論文要旨(Abstract)一覧

プロジェクト立ち上げの難しさに関する考察

山本 幸裕


プロジェクトをマネジメントする上でプロジェクトマネージャーが最初に直面するのは,プロジェクト立ち上げというミッションである.プロジェクト立ち上げがスムーズに進める事ができたならば,そのプロジェクトが成功裏にゴールを迎えられる可能性は非常に高くなるといえる.旧来型のプロジェクトで適用されるウォーターフォールモデル型の開発手法が定着して久しく時が経つが,その旧来型のプロジェクトにおいてもプロジェクトが円滑に立ち上がらない,計画がうまくできない等で苦労するプロジェクトマネージャーは多数存在するのではないだろうか.そういったプロジェクト立ち上げの難しさについて現場で巻き起こっている事象を調査し,原因・要因を分析してプロジェクトのスムーズな立ち上げに何が必要か?を考察し,工夫・コツ等を纏める.


アジャイルにおけるチーム立ち上げを効率化するプログラムの効果とその組織内での展開に関する考察

水野 浩三,家田 晴子,杉本 俊明,大内 孝明,寺田 達彦,下河 啓志


本稿は,アジャイルにおけるチームの立ち上げを効率化する支援プログラムについて,その試行と効果を検証したものである.アジャイルチームが安定したパフォーマンスを発揮できるようになるには一般的に時間がかかると言われている.特にアジャイルの経験がないチームに対しては,立ち上げ時には何らからのサポートが必要となる.立ち上げ時にプロジェクトのゴールやチームのミッション,アジャイルに対する認識合わせがされているか否かがチームのその後の成熟スピードにも影響する.しかし昨今のコロナ禍では対面でのコミュニケーションが取りづらく,チームの立ち上げが一段と困難となっている.そこで当社では,リモートワーク環境でもオンラインで,かつ短期間で効果的にチームビルディングができるトレーニングプログラムを企画・開発し,複数のプロジェクトで適用したので,その結果を報告する.また,本プログラムの活用によりトレーニングの品質を担保しつつ,組織内に広く展開する方法についても考察する.


ソフトウェア開発を中心としたSIプロジェクトにおけるハードウェアの品質リスク低減のための実例と改善提案

水澤 浩司,金子 康浩,黒岩 正樹,坂元 隆宏,中元 信吾


ソフトウェア開発を中心とするSI事業体において,ソフトウェア開発の品質保証基盤に加え,SIの構成要素の一つであるハードウェアの品質保証基盤を整えていくことは,体制面,費用面で非常に多くのコストが掛かり,コスト競争力が低下しかねない.しかしながら,ハードウェアの品質保証の対応を怠ると,ハードウェアにおける製品ベンダーの選定,および要求のインプット,開発管理,受入検査を含めた成果物の確認がおろそかとなり,法規法令違反といったインシデントの発生や,開発コストの増加,出荷後の障害多発という事態を招くことになる.そこで,昨年度,営業やハードウェア開発経験の少ないSEを中心とするプロジェクトであっても,開発委託や購入するハードウェア製品の品質担保のために最低限実施すべき事項をプロセス化し,インシデントの発生防止,コスト増加などを抑制するための方法を提案した.本論文では,品質問題事例と,その解決にあたって課題となった点,および本年度も継続して改善を施した点について論じる.


プロジェクト管理ツールを活用した管理工数削減施策

堀田 久視,草刈 敏幸,滝澤 健人


弊社の大規模プロジェクトにおけるプロジェクト管理工数については,開発工数の約10%が必要という統計となっている.この統計値は,「JUAS ユーザー企業ソフトウェアメトリックス調査【調査報告書】2016年版」においても,500人月以上のプロジェクトについては,間接工数として開発工数の約9%が必要と報告されている.このような背景のもと,顧客のシステム投資に対する予算は限られている中,開発費の原価低減は必須課題である.そこで,原価低減施策の1つとして,プロジェクト管理ツールを活用した新たな管理プロセスを整備し,スプレッドシート等を用いた従来のプロジェクト管理手法からの脱却を図るとともに,プロジェクト管理工数の削減効果について纏める.


コロナ禍におけるダイナミックデリバリーによる基幹システム保守と若手育成の両立に向けた事例紹介

飯島 貴広


筆者は,食品製造業のお客様の基幹システム保守を担当して3年間,コロナ禍でのリモート保守作業に加え,若手育成に積極的に取り組んできた.基幹システムには4つのサブシステムがある.そのうち1つのリーダーを務めており,お客様からのお問い合わせや依頼事項,欠陥や変更(以降,総称してインシデントと呼ぶ)に対する迅速かつ高品質な対応と,若手メンバーへの効果的な育成活動を両立できないか思案していた.そこで,IBMが提唱・推進する新たな働き方である「ダイナミックデリバリーモデル」(リモートによりIT開発・運用業務を従来と変わりなく円滑に行うためのフレームワーク)の実践と共に幾つかの工夫を試みた.その工夫を継続的に改善することがチーム全体のモチベーションの維持や向上に寄与すると考え,若手メンバーからフィードバックを得た.本稿では,両立に向けて工夫したポイントを紹介し,フィードバックによる効果の評価を行い,今後の課題としてまとめる.


大規模アジャイル開発におけるCMMIに基づくプロセス改善の有効性に関する一考察

中村 英恵,小林 浩,長田 武徳


近年,社会環境の変化や多様化に伴い,アジャイル開発を適用する企業が増加している.また,複数のアジャイル開発チームによりシステム開発を大規模に実践するためのナレッジベースとしてScaled Agile Framework®(SAFe®) が発表されている.しかし,これらのナレッジを理解した上で,実際のプロジェクトに適用し目標を達成するには,プロジェクト管理や開発およびサービス提供活動に関し,組織としてプロセスを整備し浸透させる能力が求められる.一方で,CMMI®(Capability Maturity Model® Integration)は組織のパフォーマンス改善に役立つベストプラクティスの集合であり,プロジェクト管理や開発作業における組織のプロセス改善活動に広く使われている.本稿では,CMMIのプラクティスとSAFeのナレッジの親和性を整理し,実プロジェクトの事例から得られた知見を踏まえて,大規模アジャイル開発に対するCMMIに基づく組織プロセス改善の有効性を考察する.


稼働開始後のシステムに対する品質改善におけるポイント

松田 英樹


システム開発における品質は,そのシステムの稼働が開始する以前に確保されるのが本来あるべき姿である.一方で,不幸にも開発期間中に品質の確保が間に合わず,稼働開始後に障害を多発させてしまう例が依然として存在することも事実である.このような状況においては,当該システムが機能不全に陥らないよう,障害となっている事象の解消を行うことが喫緊の課題となるが,並行して品質を安定させるための取り組みを行うことが必要となる場合もあり得る.本稿では,稼働中のシステムに対する品質改善におけるポイントについて,過去の経験を元に解説する.


