加えず邦訳され、JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)としてJIS化され、私たちにとってより身近な存在になりました。  今回の発表は、著書「ISO 21500から読み解くプロジェクトマネジメント」を元に、企業側(規格の使用者側)の立場で、ISOのプロジェクトマネジメントを導入する際に考慮すべき事項の幾つかについて事例を交えながら参加者各位と共有化します。


多国籍ITサービス・プロジェクト・マネージャの特性と価値観に基づく考察

遠藤 洋之、 内平 直志


ITサービス業界では, 米国企業による米印型国際間開発モデル(GDM)の確立と並行して, 日系企業による日中型オフショアモデルの確立と, 開発拠点のアジア太平洋(APAC)地域への展開が進められた.日系企業は日中オフショアモデルの延長として日亜GDMを試みながらも同モデルにおいては期待された効果を得られない例が見られる. ビジネスモデルの成否には法律・政治・経済等の外部要因も大きく影響するが企業においては自組織では対策を打てないものもある. 当論文では企業が自組織内で遂行可能な施策を検討するために, 日系ITサービス企業N社がそのAPAC域内拠点の現状把握の為に行った, Project Manager(PM)レベル判定やPM-Workshopから得られたPMの特性(品質/コスト/デリバリ(QCD)への優先順位等)や属性(現行ポジションの経験年数等)情報を元に, 同地域におけるPMの現状を整理し, 多国籍ITサービスにおけるPMレベル向上と多国籍プロジェクト管理法に関わる考察を行う.(本研究は2018年の研究に新たなデータと分析手段を追加し考察を深めたものである.)


クラウドシステム運用プロジェクトの観点と工夫

大内 昭洋


ユーザシステムの形態がオンプレミスの場合、運用プロジェクトは構築を担当したSIerが継続して行い、パッケージベンダはその後方支援に徹することが多い。しかし、システムのクラウド化が伸長する中で、パッケージベンダが自らSaaS型クラウドサービスを提供するようになり、運用プロジェクトを遂行していく主体へと変化している。本論文では、その変化について概観し、管理に必要な観点と工夫ついて述べる。


男子学生の恋活パーソナルプロジェクト
~第二報:行動計画実行フェーズ~

大城 健一、 三瓶 あすか、 下村 道夫


近年,若者の恋愛離れ,未婚化が社会問題となっている.その理由の一つとして,恋愛経験が少ないことから,恋愛の進め方やノウハウなどの知識が乏しいことが挙げられる.恋愛は独自性があり,出会い,アプローチ,告白といった複数のプロセスを経て達成させることから,パーソナルプロジェクトと捉えることができる.旧稿では,恋愛をプロジェクトと見立て,プロジェクトで一般に用いられる各種フレームワークや技法を適用することによって,恋愛を成功に導くための方法論を提案した.本稿は,それに基づいて推進しているパーソナルプロジェクトの具体的な実行状況について報告する.本研究の狙いは,恋愛活動のやり方が分からないため,恋人獲得の具体的行動に踏み出せない男子学生の一助となることである.


多国籍メンバーでの海外NGO支援プロジェクト事例

大津 真一、 原田 佳奈子


NPO/NGO団体等は、社会課題の解決に向けたプロジェクトに取り組んでいる。それらは、ビジネスプロジェクトとは違う社会課題解決に取り組むプロジェクトの特有の特徴を持っている。本論では、多国籍メンバーのチームで、インドにおいて現地NGOを1ヶ月支援したプロジェクトについての事例報告を行う。さらにその経験を踏まえ社会的課題に取り組むプロジェクトの特徴を整理し、プロジェクトマネジメントの適用可能性・有効性について考察する。このことはプロジェクトマネジメントの社会へのより一層の普及に貢献することができる。


プロジェクトマネージャ教育施策効果の検証

大南 正裕、 小山清美、 小川純平


プロジェクトマネージャの育成において,教育施策の直接的効果を定量的に測定して検証することは難しいと考えられている.しかし,何らかの定量的な指標で効果を測定し,教育施策や教育内容の改訂に結びつけることで,より高いレベルのプロジェクトマネージャを育成して行くことは可能である.本稿では,プロジェクトの目標達成率に絡めて教育(研修)の効果について検証を試み,一部の研修については,その効果が見られたことを報告する.


アプリケーション開発プロジェクトにおける品質マネジメント事例

小川原 陽子


近年,ITシステムは社会インフラとなり日常生活に不可欠になっている.それに伴い,アプリケーション開発プロジェクトにおいても品質への要求が高くなっている.これらに対応すべく,プロジェクトにおける品質マネジメントが重要であることは周知の事実である.弊社においても品質マネジメントに関する指針や管理ツールといったベストプラクティスが蓄積,活用されている.本項では,筆者が実際のプロジェクトでこれらの技法をベースに品質マネジメントの計画を策定して実行した際の取り組みを振り返り,分析と考察を行う.


VR(Virtual Reality)によるドローン操縦の実装    
~実績ゼロ・ノウハウゼロのプロジェクトマネジメント~

香川 義博


近年,ドローンが非常に注目されてきており,宅配や被災地域への医薬品運搬など,考えられる用途は様々である.またVR(Virtual Reality)も,その訳のとおり仮想現実を体験できる技術として脚光をあびている. 本稿は,ドローンの操縦をVRで実装する過去に例がないシステム要件に対し,実績やノウハウが全くない中で手探りしながらのマネジメント事例を紹介し,リスク管理やプロジェクトのコントロールについて考察する.