情報システム保守フェーズにおける課題管理のためのRedmineの活用

上野 有輝


近年の情報システムの開発・保守プロジェクトでは,多数の関係者(ステークホルダー)が関連していることがほとんどである.そのため,関係者間での適切な課題管理と情報共有がプロジェクトを成功させるための重要な要素となっているのは周知の事実である.これらへの対応はもちろんのこと,弊社においても,あわせて課題対応速度を向上させ,品質向上を行いながら,品質マネジメントへの取り組みを,単一プロジェクトだけでなくプロジェクト間をまたいで行っている.本稿では,筆者の部門内で組織として取り組んでいるRedmine(プロジェクト管理ソフト)を用いた複数のプロジェクト間での課題の集中管理の手法と情報共有の手法について焦点を当て,事例の紹介とまた,分析と考察を行う.


プロジェクトリスクに対するステークホルダー間の認識の違いと対応

山田 裕貴


ITプロジェクトにおける失敗または混乱の発生を防ぐには,リスクマネジメントを効果的に行うことが重要である.しかし,円滑なリスクマネジメントを阻害する要素がある.ステークホルダー毎にリスクの認識・捉え方に差異があり,このことがプロジェクトマネージャーを悩ませる一因であると考える.そこで,リスクの認識・捉え方の違いを意識した上で,リスク共有範囲を決め,またリスク所有者を誘導することで,適切なリスクマネジメントができると仮説を置いた.この仮説に基づき実践した結果,プロジェクト成功,特にベンダーにおけるコスト面での成功に効果的であることがわかった.


品質リスクを低減する品質計画の重要性

中村 知美


ソフトウェア開発において,上流の工程から品質を確保していくことは,品質の早期安定化(Q)・生産性向上(D)・原価率改善(C)に繋がる重要な活動である.筆者が担当する組織においても,目標を設定して上工程品質向上に取り組んでいるが,直近の2年間は目標未達の状況が続いた.その原因について分析した結果,「プロジェクト特性に沿った品質計画が立てられていない」「品質計画を着実に遂行していない」といった課題がみえてきた.本稿では,これらの課題に対し,品質計画の質を高め,上工程から品質確保していく取り組みの事例を紹介し,品質計画の重要性について述べる.


新規ビジネスへリソースシフトするためのGDC共業推進

佐藤 学


ICT業界全体が2025年の崖,特に人材・技術の不足予想に直面する中,弊社はDX企業として国内リソースの新規ビジネスへのシフトに取り組んでいる.リソースシフトを実現するための弊社施策としてはGDCを設立し,海外のIT技術者を確保することで既存ビジネスの海外対応を実現し,国内リソースのDXシフトを目指した.私の所属部門は,GDC拠点をマニラに固定した上で,特定業種プロジェクト向けにGDC共業を推進し,開発プロセスを標準化することで一定の成果を出した.しかし,全社組織化したのち,GDC共業の標準化自体を認知していない新たなプロジェクトへのプロセスを適用し,マニラ以外のGDCと共業したところ,QCD問題が発生し新たな課題が見えてきた.その原因を分析し,国内向け施策,GDC向け施策に対応することで多くのプロジェクトを成功させ,DX企業としてのリソースシフトを加速させることができると確信している.


自主性を重視する組織風土変革に向けた取り組み
- 組織のエンゲージメント向上を目指して -

丹羽 美乃,大場 香奈江,鶴巻 憲祐


近年「従業員のエンゲージメント」が重要視されており,富士通は経営目標の1つである非財務指標として掲げている.しかし統合意識調査の結果,所属組織の若手社員のエンゲージメントスコアは低いことが明らかとなった.過去にもES活動は行われていたが,若手社員は幹部層との相互理解が不十分なまま運営や参加に至ったため,エンゲージメント向上には繋がっていない.そのためエンゲージメント向上に繋げるためには,組織風土変革が必要である.本論文では組織風土変革のために運営体制,主体性,継続性を考慮した取り組みを実施し,エンゲージメント向上に繋がるか検証を行った.検証の結果,取り組み参加者のコミュニティ拡大,経営方針への関心度向上,主体的な活動機会の増加が見られた.これらの結果は自らが変革し行動する本取り組みがエンゲージメント向上に有効であることを示す.


プロジェクト事例としての軍事作戦の研究に関する一考察

吉田 憲正


プロジェクトマネジメントの研究に於いて,プロジェクトの事例研究やプロジェクトの教訓を学ぶことが,非常に重要であることなは他言を要しない.軍事作戦をプロジェクトとして捉えると,システムの開発や街づくり,M&A等のプロジェクトと比較し,プロジェクト事象の殆どが余りに悲惨・残酷・非人道的ではあるが,多くの貴重なプロジェクトの教訓を含んでおり,何が行なわれたのかを出来る限り正確に認識しそこから学ぶことが,科学として必要で大変有益なことだと思われる.今回は,アジア・太平洋戦争末期の硫黄島作戦を事例としてプロジェクトマネジメント・プログラムマネジメントの考察を行なう.


ビジネスパートナーに対するプロジェクトマネジメント研修の事例

松田 章


プロジェクトマネジメントに関する研修は各社いろいろな手法で実施されている.プロジェクトマネジメントは各社の生い立ちや重点方針などで力を入れるところが変わってくる.このプロジェクトマネジメント手法は当社の社員だけでプロジェクトを推進するのであれば決められた手法で推進するので問題ないが,IT業界ではビジネスパートナーに委託する場合が多く,当社と同じ手法と考え方で取り組んでもらわないと顧客と約束した品質や納期などに影響が出てくる.ビジネスパートナーは単に当社の契約内容だけでなく,プロジェクト全体を理解した上でビジネスパートナーの契約範囲を含め,当社と一緒に品質の良いシステムを構築するという考え方が重要になる.そのために当社のプロジェクトマネジメント手法や品質の考え方をビジネスパートナーに理解してもらうための研修が必要になってくる.今回実施したビジネスパートナーに対するプロジェクトマネジメント研修は受講者が自ら考えるだけでなく,講師や他の受講者から気づきを得られるようグループワークによる研修を実施することとした.また,テキストは受講者が受講で得られた知識を実際のプロジェクトで活用できるようプロジェクトの事例をできるだけ取り入れるようにした.本稿ではビジネスパートナーに対するプロジェクトマネジメント研修の手法について研修事例を中心に述べる.なお,システム構築の受託会社が業務の一部を外部の企業に委託する際の,委託先の会社を”ビジネスパートナー”と言う.本稿では”BP”と略して記載する.