CVMSによるサービス評価モデルに関する研究
-航空事業における顧客動線フレームワークによる評価-

景山 彩香、 日高啓太郎


航空事業におけるサービス評価と言ってもあらゆる評価指標が存在する. また,フルサービスキャリア(以下FSCと称す)とローコストキャリア(以下LCCと称す)というサービスの違いについてどのような評価法が顧客と経営を俯瞰した上で妥当性を有するかについて議論の余地が存在する. 顧客と経営の両面を俯瞰する上で,フルサービスキャリアもローコストキャリアも顧客満足評価は必要であり,その手法はサービス終了後の点ではなく,サービスを受けている線という概念で評価すべきである.顧客満足度について多くの場合,点型の評価がなされているが,本研究では顧客評価について顧客動線を可視化した線型の評価として検討を行った. 本稿では,航空関連企業における航空券発券から保安検査場通過までのプロセスを評価対象とした.その際に,EVMS(Earned Value Management System)をサービス形態として発展拡張したCVMS(Customer Value Management System )を用い評価を行った. 今後の課題として,予約・発券から目的地到着までのプロセスを評価対象とすると共に,経営側におけるオペレーションコストを評価軸に加えることでより適正な評価が行える可能性を示唆する.


PMの暗黙知の形式知化によるプロジェクト成果の安定化

加島 一男、 加島一男


人材育成における能力の氷山モデルでは,能力を,形式知(知識・スキル・コンピテンシー等)と,暗黙知(あるべき姿・物事の捉え方・意思決定のしかた等)に分け,この両方が揃うことで成果を安定的に出すことができると考えている.プロジェクトマネジメントに関する人材育成では,形式知である知識体系としてPMBOKが,スキルとしてITSSが,コンピテンシーとしてIPAやPMIからその開発体系などが出され,これに沿った育成がなされている.しかし,一方の暗黙知については,十分な育成手法が無い.本稿では,プロジェクトマネージャ一人ひとりの暗黙知を形式知化する育成手法を紹介し,プロジャクトの成果を安定的に出すための人材育成について考察したい.


時系列と行動プロセスに基づくプロジェクト振り返りのためのフレームワークの提案

梶浦 正規、 渡辺 清孝、 角 正樹


PM教育でのプロジェクトの振り返りやヒューマンエラーの原因分析で活用される「なぜなぜ分析」では、適切な事象を対象として選定し幅広い客観的な視点から分析しないと、効果的な結果が得られない。しかし、ヒューマンエラーに関連する事象を抜け漏れなく記述する作業は煩雑であり、いつ、誰が、何を行ったかという事象の具体的な記述が曖昧になりがちである。本稿では、「何を行ったか」という人間の行動プロセスは“認識、判断、実行、確認”により構成されると考え、時系列と人間の行動プロセスの組み合わせにより事象の記述と整理を行う手法を提案し、その実施プロセスとPM教育分野での活用方法を説明する。


人工知能(AI)において過学習となる条件に関する分析

梶山 昌之


プロジェクトマネジメントにおいて,工数やコストの予測は重要な課題であり,重回帰分析を用いた工数モデルは予測のための有効な手法である.しかしながら,プロジェクトは複雑な要因が絡み合うものであるため,妥当なモデルを得るためには,人間の直観に頼る部分も多い.そのため,非線形な問題に対応可能な人工知能(AI)を工数予測の問題に利用することも検討されている.ところが,データ数が十分でない場合に,機械学習のモデルを適用すると,学習用のデータにはよく適合するが,未知のデータを正しく予測できないモデル(過学習)になることがある.本稿では過学習となる条件を統計的に分析し,この問題に対する対応方法について検討する.


プロジェクトマネジメントにおけるサービス・マネジメントの重要性

加藤 裕哉


IT産業では0から組み上げることより既存製品・サービスの組合せでシステムを提供するプロジェクトが多い。パッケージ製品、クラウドサービスの普及によりこの流れは更に加速している。 また、プロジェクトとして QCD をすべてクリアしてもプロジェクトのユーザー満足度が高くなるものではない。 ユーザー満足が上がらない要因にITベンダーのサービスの低さが無いだろうか?プロジェクトのユーザー満足の因子の一つとしてサービス品質の比率が重要でないだろうか? サービスの品質測定尺度である「SERVQUAL」をキーにプロジェクトのサービス品質を考察する。


プロジェクト人材の流動化に対する効果的ナレッジマネジメント

金井 駿也


労働人口の減少と人材獲得競争の激化が叫ばれている昨今,プロジェクトにおける人材の入れ替わりが頻繁に発生し,ナレッジを維持するために多くのコストをかけざるを得ない状況が想定される.本稿では,そのような人材の流動化が激しくなる世の中において,“人”に蓄積されたナレッジをなるべく“組織”に移転させることにより,新規参画メンバーの早期定着やパフォーマンスの向上を図るナレッジマネジメントを提案する.


レビューの量と質に着目した定量的品質管理の手法
― 試験仕様書の品質向上による運用後不具合の抑制 ―

河村 恵美


当社が開発する防衛システムはミッションクリティカルである.そのため運用後3ヶ月時点での不具合率0.01件/ks以下という高い品質目標を設定している.システムの品質向上のため運用後不具合を分析したところ,特に製造工程に起因する不具合が多く,試験が不十分である可能性が高まった.したがって試験仕様書の品質向上が課題である.本施策は品質検査・監査部門の立場から,プロジェクトが試験仕様書の品質を管理し,試験品質を向上するための手法を社内開発標準として確立する取組である.具体的な取組は「試験仕様書の品質状況の見える化」と「量と質の両面に着目した品質指標の活用推進」である.取組の結果2017年度の運用後不具合では,製造工程に起因する不具合は大幅に減少し,本施策の有効性を立証した.


システム理論にもとづく事故分析STAMP/CASTによるソフトウェアプロジェクトでの心理的安全の改善

日下部 茂、 日下部茂、 三輪東


ソフトウェアプロジェクトの成功には心理的安全が重要とされている.本発表では,システム理論にもとづく事故分析STAMP/CASTを用いることで,ソフトウェアプロジェクトで悪化していたチームメンバの心理的安全が改善できた事例を説明する.一次受注者と協力会社によって行われたソフトウェアメンテナンスのプロジェクトで,運用直前に欠陥が発見された.直後の調査では,個人レベルのスキルや知識不足が原因とされ,プロジェクトメンバ間の心理的安全が損なわれた.STAMP/CASTにより関連する判断や行動について系統的に分析することで,単純なスキルや知識以外にも様々な要因を抽出できたため,個人非難を回避しメンバ間の信頼関係を回復させることが出来た.


探索的テストの効果に関する定量的な調査と考察

熊川 一平


探索的テストは、テスト対象についての学習と、テスト設計・実行を同時に行う手法である。 探索的テストは、事前にテスト項目を設計するスクリプトテストに比べ、効率の良いテスト手法として知られているが、実際にどの程度効率的かと言った情報が乏しい。 そこで、我々は実際の開発における探索的テストの適用結果を収集・分析し、 スクリプトテストと比較することで、探索的テストのメリット・デメリットを定量的な形で明らかにすることを試みた。 本稿では調査概要と結果について述べる。また、調査結果を踏まえ、改めて探索的テストの効果的な利用方法について考察する。


PMロールのVisibility向上の施策について

熊坂 裕美


昨今のプロジェクトは様々な要因が重なり複雑化しており,PMがプロジェクトをマネージする難易度が日に日に難しくなっている.そう言った状況の中でもプロジェクト体制の中でPMは重要なポジションであり,必要不可欠な人材である.プロジェクトを取り巻く環境が複雑化している中でも,PM自体のモチベーションを向上させる必要がある.また働き手現象の中において,PMを目指す次の世代の次世代PM候補を増加させるアクションが必要である.PMモチベーションの向上、次世代PM候補の増加を目標に,PMの個人にフォーカスし,PMのロールをどのように外部内部へ見える化することができるかについて言及する.


リスクマネジメント研修の事例紹介
-リスク識別の観点にフォーカスしてー

黒木 弘司、 山内 美佐子、 大野 富、 木野 泰伸


リスクの識別はPMにとって難しい技術の一つである.特に初級PMにとって網羅的にリスクを識別する能力を身に着けることは,PMとして次のステップに進めるかどうかのチェックポイントとなる.リスクマネジメント研究会ではリスク識別時に必要となる観点の強化を目指し,研修開発者の意図に沿った回答を研修参加者に求める形式の研修ではなく,研修参加者それぞれの経験や知識を基にしたリスクの識別が行えるような研修の開発を試みた.本稿では,開発した研修事例の紹介と研修実施後のアンケートに対するテキストマイニングによる分析結果から,研修参加者の属性とリスクの識別方法や観点の変容との関係,及び今後の研修開発に関して得られた示唆を報告する.


サーバントリーダーシップの実践と有用性に関する考察

黒須 則之


プロジェクトを成功に導くためには機能的で生産的なチームが不可欠であり、そのチーム特性はメンバーのスキルや活動環境だけでは定まらず、リーダーシップに呼応する形でメンバーがフォローを行い活動することで徐々に形成される。リーダーシップは、従来のリーダーによる管理・指示を中心とする支配型リーダーシップと、1970年にロバート・グリーンリーフ博士により提唱されたサーバント型リーダーシップに大別されている。本稿では著者が担当したプロジェクトにおいて実践したサーバントリーダーシップの適用結果をもとに、その有用性について考察する。


オフショア・アジャイル開発を成功させる方法
― オフショア開発拡大,後工程の重大問題回避,利用部門の満足度向上に向けた抜本的な対策 ―

黒松 秀明


近年,世界的にアジャイル開発が主流になり,日本企業においても注目を集めている.一方で,オフショア開発の適用範囲が広がりを見せている.我々の組織には,三つの課題「オフショア範囲拡大」「後工程の重大問題回避」「利用部門の満足度向上」がある.我々は,これらの課題解決に,全ての開発工程をオフショア先と共に行うオフショア・アジャイル開発が最適と考え,SoR(Systems of Record)の老朽化対応プロジェクトに組織で初めて適用した.過去の研究結果や先行事例を基に,成功のポイントを押さえたスクラムチームの構築,集合研修とツールによる仮想大部屋化,サーバント・リーダーシップの発揮という施策により,QCDを遵守し,プロジェクトを成功に導いている.本施策により,オフショア開発範囲を1.7倍に拡大,OTにおける重大問題を0件に抑え,利用部門の満足度の高いシステムを実現し,組織の三つの課題に大きな効果を上げた.


メンタルヘルス研究会の紹介 ~10年間の歩みと成果~

小林 雅史


メンタルヘルス研究会は随時メンバーを受け入れながら,これまで10年間継続して活動してきた.この間,100回を超える定例勉強会に加え,北海道から沖縄まで各地域で10回のワークショップを企画し,多くの方々に参加いただきながら,プロジェクトにおけるメンタルヘルス不調の予防策について議論を重ねてきた.本稿では,こうしたメンタルヘルス研究会の歩みと共に,直近に東京で開催したワークショップの成果と,今後の研究会の活動予定について報告する.


大型プロジェクトにおけるマトリクス型組織の活用法

後藤 清昭、 太田 雄介


プロジェクトを横断した共通課題の解決を促進する為,バランス・マトリクス型チームを採用した.機能型チームのメンバーが,所属チームのリーダーとマトリクス型チームからの指示を受ける事で指揮命令系統が曖昧になり,プロジェクト全体が混乱するリスクがある.マトリクス型チームの適用時には,その責任範囲及び複数ルートからの指示が背反した際のコミュニケーション・ルートと判断役を明確にする事が重要である.本稿では超大型プロジェクトにおけるバランス・マトリクス型チームの適用事例とその効用について考察する.


ハイブリッドクラウド構築でのリスクマネジメント事例

齊藤 和昭


パブリッククラウドの信頼性が向上したことにより,これまでオンプレミスで構築されていた業務基幹システムをパブリッククラウド上に構築する事例が増えている.クラウド・バイ・デフォルトの原則に従い、さらにその流れは加速することが見込まれる.一方で,機密性や連携システムの制限などから、オンプレミスで稼働させなければならない機器も存在するため,パブリッククラウドとオンプレミスそれぞれの特性を理解したプロジェクトマネジメントスキルが必要となる. 本稿では,筆者が経験したオンプレミスとパブリッククラウドを利用したハイブリッドクラウドシステムの構築におけるリスクマネジメントの取組事例を報告する.