業務パッケージ事業拡大のためのプログラムマネジメント

新村 史郎,前川 明哉


組織が利益を生み出すことができない理由の多くは,その組織内の各プロジェクトとその他の構成要素をコントロールできていないことにある.プロジェクトには,規模・スケジュール等それぞれの特徴があり,担当プロジェクトマネジャはそれら環境の中でいかにプロジェクトを成功に導くかをマネジメントしている.そして,日々刻々と変化する顧客要望や業界動向・地域特性といった外的要因なども含め,あらゆる理由でプロジェクト状況が変動し,組織の利益に影響を与えている.さらに,プロジェクトだけでなく,受注活動,営業部門・パートナ企業等のステークホルダとの関係,組織メンバの育成等をなおざりにすると,組織の目標や目的を達成することはできない.その対策として,各プロジェクトの状況把握,プロジェクト間の調整,組織メンバ作業量不足の解消,要員の育成,即戦力要員の補充,パートナ要員の契約中断,および業種景気の把握に立脚した受注活動等をプログラムマネジャは実施しなければならない.その上で,コミュニケーションを通じて,組織メンバ・パートナ・営業部門等の組織を取り巻くステークホルダのモチベーション向上を図ることが,上記対策および組織利益追求のために有効かつ不可欠である.


ショートケースを用いたケーススタディ教育での目的別活用術

杉本 吉隆,鈴木 賢一


ショートケースを使用したケーススタディ教育は,プロジェクトマネジャのスキル,特に状況対応力を向上することを目的としています.本稿では,ショートケースを用いたケーススタディ教育における,状況対応力に必要な「プロジェクトマネジャとして持つべき知識」,「状況把握能力」,「施策の優先順位付け」の強化に向けた活用事例について述べる.


PBL活動開始時におけるレゴRシリアスプレイRメソッドの活用事例
- 遠隔環境でのチーム・メンタルモデル形成に向けて -

三好 きよみ


東京都立産業技術大学院大学では,専門職学位取得のための必修科目としてPBL(Project Based Learning)型の教育を行っている.新型コロナ (COVID-19) 感染の拡大を受けて,2020年以降,従来通りの対面での授業が実施できなくなっており,PBL もまた遠隔で実施することを余儀なくされている.一般的に,異なるロケーションでのチームワークは,チームパフォーマンスが低下することが知られており,遠隔環境でのPBLにおける課題の1つとしてもチームワークが挙げられる.本研究では,PBLのチーム活動においてチームパフォーマンスを向上させるために,チーム・メンタルモデルの形成に着目した.主に遠隔環境で遂行していくこととなる2022年度のPBLにおけるチーム・メンタルモデル形成に,レゴ・シリアスプレイメソッドを活用する.本稿では, PBLのチーム活動開始時に実施した,レゴ・シリアスプレイメソッドによるワークショップについて報告する.


ITプロジェクトのPMに求められるスキルと育成
- 製造業での経験に基づく考察 -

寺田 由樹


本稿では筆者の製造業での経験を踏まえ,ITプロジェクトのPMに求められるスキルと育成について述べる.製造業においても,IT投資を継続するためには,投資に対する効果を早期に見える化することが求められるケースが増えている.特に日本では海外との競争力強化のために製品の高機能化や多品種少量生産を短期間で実現するような要件も多い.このようなお客様の要件や期待値に沿うデリバリー実行のためにはITプロジェクトにおいても,製造に関する深い知見を必要とする事例も多い.一方で,IT人財の不足は引き続き,大きな課題でもあり,限られた要員にてプロジェクトデリバリーを実行するために必要となるスキルと要員の育成について,特にPMにフォーカスして考察する.


大規模開発プロジェクト上流工程における要件制御とマネジメント

関 崇博


大規模アプリケーション開発プロジェクトにおける品質,コスト,納期の遵守観点から上流工程である要件定義,基本設計工程の重要性がうたわれて久しいが規模が大きくなるにつれてその重要度は増してくる.顧客要件をなるべく取り込むことは顧客満足度という観点では重要であるが,無制限に取り込んでしまっては品質悪化,顧客予算超過,納期遅れなどを誘発し逆に顧客の信頼性を損なうリスクが大きくなる.一方で上流工程においては顧客要件のブレ,追加,修正などが発生しやすいためこの部分のコントロールがプロジェクト成功の最重要ポイントの一つとなる.そこで顧客に対する要件制御方法,アプローチなどをマネジメント観点で明示し,顧客と事前に合意しておくことが重要である.


新規サービス・事業創造時における要件定義工程の勘所

三原 龍


近年,企業の事業環境は,より複雑化している.これに対して新規事業やサービスの開発による持続的な事業発展を目的とし,IoTやAI,デジタルソリューションの適用を試みる企業が増加している.要件定義の進め方は,要求工学に基づき様々な手法が提唱されているとともに,PMBOKではスコープマネジメントとして体系化されている.しかし,新しいことに挑戦するプロジェクトでは,検討すべき事項の考慮不足,不確定要素の多さなどにより,要件定義の品質が低い状況が多く発生している.本稿では,実際のプロジェクトで実施した要件定義の工夫の有効性について検証する.


プロジェクトマネージャの育成

三村 直也


近年,以前にも増して多くの企業や組織においてプロジェクトマネージャの育成が急務だと叫ばれているように感じる.そもそも“育成”とは何か.自身が実践している姿をそばで見せ,それを肌で感じ,自分なりに解釈して自らが実践できるようにしていくことだろうか.それともマンツーマンで逐一チェックし,一人前になるまで指導していくことだろうか.どちらも正解とも言えるし,不正解ともいえるがこれだけでは判断できない.育成方法やその過程は個々に応じて合う・合わないがあるため最もFITする方法でよいが,育成の結果プロジェクトマネージャとして自ら実践して動けるようにならなければ正解とは言えないだろう.本論文では長年プロジェクトマネージャとして従事したプロジェクトを部下に引継ぎ,プロジェクトマネージャとして活躍するまでの施策や有効性について述べる.


事例分析によるプロジェクト成功のための暗黙知の形式知化と運用   -ToBeモデル構築と運用による失敗プロジェクト撲滅-

工藤 朗


商談対応や計画,並びに実施内容の検討が不十分のプロジェクトでは,QCDの確保が出来ずに失敗となることが多い.このような過去失敗プロジェクトの原因分析を実施し「プロジェクトマネジメント力の不足」を喫緊の課題と認識した.対策として,商談発生時からプロジェクトマネージャが実施すべき模範となる行動様式(あるべき姿)をToBeモデルとして仮説定義し,完了プロジェクト実績で仮説検証した.この結果,仮説定義の有効性が確認できたため,このToBeモデルを実プロジェクトで運用検証し,そのアンケート結果から特に新規プロジェクトマネージャに効果があることが判明した.本稿では,ToBeモデル構築と運用による失敗プロジェクト撲滅の取組みについて紹介する.