擬似ミニプロジェクトに人件費を取り入れる

櫻澤 智志


筆者は,北海道情報大学におけるプロジェクトマネジメント講義において,「身近な材料で作るタワー」の構築プロジェクトを通して,プロジェクトマネジメントの重要性を教えている.本件は既に研究発表大会や学会誌にて紹介しているが,効果的なコスト・マネジメントの指導手法を課題の一つとして挙げていた.そこで,2018年度は,初の試みとして,コストの制約条件に「人件費」を加えた実習を行った.その結果と学生の意識の変化について紹介し,改めて,コスト・マネジメントの効果的な指導方法のあり方を考察する.


大規模システムの保守開発プロジェクトにおけるトラブル未然防止に関する対策事例

迫 佳志


システム開発プロジェクトでは,プロセス改善等は後手に回りがちであり,その結果発生するトラブルが後を絶たない.その一方で,保守開発プロジェクトにおいて求められる品質はプロジェクトが継続するに連れて高くなり,対象のシステムが大規模で複雑になるほど要求レベルを満たすことが難しくなる傾向にある.本稿では,保守開発プロジェクトで散見されるトラブルを筆者の実体験を交えながら整理し,それらを未然に防ぐための対策事例を紹介する.


リスク用語提示による情報セキュリティ監査支援

佐藤 直樹


情報セキュリティの事故・事件は会社の信用と会社の経営にも大きな影響を及ぼすので,経営陣が真剣に対処しなければならない重要な問題になってきている.今日のビジネス環境では,セキュリティのマネジメントはビジネスのマネジメントと同様に重要である.特に,企業機密とその管理状況に関して情報セキュリティ監査を実行することによって機密の情報漏えいや不正侵入に起因する事故を防止することが重要である. 監査人がまだ特定していない潜在的なリスクに関連する言葉を,リスク用語とし.監査人が特定したリスクの用語から潜在的なリスクの用語を推定する方式を提案する.潜在的なリスクに関連する用語を特定するために,潜在的なリスクの単語と,監査レポート内の単語に基づいて,特定されたリスクとの関係を推定する.


人工知能開発プロジェクトにおけるトラブル分類体系の提案

渋谷 岳人、 森本千佳子


社会において人工知能開発が広がりを見せている中,人工知能に対する期待は未だ過剰であったり,あるいは逆に懐疑的であったりしている.人工知能開発のプロセスも必ずしも体系づけられたものにはなっておらず,従来のシステム開発との違いから様々なトラブルに面している.しかし,現状はそれらを俯瞰して捉える術がなく,場当たり的なトラブル対応が発生している.本研究では,従来のITシステム開発におけるトラブル分類を拡張することで,人工知能開発の開発プロセスにおけるトラブルを体系的に整理する手法を提案する.本手法を用いることで,人工知能開発のトラブルを俯瞰的に捉えて識別することが可能になり,今後の人工知能開発の一助となることが期待される.


操作ログと業務重要度分析による効果的な運用テストの実践

正司 和寛


自治体における情報システムの他社リプレースにおいて,稼動後にお客様からシステムに対する要望や質問が多発する傾向がある.お客様が,要件定義の抽出や運用テストを実施する時間を十分確保できないことが要因である.このような状況ではベンダ側が主導的にお客様の運用テストを支援していく必要がある.本稿では時間的な制約条件のもと,お客様の業務重要度による分析とシステム操作ログの分析から効果的なテスト計画を立案し,ベンダ主導による運用テストの実践を提案する.提案方法の実施事例について評価した結果,稼動後のお客様からの問い合わせを目標の指標値内に低減させることに成功した.


工程着手前の事前評価による工程終了時の品質評価の質を高める取組

城 祐太朗、 斉藤 晃一、 八木 勇人


システム開発において,各工程終了時に品質評価を行い,プロジェクトマネージャ(PM)が次工程に着手する承認を行うことは重要である. PMは,報告内容の妥当性を確認するため,様々な要素を鑑みて判断することが求められる. しかしながら,判断材料は多岐にわたる一方で限られた時間内に判断する必要があるため,報告内容の妥当性を正確に見極めることは困難である. そのため,多くのプロジェクトにおいて,都合よく後付けされた説明を基に判断を実施しているのではないでしょうか. この問題に対し,各工程着手前に品質の事前評価を行い,各工程終了時の品質評価の判断の質を高める取り組みを試行した.


個人情報を取り扱う開発プロジェクトにおけるPMOの役割

菅原 将哉


 開発プロジェクトにおいてサービスインを迎えるにあたり、お客様の支援としてITベンダーが移行フェーズで本番データを扱うことがある。そこでは、第三者的な役割としてセキュリティ管理を担うPMO(Project Management Office)が必要となる。なぜなら、これから想定されるであろうリスクの根本的な解決策もしくはその代替策を、お客様とどのようにコミュニケーションし、どのようにプロジェクト内に展開していくか、といった事前の策定と合意が重要となるからである。本稿では、開発プロジェクトにおける移行作業を対象に、セキュリティ・リスク軽減の考え方と展開方法、およびPMOのあり方について考察する。


新米国情報セキュリティ要件(NIST)の適用に対する日米雇用慣習等の相違による日本的PM(プロジェクト管理)の在り方

鈴木 岩雄


本来2017年12月末迄に、米国との契約(DoD:米国国防総省)がある日本の企業は、新情報セキュリティ要件(NIST:米国標準技術研究所)の適用を要求されていた。その要件にはフローダウンという要件(関連する下請け企業まで適用)もあり、現在大きな問題となっている。日本では、ISOに基づくISMS(認証)がデファクトスタンダードのような状況である。ISMSとNISTを比べると要件の重複点もあるが、しかしNISTはサイバーテロ(情報漏えい等)を焦点としている。日米の雇用慣習を比較すると、米国は転職がキャリアアップであり、ある意味での外部労働市場である。日本企業は終身雇用(信頼関係を保持する)等の内部労働市場であり、日米の雇用慣習等には顕著な相違点がある。本投稿は悪意のある内部脅威(情報漏えい)対策を焦点とし、過去の事例を含めて米国のセキュリティ要件に対する日本企業でのプロジェクト管理について在るべき姿を示す。


PPPマネジメントにおけるベネフィットの考察

関口 明彦、 関 哲朗、 吉田 知加


プロジェクト,プログラム,ポートフォリオマネージメント(PPPM)の概念は一般化しており,既に多くのPM関係者に浸透している.しかし,これらを総合的に適用し運用する仕組みについては,必ずしも十分に整理されているとは言えず,実務でPPPMを精緻に運用している事例はほとんど報告されていない状況にある.また,PPPMを運用する際の中核的指標であるベネフィットについては,その概念が曖昧であり,日本においては実務に落とし込む段階で陽にベネフィットをマネジメントの対象として設定・運用する慣行は未だ実践の段階には至っていないように思われる.このような実態を踏まえ,本研究ではPPPMにおけるベネフィットの概念,役割,運用についての考察を実務の視点から行った.これにより,ベネフィットの実務的な活用の基礎を示すことができた.


ベイジアンネットワークを用いた環境不適応要因の分析

関根 晴矢、 関根晴矢、 村松康汰、 武田善行


環境不適応を原因とした就学・就労困難について,その原因を解明し,対応法を確立するために,これまで多くの研究がなされてきた.本研究では,多様な他者との関わり合いの中で互いの考えや立場を理解し,交流や協働を行う為に必要な能力がどのように影響しているか分析する.大学生を対象に,学生不安尺度,大学生コミュニケーション評価,グループワーク経験数等を質問紙調査に基づき計測した.得られた結果を基に,どのような要因が大学生活不安に関与するのかを分析する.結果として,大学生活不安を抱える学生の特徴を明らかにし,それらの学生にどのような施策を講じるべきか考察する.


マルチベンダー体制でのOpenAPI基盤構築に関する考察

曽我 貴博


近年のFinTech市場の急拡大にて、金融機関にてFinTech関連プロジェクトが逐次立ち上がっている。APIを外部開放するOpenAPI基盤には既存システムとの連携は欠かせない。本稿ではOpenAPI基盤構築プロジェクトの実経験から、先進性のあるプロジェクトにてマルチベンダー体制でのプロジェクト運営とは何かを考察する。


オープンソースプロジェクトに対する確率微分方程式モデルに基づく開発工数の非効果的投入確率の推定

曽根 寛喜、 田村慶信、 山田茂


ソフトウェアプロジェクトの開発工数を推定することは,進捗状況を管理する上で非常に重要となる.特に,オープンソースプロジェクトにおいては,開発者のスキルレベルの違いや開発環境などの要因が,オープンソースソフトウェア(Open Source Software,以下OSSと略す)開発に必要とされる投入開発工数に影響を与え,時間の経過とともに複雑に変動させていると考えられる.本研究では,手戻りが発生するような,生産的ではない開発工数の投入確率,すなわち開発工数の非効果的投入確率を考慮したWiener過程に基づく開発工数予測モデルを導出し,OSS開発プロジェクトの安定性について考察する.


デジタル・トランスフォーメーションによるPMO活動の高度化

高田 淳司、 高田淳司


全社PMO組織は多数のプロジェクトのリスク状況を監視することにより、リスクを早期検知し、不採算プロジェクトの発生を抑止する活動を行っている。このPMO活動は人的作業中心のため、限られたリソースの中での活動となり、規模等による監視対象の絞込みによる監視漏れや、PMOが保有するスキル・経験により検知結果が左右されるという現実がある。 本稿では、近年発展が著しいAI技術をはじめとするデジタル技術をPMO活動に適用し、PMO活動の高度化・効率化を実現するデジタル・トランスフォーメンションの取組みについて紹介する。


ポスト紛争期の復興支援プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの役割
―ソロモン諸島における開発援助プロジェクトを事例として ―

高橋 麻奈


大規模な災害や紛争が発生した際の復興支援・平和構築段階においては、「非日常性」がプロジェクト計画・実施の過程に影響を及ぼすことがあり、ドナーはそれらを考慮する必要がある。特に復興支援段階における開発援助プロジェクト(International Development Project: IDP)においては、開発援助の有効性や効率性が大きな影響を受け、平時においては正常に機能する開発援助プロジェクトも、復興支援段階においては異なる作用を生む可能性がある。本稿では、紛争後国家における開発援助プロジェクトの計画・実施過程におけるドナーの役割について考察し、特にガバナンスの脆弱な国家に対しての適切なアプローチ方法について、事例研究を通じて明らかにすることを目的とする。


超上流のリスク低減活動による課題プロジェクトへの取り組み

高谷 幸一


NECグループでは顧客への提案および見積段階からプロジェクト完了に至る全フェーズにおいて、発生するリスクに対する規定、ガイドラインが定められ、グループの各事業体において事業特性に応じたリスク対策、失敗の未然防止が組織的に行われている.地方公共団体の調達案件では顧客の予算確保・執行や契約等の特性において、課題プロジェクト化するリスクが高い状況にある.本稿は,主に案件の公告から提案、見積フェーズ(以降、超上流)の早期段階における、調達仕様書のアセスメントによるリスク低減活動について紹介する.


地域の起業家と連携した学生プロジェクト立案支援コミュニティの形成

田中 秀和、 湯浦克彦


浜松市にキャンパスがある静岡大学情報学部では、情報システムの開発と共にシステムを含むビジネスの計画のマネジメントについても授業、演習や課外活動としてのコンテストを行っている。また、浜松市地域の社会人においては社会人向けのコンテストや起業支援活動が広く行われてる。ところが、ビジネスに関する知識の少ない学生たちにとっては、ビジネスのニーズを収集することが困難で十分に洗練されたビジネスモデルを提案できない実情があった。そこで、浜松市地域の社会人を含めたビジネスプラン作成支援コミュニティを形成し、ビジネスプランに対するアンケートの回答や協働ビジネスの検討を促進する方法を提案する。


ステークホルダーの当事者意識を高めるコミュニケーションのポイント

田村 正人、 高橋幸雄


短納期・低価格のシステム導入を求められる昨今の状況で,業界特性に留意したマネジメントが出来なければプロジェクトの成功は難しい.特にステークホルダーの職種や役割が多種多岐にわたる場合,ステークホルダーがそれぞれの役割や責任を果たすことができずに納期遅延や費用増大などのプロジェクト問題が発生するケースがある.本稿はステークホルダーに戦略的にアプローチし信頼を得る事により,プロジェクトに対する当事者意識を高めるマネジメント,コミュニケーションのポイントについて述べる.