アジャイル型開発におけるプロジェクトマネジメントの特徴分析

木村 良一,三好 きよみ,酒森 潔


これまでの日本のITプロジェクトの大半はウォーターフォール型開発で行われてきた.しかし昨今,経営スピードの加速に対応した開発手法として,スクラムなどのアジャイル型開発が注目されている.本報告では,実際にアジャイル型開発を行っている技術者に行ったインタビューを対象に実施したテキストマイニングによる分析結果を報告する.分析の結果,実態的なアジャイル型開発の特徴として,チームやユーザなどといった人間関係について特に意識していることが確認できた.


新規顧客プロジェクトの要件定義へのREBOKの適用と実践

楠本 恒夫


ソフトウェア開発プロジェクトの失敗要因は,超上流を含めた上流工程で混入されるのが大半となっており,この傾向は年々増加している.発注側と開発側での要求事項の曖昧性を排除し,双方が理解できる要件定義の合意形成が非常に重要となる.こうした中で要件定義プロセスの手法として注目されているのが要求工学知識対応(REBOK)である.本稿では,REBOKの考え方を取り入れて,短期で要件定義を実現したプロジェクトの事例を報告し,知識エリアの活用方法や適用結果の分析を通じてREBOKの有効性について検証する.


オンライン環境におけるシミュレーター演習によるプロジェクトマネジメント教育の学習者視点からの考察

丸山 大輝,石田 秀一郎,坂野 純代


東京都立産業技術大学院大学では、マネジメント系科目の一つとして「プロジェクト管理特別講義」を開講している。当科目では、シミュレーターを使用したグループ演習を行う。演習を通じて、プロジェクトの計画から実践までをプロジェクトマネージャーの立場で疑似体験する。本稿では、当科目の演習の概要、シミュレータの特徴、演習から得られた学習効果等について、学習者の視点から報告する。


大規模基幹システムの移行に伴う追加要件のコントロール

岩瀬 広幸


大規模基幹システムの移行では最も改修量の少ない方法,即ち安全に移行する方法を採用する傾向にあるが,現状に合わせた追加機能の取り込みや,潜在不良の対策も合わせて行いたいという要望もあり,安全な移行を前提としつつ改修量をコントロールする必要がある.ここでは大規模基幹システムの安全な移行に向けた施策と,合わせて発生する様々な追加要件のコントロールに対する有効性について説明する.


マネジメントプロセスチェックによるプロジェクト改善効果について

宮本 浩志,野元 拓也


当社の流通向けパッケージを適用するプロジェクトでは品質悪化や工程遅延により原価が増加し,問題となるプロジェクトが多発していた.その対策のために原因を調査した結果,マネジメントプロセスに問題があることが判明した.その対策としてマネジメントプロセスをタイムリーに確認できるよう,工程ごとにチェックリスト化し定期的にチェックリストを適用して確認を行うことを開発事業部と合意した.またプロセスの遵守状況を可視化するため,プロジェクト単位・工程単位に達成率を算出し,数値化することで全体の進捗状況を可視化した.チェック内容の正確性を図るために定期的に部内でレビューを実施した.本チェックリスト適用後は問題となるプロジェクト数は減少傾向にある.本論文ではこれらの施策について具体的事例を示しながら報告する.


改修案件・保守の輻輳における、要件の取りこぼし・改修漏れ防止に向けたアプローチ

濱口 雅志


昨今,企業が一般ユーザー向けにサービスを拡充していくにあたり,システム開発への依存が高まってきている.こうした背景の元,基幹システムにおける改修,保守などでのシステム改修は多々発生している.時として,設計の着手順序と,プログラムのリリース順序が異なる場合や,異なるサービスを同時に改修することも発生し,要件の取りこぼしや,改修漏れを防ぐことが必須であり,そういった取り組みがプロジェクトマネジメント,特にスコープマネジメントが重要であり,PMBOKでも提唱されている,「要求事項トレーサビリティ・マトリックス」を通じて,スコープマネジメント,特に「要求事項の監視・コントロール」の有効性について検証する


プロジェクトを成功に導く人的資源マネジメント

小林 政彦


昨今,プロジェクトを円滑に進めたり,効率良く遂行するためのマネジメント手法や技術が多く出てきてはいるが,いまだに失敗プロジェクトが散見される.失敗している理由は様々であり,失敗理由の原因はPMBOKの知識エリアの全てのエリアに潜んでいる.この原因を取り除く事が出来れば良いが,失敗プロジェクトが無くならないことからも事前に摘出することは難しい.しかし,すべてのエリアは共通してマネジメントという人による行為が必要である.このため人材を効果的に配置すれば,原因を極小化もしくは未然に防止することも出来るのではないかと考える.人材の配置,すなわち人的資源マネジメントである.このことから人的資源マネジメントはプロジェクト全体に影響することがわかる.このため,人的資源マネジメントを如何に効果的に行うかがプロジェクトの成否を左右すると言える.効果的な人的資源マネジメントには適材適所な人材配置が重要であり,適材適所な人材配置をどのように行うことがより良いかを定義する.


GROWモデルを用いたコーチングPM育成について

矢部 博崇


ITプロジェクトは,近年より複雑化しており,プロジェクトマネージメントも多様化している.その中でIT関連企業のプロジェクトマネージャは,定常的に不足しており,プロジェクトマネージャの育成は急務である.本稿では,いくつかの事例プロジェクトでのプロジェクトマネージャの育成事例を報告し,最適なプロジェクトマネージャの育成方法について検証する.


AIを実装した業務システムの開発プロジェクトにおける留意点

大賀 祥久


近年,AI(Artificial Intelligence)の精度向上に伴い,実用的な精度に達したことを評価した後に,システム化を行うニーズが増えてきている.また,システム化を行う際には,AIの実装だけではなく,AI判定を行う前後の処理の実装等,業務システムの実装も必要となる.当社では,AI,特に機械学習(ディープラーニング)の技術を利用した画像認識を行うためのシステム開発を通して,従来型の業務システムとAIを一つのシステムで実装する際のプロジェクトマネジメントに関する留意点について,説明する.


リモートワークをベースとしたプロジェクト運営の課題と対策について

伊藤 智彦


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は,2022年に入っても全世界中に多大な影響を及ぼしている.経済や生活面はもちろんのこと,我々が担当するプロジェクト業務においても同様であり,流行前とは全く異なる形態でのプロジェクト運営が続いている.効果的な勤務形態としてリモートワークが推奨され,我々のプロジェクトでも多くのメンバーが利用しているが,一方でリモートワークならではの問題や課題も噴出してきている.本論文はこういったリモートワークの問題や課題をあげ,プロジェクトとしてどのようにマネジメントを行っているのか,その手法や効果について考察する.


病院情報システム導入におけるサーバントリーダーシップによるステークホルダーマネジメントの有効性事例

柴田 学


ステークホルダーマネジメントは,プロジェクト遂行における重要なプロセスである.基本的に人間関係のマネジメントであり,信頼形成が基底にある.特にチーム外メンバーとの協業プロジェクトにおいて,その協力を得るためには信頼獲得が最も基本的なものである.“病院情報システムの導入プロジェクトの実践的活動”を通して,心理的安全性の考え方から課題を捉え,協業に対する抵抗感を緩和するための行動スタイルとして,サーバントリーダーシップの有効性について考察する.


開発工程における5つの品質改善活動

橋本 剛


システム開発においてお客様への貢献力を向上させるためには、SEの顧客接点時間の増加、質の向上と高品質な成果物を提供できる体制が必要である。そのためには、お客様と接するSE(以下、アカウントSE)と開発を行うSE(以下、開発SE)を分業化する施策があるが、役割分担や品質に対する課題がある。特に詳細設計~単体テスト(以下、開発工程)においては作りこむバグをより少なくし、作りこんだバグをより早くより多く摘出することで品質低下の兆候を早期に検知することが課題である。分業化の実現には、開発工程とプロセスの標準化が必要となるため、「概要設計の品質向上」「単体テスト設計の品質向上」「ソースの品質向上」等の観点で、組織的なプロセス改善への組み込みが重要である。本稿では、プロジェクトにこの考え方を適用した事例を報告する。


システム・インテグレータにおける品質管理マネジメント

古田 喜昭


システム・インテグレータにとって,システム開発プロジェクトにおいて,顧客の要求通りにシステムを稼働させることは,プロジェクトの成功の最も大きな要素のひとつである.このためには,システム稼働品質の確保が不可欠である.ウォータフォールモデルのシステム開発において,稼働品質を確保するためには,各開発工程で必要とする品質が確保されている必要がある.しかし,開発途上の各工程において実物のプロダクト品質が確保されていたとしても,管理プロセスに不備があると,適切に設計・テストが完了していることを証明・判断することができず,混乱につながる.開発規模が大きくなると,プロジェクトマネージャが全ての成果物の管理プロセスを実行することは難しい.このため,成果物の責任者を明確にし,プロジェクトメンバが果たすべき役割を明確に設定しておくことが有効であると考える


自律的且つ持続的な品質改善プロセス構築に向けた取り組み

道家 直之


近年,報道されるような社会的影響のあるトラブルの件数が増えており,一層の品質改善の取り組みが必要とされている.弊社で開発している大規模病院向けの電子カルテシステム(HOPE EGMAIN-GX)は,2008年のリリース以来,日本全国の病院に導入されているが,障害発生を抑止しきれていない.これまで社内メンバー・ビジネスパートナー(以下,BPとする.)で継続的に開発プロセスの改善を行ってきたが,BPの開発作業における品質意識が十分とは言えない状況である.また,担当変更,人員入替を起因とした障害も発生しており,環境変化に対応できるような持続的な改善プロセスを構築する必要があった.そこで,BPが品質意識を高め,自律的かつ持続的に作業品質を向上させる品質改善プロセスを構築した.その結果,障害発生率やドキュメント指摘率が減少したことやBPの開発者の品質意識が高まったことが確認でき,品質改善の有効性を示すことができた.


コンピテンシー評価による資源マネジメント

松栄 克幸


プロジェクトマネジメントについては,過去の暗黙知だけに頼ったマネジメントを脱却し,近年,形式知を加えたマネジメントとして,体系立てた知識,プロセスの整備が進められている.一方で,プロジェクトの現場においては,プロセス不遵守や,チェック漏れ等に伴い,整理された知識,プロセスを正しく活用できない場合がある.そこで,本稿では,コンピテンシーに着目し,マネージャー層,リーダー層,担当層,それぞれに必要とされるコンピテンシーを定義し,各要員を評価することで,資源マネジメント及び構成されたチームにおける重点監視ポイントの明確化を図り,マネジメントへの有効性を検証する.


専門職大学院におけるオンライン環境でのPBL活動の事例

増田 貴志,永根 亜由,塩谷 正冶,白井 貴子,戸澤 健太,藤田 恵司,三好 きよみ


東京都立産業技術大学院大学は,主に社会人を対象とした専門職大学院であり,産業分野横断的に必要とされる専門職人材を育成している.2年次には、修士論文に代えて、PBL(Project Based Learning)型教育を導入していることが特徴の 1 つである.新型コロナ (COVID-19) の拡大を受けて,2020年度以降は、PBL活動についてもオンライン環境で行っている。本稿では、情報アーキテクチャコースのPBL活動の事例を報告する。オンライン環境でのプロジェクト運営の工夫、ソリューション開発の振り返りを中心として、問題点と解決策について紹介する。


グローバルプロジェクトの成功メソッドに関する一考察

浅沼 広行,中島 雄作


15年前から筆者らは,インドへのオフショア開発や,世界中に展開されるシステムをインドで開発するグローバルプロジェクトを複数経験してきた.日本側から指摘されるプロジェクトマネジメント面での問題は,進捗管理,品質管理,リスク管理,ステークホルダ管理などがある.例えば,進捗管理では週次管理における遅延原因の分析と具体的な対策が不十分であることや,品質管理では根本原因分析を入念に行う文化・習慣が無いことや,リスク管理では発生が予測されるリスクの洗出しとリスク評価と事前準備・早期対策が不十分であることや,ステークホルダ管理では上層部・関係者への問題が顕在化,肥大化する前の適時的確な報告がされないこと,が挙げられる.筆者らの経験から同種のグローバルプロジェクトであれば発生する課題はほぼ決まっていることがわかってきた.本稿では,日本に推進拠点がありインドで開発するグローバルプロジェクトを題材とし,成功に導くための工夫点を述べる.


プロジェクト遂行のための事業継続マネジメント
- パンデミック下でのプロジェクト遂行 -

土本 光恵


大規模な地震や風水害などの自然災害の発生により,2000年代より事業継続計画(BCP)の必要性が高まり,策定・運用が進んできたが,COVID-19の全世界的および長期的流行により,自然災害に次いで感染症を事業継続におけるリスクと想定する企業が急増した.本稿では,施設・設備や情報システムなどのハード面ではなく「人」へ重大なインパクトが及ぶパンデミックにおける,プロジェクト遂行のための事業継続に重点を置いて考察する.事業継続においてはその計画の策定に加え,平常時の定期的な教育・訓練・計画の見直しなどの事業継続マネジメント,殊にパンデミックにおいては事態悪化前のBCP発動の判断も非常に重要である.