24時間稼働システムを守るSEの働き方改革

千葉 嗣都、 千葉嗣都


IT業界では,年間総実労働時間・所定外労働時間が全産業平均に比べて高水準であり,長時間労働が問題視され対策が求められている. IT業界に対する「働き方改革」は,システム開発中の計画外の事象に対する解決策について触れられているが,運用・保守については,触れられていない. システムの運用・保守を担当するSEの現場では,システム障害が発生すると日中・夜間問わず対応に迫られ,「働き方改革」どころではなく,システム障害を復旧させることに全力で取り組む必要がある. 本論文では,担当プロジェクトのシステム障害対応状況から,次期システムでのSEの保守対応時間の軽減,つまり,「保守の働き方改革」について提案する. 保守対応時間の軽減の仕組みとして①調査開始前の作業を無くす,②リモート保守が行えることを検討し,次期システムに取込みを行った結果,保守対応時間を約20%削減した.


不採算プロジェクトの予兆検知におけるAI活用の取り組み

常木 翔太、 中田 隆幸、 祐成 光樹、 大井 雄介、 高田 淳司


全社PMO組織は、社内の遂行中プロジェクトをモニタリングすることにより、潜在リスクを早期に検知し、不採算プロジェクトの発生を抑止することが求められる。 本稿では、過去の不採算事例をAI技術を用いて学習することで、遂行中のプロジェクトから短時間かつ早期に不採算化のリスクがあるプロジェクトを検知する取り組みについて紹介する。


全社リスク審査
- 運用の確立、これまでの取り組み -

鶴山 登美子


プロジェクトのリスク予測をタイムリーに行い、重大な損失を未然に防ぐことを目的とした「リスク審査」を2009年度から実施している。 「リスク審査」には、経験豊かなリスク審査人が第三者の立場で、工程開始からサービス完了までの一連の審査に出席し、リスクの指摘及びアクションプランを作成している。 「リスク審査」の実施タイミング、審査の観点、インプット・アウトプット資材、リスク審査人の視点等について報告する。


リビングラボを中心とした R&I クラスターの戦略的形成:学術研究都市における健康関連の研究機関と産業の集積を目指して

都甲 康至、 都甲康至


本稿は, 学術研究都市におけるサイエンスパーク開発において, オープン・イノベーションの新たな概念として, 欧州で注目されているリビングラボに着目し,それを中心とした健康関連産業クラスターを形成するための戦略的アプローチ方法について考察したものである. まずバックキャスティング法により将来ビジョン提示し, 次に事例調査からサイエンスパーク開発には, 世界的に注目される研究成果の創出と, その事業化, 産業化などが重要であることと, 地域に密着した民間ディベロッパーの重要性について考察した. 加えて, クラスターの形成に必要な業種などの調査結果から, リビングラボの創出や機能強化方針, フレイル予防に関する事業創出の可能性について考察した.


IT紛争のケースをプロジェクトマネジメントの観点でひも解く(続編)
~ビジネスアナリシス・スキルを磨く~

永谷 裕子


筆者は2011年より東京地方裁判所のIT調停・専門委員を務めている. 調停・専門委員の役割は, ITシステム開発の専門家として, IT紛争事案の解決の道筋のアドバイスを調停及び裁判関係者に進言することである. 長年に渡る筆者のIT紛争案件に接した経験から, 紛争に至った主要因を受注者であるITベンダー側のプロジェクトマネジメントの観点から紹介する、そして、昨今のプロジェクトに必要なビジネスアナリスト・スキルの重要性について事例とともに紹介する。さらに, 要因の傾向を分析することで見えてくる日本のIT開発における課題と対策を紐解いてみる.


開発案件におけるオフショア適用領域拡大の事例報告

西村 剛、 奥野 雅史


現在,オフショアの活用は,ソフトウェア開発,業務系アウトソーシングまで適用され,コスト削減の手段として確立している.我々のシステムにおいても,ソフトウェア開発に適用し,一定の成果を得ている.しかし,既存システムのソフトウェア開発に対する適用では,業務仕様の理解度を該当するプロジェクト内で確保することが難しく,下流工程(製造)以降に限定していた.そのため,コスト削減の効果が限定的にならざるをえなかった.本論文では,連続する複数のプロジェクトを利用して,理解度の向上を図り,適用を上流工程に拡大させるために実施した施策とその効果を事例として紹介する.


大規模プロジェクトにおける運用工数の「見える化」への取り組み

根本 祐輔


近年の運用ビジネスでは,ITコストの削減のための取り組みが特に期待されている.そのため,運用現場では運用コストの削減,妥当性の証明を要求されており,運用工数の「見える化」が必要となっている. しかしお客様の要求レベルに応える「見える化」を実現できている現場は少ない. 本論文では大規模プロジェクトで運用工数の「見える化」に取り組んだ事例を紹介する. 本取り組みによって運用現場の実態を「見える化」するための仕組みを企画・実現した. 成果として,運用ビジネスの拡大や顧客満足度の向上を実現している.


機械学習エージェントを用いた量産販売型製品開発プロジェクトのシミュレーション

林 努、 岡田公治


プロジェクト挙動シミュレータを用いて膨大なプロジェクトマネジメント経験を蓄積させることでプロジェクト評価基準に応じた準最適なプロジェクトマネジメント行動ルールを機械学習するプロジェクトマネジャー学習エージェントを実装可能であることが,先行研究により示されている.しかしながら,そこではIT開発プロジェクトのような一品受注型プロジェクトのみを対象としていた.本稿では,対象を自動車や家電製品のような量産販売型製品開発プロジェクトへと拡大し,プロジェクト評価基準をプロジェクト視点で与えた場合とプログラム視点で与えた場合で,学習された準最適なプロジェクトマネジメント行動ルールが異なることを確認した.