ISO 25022の活用による利用時品質の定量評価手法の提案
- デザイン思考に基づくDX時代のソフトウェア評価に向けて -

百足 勇人,神野 昌和


DXが推進される現代において,ソフトウェア開発はお客さまとの共感を重視するデザイン思考の活用が主流になるといわれている.共感を得られないソフトの提供は,ユーザ離れや利用されない機能の開発により損失を発生させる.第三者検証部門としてソフトが共感を与えられるかを定量的に測定するために,ISO 25022の利用時の品質における満足性の測定方法を活用できると考えた.しかし,人により満足性の数値の絶対値が異なり複数人の結果比較が難しい,特定の操作や機能でなくソフト全体の満足性が低いと判明しても問題箇所が不明で改善ができないという2つの問題がある.これらの問題に対し,期待値・実体験を比較し人ごとの絶対値の違いを標準化する,作業目的を達成する過程の細かな作業の満足性から改善点を明確にするという2つの施策を行った.さらに,効果測定により施策の有効性を確認した.本論文ではコンシューマ向けのソフトを対象に検証を行ったが,今後は評価観点の改善によりエンタープライズ向けへの適用範囲拡大を狙う.


ERPパッケージ適用プロジェクトにおける事前準備フェーズの効果

森脇 久光


ERPパッケージ適用プロジェクトにおいて,パッケージ標準の業務機能,インフラ機能,システム運用方法などが顧客に十分に理解されず追加開発を選択し,システム規模が増大してしまうプロジェクトが多く見られる.プロジェクト開始直後は顧客側にERPパッケージの知識は少なく,ベンダー側もステークホルダの要求事項を十分に把握することは難しいためお互いの認識がずれたままプロジェクトを進めることが多いことに起因する.このような問題を解決し効果的なプロジェクト開始を行うために、本格的なプロジェクト開始までの期間を使い事前準備フェーズを設定し,効果的なプロジェクト計画の作成について、事例を報告するとともに効果について検証する.


アジャイル開発プロジェクトにおける作業時間の見積精度向上事例

木村 亮介


システム開発では見積精度の向上がプロジェクトマネジメントの重要な要素と考えられている.近年,デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い,短いリリースサイクルで変化に柔軟に対応できるアジャイル開発が普及しつつあり,アジャイル開発での見積精度向上が求められている.アジャイル開発では実績や経験に基づいて見積もるため,開発初期は精度の高い見積が難しい.アジャイル開発を適用したAプロジェクトでは,作業内容を定義したチケットを基に作業時間を見積もったが,実績時間が超過していた.本稿では,アジャイル開発プロジェクトのチケットから実績時間が見積時間を超過した原因を特定し,改善策を評価することでアジャイル開発における見積精度向上のポイントを説明する.


ウォーターフォール型開発プロセスにおける適応的プロジェクトマネジメント

中山 素直


近年,ビジネス環境の急激な変化や顧客ニーズの多様化などによって,システム開発においては従来のウォーターフォール型開発プロセスだけでなく,スパイラル/インクリメンタル型開発プロセスやアジャイル型開発プロセスなどの非ウォーターフォール型開発プロセスが採用されるようになってきている.プロジェクト実施においては,計画重視か適応重視かなどの特性により,適切な開発プロセスを選択することが重要である.しかしながら,適応を重視することが必要なプロジェクトでも,ウォーターフォール型開発プロセスを採用しなければならない場合がある.このような制約下で実施したプロジェクトでのマネジメントについて,一部にアジャイル型開発プロセスなどから考え方のヒントを得た創意工夫のポイントや課題などを報告する.


組織のコミュニケーション活性化に向けた人的資源マネジメント・コミュニケーションマネジメント活用事例

飯田 浩一


昨今の製品開発業務では,製品の複雑化・多機能化に伴い,ソフトウェアのソースコードの行数が増加している.より安心安全な製品を作るため,機能間で制御の受け渡しをする仕様の数も増加し,開発する組織間の担当者のコミュニケーションがますます重要となってきている.本稿では,製品開発組織の機能型組織において,人的資源マネジメントとコミュニケーションマネジメントのプロセスを用いて,コミュニケーションを活性化した事例について記載する.


次世代リモート開発プロジェクトの在り方に関する考察

三浦 拓


COVID-19を契機として,日本のシステム開発プロジェクトの状況は一気にフルリモート開発へと一変した.筆者が参画してきたリモート開発プロジェクトの経験を元に,今後のシステム開発プロジェクトの在り方についての考察を述べる.メリットを更に引き出しデメリットを極小化するために,PMは技術者をどのように意識づけし,チームをマネジメントしてくべきかを考察する.


製造業におけるハイブリッド型アジャイル開発事例
- IT業界未経験者視点での考察 -

沈 健


本稿では筆者がIT業界未経験の新人として初めて経験してきた,製造業顧客システム保守プロジェクトにおけるハイブリッド型アジャイル開発プロセスに関する事例と課題を取り上げる.近年,顧客製品に対する高品質,多様化製造に対する要求が高まっており,生産性改善,製品の多様化に対応すべく,顧客製造システムの新規機能追加,機能変更,機能拡張に対する迅速で柔軟な対応,高品質に関する期待も非常に大きくなっている.従来のウォーターフォール/アジャイル開発プロセスをコンビネーションしたハイブリッド型アジャイル開発プロセスを適用した事例,IT業界未経験の新人が実践を通じて取得できた製造プロセス知識やITスキルの範囲と深さレベル,今後の課題について記述する.


事業部門のビジネスを支援する分析サービスの探求
- 知財分析サービス「IP Insight」 -

浅見 直也


著者の所属する知財部門のセクションでは、社内事業部門向けに調査・分析を行うIP Insightサービスを行っている。我々が認識している課題は、事業部門へのビジネス貢献の最大化とその手法の確立。課題の現状認識は①部門側の本当の課題を探っているのか、②ファクトをまとめただけになっていないか、③一般文献からの引用で終始していないかの3点。我々が行うことはInsight(気づき)の提供。この仮説に対しての施策は、①潜在化した真の課題の掘り起こし、②第三者視点からの客観的な分析、③知財部門の強みを生かした分析、これら3点を行うこと。これら仮説に対し、それぞれ施策を実施。その施策に対しての効果検証としてアンケートを実施集計。それら結果から、我々が行っている施策の有効性が確認でき、部門ビジネスに貢献できていることがわかった。また部門の求めているものは、我々が目指すものと同じものであり、我々の目指す方向性が正しいことを再確認できた。IP Insightは、未だ過渡期の段階であり、今後も様々な施策を行い、より良いサービスを提供していく。また「知財部門全体としての重層な面のサービス」を事業部門に提供し、弊社のビジネスへの更なる貢献を行っていきたい。