オフショア開発を成功へ導くプロジェクトマネジメント手法
~大規模プロジェクトでのオフショア活用におけるQCD追及のメソッド~

福吉 尚太


本論文では,オフショア開発で発生する課題と,SEの現場から生まれた対策「オフショア開発マネジメント手法」について説明する.紹介するプロジェクトでは,作業開始早々にオフショア開発の現場で,進捗遅延が発生した.進捗管理では対策として,「三次元思考によるスケジュール作成」「GDC作業実態の可視化」に取組み,海外拠点の実態把握と遅れの原因特定を行った.加えて,オフショア開発の成果物の品質課題に対しては,「チェックシートのモデリング化」「課題QA管理に対するリソース計画」を行い,品質を作りこむ仕組みを構築した.オフショアのメリットを最大化するプロジェクトマネジメント方法論の構築に手助けとなれば,幸いである.


日本人PMが海外環境下でパフォーマンスを発揮するための考慮点

舟木 将


筆者は,海外のトラブルプロジェクトをリカバリーした経験を持つ.金融ミッションクリティカルプロジェクトのトラブルリカバリーの依頼を受け赴任,約1年間以上PMとして現地ローカルメンバーをリードし,成功裡のサービスインを達成した.本論文は筆者の経験から,日本のPMプロフェッションとしての経験・資格を持つ日本人が海外の文化・手法・環境下にあるプロジェクトを実践的に効果的にコントロール・推進する際に直面する問題点とその考慮点を解く.


新入社員に対するプロジェクトマネジメント教育とキャリア形成の課題

古川 夏帆


新入社員がプロジェクトマネージャーとしてのキャリアを決断する際には様々な課題がある.筆者が受けたプロジェクトマネジメント研修を現場でどのように活かしたか,また活かせなかったことは何か,具体例を示しながら,特に教育とキャリア形成の視点から課題を明らかにし,不足が深刻化しているプロジェクトマネージャーを増やすために必要な策を考察する.


オフショア開発における設計者・開発者間の円滑なコミュニケーションの実現に向けたSlackの活用

堀口 琢磨


オフショア開発はコスト削減,リソースの有効活用を目的に,多くのアプリケーション開発プロジェクトで導入されている.しかし,設計者・開発者間の文化,言語の壁を原因とする品質低下が課題となっており,この課題の解決策のひとつとして,設計者・開発者間の円滑なコミュニケーションの実現がある.本稿ではアプリケーション開発プロジェクトの開発局面における設計者・開発者間のQ&A対応に焦点を当て,Slackを活用した事例の紹介,また,他の手法との比較と考察を行う.


システム開発のグループ演習における組織の管理パラダイムに応じた個人活動の評価

松永 紋佳、 松永紋佳、 湯浦克彦


静岡大学情報学部においては、システム開発の技術やマネジメントを学ぶためにいくつかの演習科目を実施している。そこでは、学生のグループそれぞれに管理方法を委ねている。典型的には、F・ラルーが提唱するメンバーの自主性を重視するティール型組織と、グループの目的達成を重視するオレンジ型組織の2つの管理パラダイムのいずれか、もしくは混合型が採られている。本研究では、以上3つのパラダイムへのメンバー個人の活動の適合度を、学生の振り返りレポートの分析をもとに評価する。また過去の学生のレポートを参照して、学生の活動適合度を高めるための激励を含むフィードバックを効率よく作成する方法を開発した。


オフショア開発におけるプロジェクトマネジメントのコツ
~フィリピンにおける業務経験を踏まえて~

丸谷 和花


富士通では,世界8か国にオフショアサービスの拠点を展開している.筆者は,その1つであるフィリピングローバルデリバリーセンターに勤務し,日本向けの業務アプリケーション開発を担当した.その経験を踏まえ,オフショア開発を成功させるためのプロジェクトマネジメントのコツを提案する.第一に,自身の思考の癖に気付き,アサーティブコミュニケーションを使用し,コンフリクトを防止する.第二に,オフショアメンバのモチベーション向上のため,日本から積極的に働き掛ける.第三に,スキルセット・マインドセットの多様性を理解し,進捗や品質の管理方法を工夫する.最後に,自律改善活動等,オフショア拠点との連携を深化するための取り組みを提案する.


リーダーシップ教育でのe-ポートフォリオを活用した学生同士の振り返りの実践とその効果

丸山 智子、 白石 千遥、 井上 雅裕


理工系大学大学院修士1年生(約80名)を対象とした必修科目「システム工学特論」の中で、リーダーシップ教育を実施している。本リーダーシップ授業は、体系的なアクティブラーニングで構成されている。学修行動の記録、そしてアセスメントの手段としてe-ポートフォリオを導入している。学生の成長を促すには、ポートフォリオに記載された行動記録の振り返りが重要である。しかし、大人数クラスのため、教員が個々の学生に振り返りを行うことは困難である。今回、大人数であっても、自らの行動改善への気づきが得られるような振り返りを実現するため、学生同士の振り返りを実施した。本発表では、その相互振り返りの実施プロセスと効果について報告する。


新人職員向けProject based learningの要諦

宮田 寛子、 五味史充、 井之川幸彦


昨今,Project Based Learning(以下,PBL)は標準的な手法として新人研修に多く取り入れられている.本年度,当社では一部の新入社員に対して5か月間に渡る実プロジェクトを題材としたPBLを「Fastpath」と名付け,導入した.本稿では「Fastpath」の設計思想と期待効果を紹介し,この新しい試みを振り返り,その成果を検証する.その検証結果からPBLを実施する際の要諦を考察する.


シニア層を対象とした学び直しプログラムにおけるPBL型科目

三好 きよみ、 板倉宏昭


公立大学法人産業技術大学院大学では、起業に挑戦するシニア層のための学びの場として、起業に必要な知識及びスキルを短時間で修得できるよう、大学院教育レベルでの学び直しのためのプログラムを提供している。このプログラムでは、基礎科目として、知識及びスキル修得科目、事例研究型科目として事業開発手法科目、PBL型科目として、業務遂行能力経験科目にから構成されている。本論文では、PBL型科目に参加する受講生における、プログラム受講に至った動機や職業経験、今後の構想について、インタビュー調査からの報告を行う。また、その結果から、PBL型科目の設計について知見をとりまとめる。


サーバントリーダーのための協調的チーム構築手法の提案
~MEHモデルをベースにしたレゴシリアスプレイ®の適用~

森本 千佳子


昨今のシステム開発プロジェクトはますます不確実性が高くなっており、その一つの解決手法としてアジャイル・アプローチが多く取り入れられている。アジャイル・アプローチでは協調的なチームを重要としている。協調的チームづくりのためには相互理解が重要なことは言うまでもなく、アジャイルチームを率いるサーバントリーダーにも高い人間関係のスキルが求められている。しかし、短期間にチームメンバーの相互理解を促進し協調的なチームを作るのは容易ではない。そこで本稿では、人の無意識をレゴブロック®を用いて見える化するレゴシリアスプレイ®手法を用いた事例を用いて、その活用用と効果についてMEHモデルを用いて解説し、協調的なチーム構築手法を提案する。


法政大学「ITCケース研修」授業プロジェクトの計画と実施の工夫

山戸 昭三


法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科は、2018年度「ITCケース研修」授業を始めた。本授業を始めるにあたって「ITCケース研修修了要件」を満たすようITコーディネータ協会と実施内容を調整し、関連する授業としてPMP資格の受験要件にもなるように「プロジェクトマネジメント」授業を新規に設計した。本論文では、本学の社会人学生を対象とした授業の企画、座学とチーム演習の進め方の工夫、受講生からのモニタリングとコントロール、学生からのフィードバック、今後の課題について、プロジェクトマネジメントの観点から分析し論ずる。


ソーシャルPM研究会の紹介
-街づくりプロジェクトとソーシャル・プロジェクトマネジメント-

山本 智昭、 吉田憲正、 千田貴浩


現在,PM学会におけるソーシャル・プロジェクトマネジメント研究会では,社会インフラプロジェクトの事例研究として,総務省の「ICT街づくり」や東日本大震災の復旧・復興の街づくりを研究テーマとし,ICTプロジェクトマネジメントの視点から,知見・知識の集積を行い,知識や理論の体系化を試みている.このようなプロジェクトを「どう立ち上げ,どういう点に注意しながら,どう発展させていくか」についてはノウハウが必要でありながら,知識の共有化が図られていない状況にある.当研究会では,その対応として,「ICTスマートタウン」プロジェクトの設立側に立ち,導入・展開における基本的な考え方,留意事項などを実証プロジェクトの成功例・失敗例などから整理し,ガイドラインを作成した.これにより,新たな「ICTスマートタウン」プロジェクトの考え方と手法を広く社会に発信するとともに,それによる地域活性化,地方創生を推進することを目的としている.


ポートフォリオマネジメントと企業の事業計画マネジメント

吉田 憲正


プロジェクトの現場で,ポートフォリオマネジメントは必要とされていない.ポートフォリオマネジメントが必要とされているのは,事業戦略に関わっている経営者やそのスタッフであり,具体的には事業計画のマネジメントだと考えられる.ポートフォリオマネジメントの事業計画マネジメントへの適応について考察するとともに,ポートフォリオマネジメントの研究に関する懸念事項について考察する.


情報学ソフトウェアエンジニアリング領域における基準・知識体系と教育理論の考察
‐ ソフトウェア開発プロジェクトの知識基盤として -

吉田 知加、 関 哲朗、 関口 明彦


日本では,情報社会の到来によって情報に関する技術者の育成や研究の深化が望まれる様になっている.その様な社会の需要に対応すべく,大学では1980年代から独立した「情報学部」が設立された.その中のソフトウェア工学に属する多くの教育科目については,知識基盤の系統的教育が主体となり実施されている.そして,文科省,情報処理学会,IEEEなどの団体・機構は,それに関わる参照基準,カリキュラムそして知識体系を提示している.しかし、様々な教育理論が生まれる中で,それら基準・標準の位置づけや相互の役割について考察された研究は見つけられない.今回の論文では,情報学の,特にソフトウェアエンジニアリング分野に関わる参照基準,カリキュラム,知識体系を整理すると同時に,昨今情報教育に適用される教育理論を確認する.また,将来のソフトウェア開発プロジェクト人材の知識基盤として,PMBOKと共にこれらを学士過程教育で如何に包有するかを考察する.


プロジェクト組織と密着した、真のPMOへの変革活動

吉永 誠司、 田中幸喜、 長澤泰司、 佐藤一宏、 豊雅彦、 神野正典


PMOグループとしては、プロジェクト組織幹部と意識共有のもとプロジェクト組織要員のフォローを率先し牽引する使命がある。その使命を遂行するにあたり著者の所属するPMOグループでは種々の問題を解決すべく、PMOとしての変革活動を実施したことで、効果が出てきた。また同時に真のPMOとしての活動ができるようになった。本論文では、この変革活動内容に関してその要点や具体的事例を交えて紹介する。


オフショア適用範囲の見極めと適用時の課題に関する事例報告

渡邊 亮


オフショア活用は、以前はコーディングやテスト実施が定番だったが、近年その適用範囲は着実に拡がってきている。例えば、設計やテストケース作成、障害対応等にオフショアを活用することは決して珍しい事では無くなってきている。 しかし、その適用可能範囲をきちんと見極めた上で活用しないと、任せてみたものの品質が不十分であったり、手戻りが生じてしまったりと、トラブルプロジェクトとなる原因となってしまう。本論では、オフショア適用範囲を見極めるために、トライアル活動(日本側で実施済の作業の一部をオフショア側でも同様に実施し、生産性や品質を比較評価したうえで、適用範囲を決定)を実施した事例を報告する。 また、オフショア適用範囲が拡がったことで、直面する問題も増えた。本論では、実際にどのような課題に直面し、どのような対応が有効であったかについても報告したい。