プロジェクトにおける計画の考察
- 近年の意思決定・計画錯誤の実証的研究の視点から -

髙橋 潤


本稿は,プロジェクトにおける時間管理に関連した先行研究を統合的にレビューしたものである.プロセスや戦略,タスクの特性や文脈的要因の影響,予測と意思決定の関係など研究の種類や分析レベルにもよるが,行動意思決定論ではタスク期間の過小評価が過大評価よりも多く報告されている.近年プロジェクトを取り巻く状況は複雑かつ不確実性の高い現場において,プロジェクトマネージャは良質の意思決定が求められている.先行研究の成果とプロジェクトマネジメントにおけるツールの類似性からプロジェクトマネジメントへの応用を議論すること,つまり,学際的な研究成果によるアプローチがプロジェクトマネジメントを成功に導く可能性があることを示唆するものである.


自社開発SaaSのプロダクトマネジメントにおける課題と考察

前田 裕貴


近年,市場ではプロダクト(SaaSなどのサービスを含む)に対するパラダイムシフトが起こっている.利用者は完成されたプロダクトが提供されることを長い時間待つよりも,必要最小限の価値を提供するMVP(Minimum Viable Product)から利用を開始し,短期間のうちに継続的な改善が繰り返されることを望んでいる.このような市場ニーズを満たし,顧客に選ばれるプロダクトを提供するためには,プロダクト開発時の開発アプローチ(アジャイル型開発など)の選択と事業・技術・デザインという3指標の比重調整が課題となる.本稿では,筆者が複数のサブシステムから成るプロダクト(SaaS)において,サブシステムごとに異なる開発アプローチ(アジャイル型開発,漸進型開発)を採用した開発プロジェクトに従事したことから得た知見をもとに,課題事項と対策について述べる.


研究開発マネジメントにおけるアジャイルの適合性に関する一考察

新谷 幸弘


近年、アジャイル型プロジェクトマネジメントメソッドがソフトウェア開発を中心に浸透してきており、多くの場合、ウォーターフォール型プロジェクトマネジメントメソッドとの対比で論じられている。一方、研究開発マネジメントに対するアジャイルの適合性に関する研究事例は多くはない。本研究では、アジャイル型プロジェクトマネジメントの研究開発マネジメントへの適合性に関して考察した結果、アジャイル適合性は研究開発の段階によって異なるとの知見を得た。


上流工程における合意形成の進め方
- 多様化するステークホルダーとの合意形成 -

斎藤 俊貴


システム開発プロジェクトの半数が失敗しており,その要因として共通するのは要件定義をはじめとする上流工程の不備にある.さらにDX時代の到来によりプロジェクトは大規模化・複雑化し,ステークホルダーも多様化する事で,上流工程の難易度は高くなり,重要性も増している.そこで筆者はステークホルダーに着目し,従来のマネジメント手法に,現場業務プロセス改革の経験から得たノウハウを融合し,施策を検討した.ポイントはいかに抜け漏れなく経営視点・業務視点・IT視点で要件を整理しながら,目指す経営改革の効果と実現性を担保するかという事である.本稿では,ステークホルダーが多様化する上流工程のプロジェクトにおける課題・対策を具体的な事例を交えて紹介する


大規模レガシーシステムにおける水準移行のリスクの検討
- 大規模レガシーシステムで水準更改を繰り返すリスクの考察 -

安田 悠太


システムを長く運用していると、プラットフォームやプラットフォーム上で使用しているミドルウェアの保守期限の到来により新しいプラットフォームに切り替えるプロジェクト(基盤更改)が必要になります。この際、システム障害時の影響の大きさや移行に関わる費用面といった観点から水準移行を選択するケースが往々にして存在する。しかしながら、この水準移行を繰り返すことによって、新しいソフトウェアを有するプラットフォーム上でレガシー化したアプリケーションが稼働することによる想定し得ない未知のリスクが発生していると考えられる。本稿では基盤更改案件における水準移行のリスクについて、実際に発生した課題やリスクと照らし合わせながら考察するとともに、そのリスクの大きさについて報告する。


企業による従業員のボランティア活動支援とそれに対応するコロナ禍を受けたボランティア立ち上げの事例報告
- - 「メンタルヘルス研究会」紹介を兼ねて - -

西條 幸治,野尻 一紀


不確実性の増す時代背景や,働き方改革やSDGsと言った流れを受けて,自律型の取組みが推奨されるようになっている.その取組みの一つとして従業員のボランティア活動への支援(休暇の付与や就業時間内での活動許可など)があり,社会貢献を目的としつつ,効用として,健康寿命を延ばすことやメンタルヘルスへの貢献,プロジェクトマネージャのコンピテンシーの一部を上げることが挙げられている.本稿では,筆者が,企業の取組みに沿う形で企画を進めているボランティアについての経緯等を記す.本研究は,ボランティアの効用を示す報告の量/質の面での補強となるデータの提供を目的とし,企業の支援に沿うボランティアの企画が可能であることを現状の結論とするが,経過報告/研究ノートの段階であり,継続して取り組んで行く.


大規模SI開発におけるデータ移行作業の取り組み

清水 洋


製造業A社は,生産・販売・物流プロセス改革の施策として,「納期遵守による顧客満足度向上」を目的に掲げ,プロジェクト(以下PJ)を発足させた.本PJの対象範囲となる新業務プロセスは,販物領域(受注,出荷,購買,在庫管理,サービス),需給領域(計画,実行),生産領域(工場受注,工場出荷,生産計画,購買,製造,在庫管理,原価管理)にわたる.本PJでは規模が大きいことから,販物領域,需給領域までを1stステップ,生産領域を2ndステップとして分割した.1stステップとして新たに構築する新システムは,(1)販売管理,(2)需給調整,(3)ワークフロー,(4)貿易管理,(5)BI/DWH,(6)マスタ管理,(7)インターフェース管理である.既存の販売物流システムからの業務データを上記(1)~(7)の新システムを介して既存の周辺システムに対して連携を行う.本PJでのデータ移行は既存システムから抽出したデータを,複数の新システムを経由しながらデータ移行を行う必要があった.本稿では,上記のようなデータ移行を,どのように計画し,どのように実行したのか,またそこでどのような課題が発生し,取り組んだ対策はどのようなものか,その結果をどのように評価したのかを報告する.


トラブルプロジェクトにおける信頼関係回復に向けたコミュニケーション手法に関する考察

玉澤 一朗


システム開発プロジェクトでは残念ながら一定数のトラブルプロジェクトが発生する.トラブルとなる要因の多くは,顧客やビジネスパートナーとのコミュニケーション不足・齟齬・欠如の積み重ねによるものである.顧客とのミスコミュニケーションにより,ビジネス要件を満たせない,あるいはシステム要件から逸脱したシステム開発となり,課題・リスクの肥大化やコストオーバーラン等が発生しうる.ビジネスパートナーとのミスコミュニケーションでは,要件通りに開発できない,あるいはスケジュール通りの開発が困難となり,品質の低下等が発生しうる.トラブルプロジェクトは,迅速に根本原因を特定・軌道修正し,正常な状態に戻すことが重要であるため,本稿ではプロジェクト関係者との信頼関係回復に向けたコミュニケーション手法を,事例に基づき考察する.


行動プロセスに基づくインシデント再発防止検討ガイドラインの紹介

梶浦 正規,角 正樹


ヒューマンエラーによるインシデントの再発を防止するためには, 抜け漏れなく記述された関連事象の情報に基づく適切な原因分析と見出された原因に対する網羅的な対策の立案が必要となる.我々は, ヒューマンエラーの原因分析の際に, 関連事象の記述のための技法として行動プロセスに基づくプロジェクト振り返りのためのフレームワークを提案し, PM教育に活用してきた.今回さらに, なぜなぜ分析によって原因分析を行う際の注意点と対策の立案・評価の着眼点を加え, インシデント再発防止検討の全プロセスにわたる手順を記述したガイドラインを作成したので報告する.


情報システムの集約プロジェクトにおける課題と対策

千葉 元気


情報システムの集約プロジェクトでは、集約元とのコミュニケーション、集約先システムの開発や運用、および集約元システムからの移行に課題が発生する.本稿では、筆者が参画するプロジェクト事例をもとに、情報システム集約の課題と対策について検討する.


インセプションデッキから見るスクラムチームの自己管理化レベル

西山 美恵子


多くのアジャイル開発におけるスクラムチームには,最善の策をチームの外部から指示されるのではなく,チームメンバーで選択していく,つまり,自己管理型チームへと成長していくことが求められている.では,スクラムチームが自己管理型になってるかどうかは,どのように判断できるのだろうか.本稿では,スクラムチームの自己管理化レベルを測る指標として,インセプションデッキを用いて可視化する手法について考察する.


ステークホルダーを巻き込んだ超上流工程におけるリスク低減のための改善活動実例

藤木 幸弘


プロジェクトの成功は超上流工程の活動に大きく左右される.ビジネス要求を正しく理解し,戦略からソリューションに至るまで整合性を担保しなければならない.しかし,この整合性が図れていないことが原因で要求事項が肥大化し,プロジェクトが計画通り進まず失敗に終わる実例が無くならない.本稿ではプロジェクトの成功率を上げるために,超上流におけるリスク低減を図った活動事例を紹介する.本事例の中では,ステークホルダーの,超上流工程の重要性に関する理解を促進する活動,要件を円滑に定義するための活動,および部門間の関係性改善のためのコンサルティング活動を計画した.この施策を実施することで,ステークホルダーに意識の変化が現れ,システム開発工程において,プロジェクトの安定化を図ることができた.


デジタルコミュニティを活用したPM/SE活性化の取組み

高田 淳司


新型コロナウィルス感染症の影響により,リモートワークは一般的になり,ニューノーマルな働き方として定着してきている.リモートワークでは時間と場所を有効に活用できる反面,対面での気軽な対話や情報共有が減少するなどのコミュニケーション面での課題も指摘さている.本稿ではリモートワーク環境下において,PM間のコミュニケーション促進および情報連携を目的としたデジタルコミュニティ活用によるPM/SE活性化の取組みについて紹介する.


女性プロジェクトマネージャのキャリア選択に関する事例分析

森本 千佳子,浅野 浩美


人生100年時代を迎え、シニア期以降の働き方に向き合う必要性が高まっている。IT業界においてもシニアプロジェクトマネージャのこの先のキャリアは重要な課題である。労働分野の研究ではシニア世代のキャリア研究は徐々に蓄積されているが、多くは男性を対象としている。本研究では、IT業界で働き続けてきた50代女性プロジェクトマネージャのキャリアについてのインタビューを分析し構造化した。50代プロジェクトマネージャの多くは、バブル期に就職し、IT業界の成長と共に過ごしてきたが、この間のIT業界の変化には著しいものがあった。その中で働き続けるという選択をしてきた彼女らがどのように業界および会社組織と向き合い、どのようにキャリアを捉えてきたのか。また、今後のキャリアについてどう考えているのか。分析の結果、彼女らは会社組織よりもプロジェクトに対する「居場所感」「チーム貢献」を重視したキャリア選択をしてきたことがわかった。


「Work Life Shift」と プロジェクトマネジメントの両立
- 多様な人材が高い自律性と相互の信頼に基づき働くということ -

長谷川 涼子


我々富士通グループは、政府が提唱する前から働き方改革に積極的に取り組んでおり、新型コロナウィルス感染の脅威が発生した2020年には「Work Life Shift」というニューノーマルな働き方の推進を発表した。3人の子の育児事情を抱えている私は、2013年から短時間勤務、2017年から週1回のテレワーク勤務を既に行っていたが、育児や介護事情を抱えながらプロジェクト参画することは、リスクが高いと捉えられていた。しかし、コロナ禍を経た今日においては、育児・介護事情を抱える一部の人だけでなく全体として、柔軟な働き方を前提としたプロジェクトマネジメントが求められている。2019年時点のプロジェクトにおける働き方に起因するリスク回避策や、生産性向上の取り組みとその成果をまとめ紹介する。


アウトソーシングプロジェクトにおけるアジャイル型プロジェクト管理手法の活用

高梨 通仁


企業活動にシステムが必要不可欠となっている現代で,企業のIT部門は,安全・確実なシステム運用が最重要ミッションであり,ITベンダーとのアウトソーシングは,効率的なシステム運用体制のスキームを構築するのに活用されてきた.しかし,急激なビジネス環境の変化から,IT部門には安全・確実なシステム運用と合わせて,システムに対するエンハンスを短納期で実現する事が求められている.こうした中で,迅速かつ適応的に開発を行うアジャイル型開発に企業は注目している.本稿では,アジャイル型プロジェクト管理の考え方をシステム運用のアウトソーシングプロジェクトに適用し実践した有用性について報告する.


タックマンモデルの各ステージに対するコーチング技術用いたアプローチについて

田島 千冬


プロジェクトをマネージメントする上でチームを立ち上げ、メンバーが自身の役割に対して十分なパフォーマンスを発揮することは、そのプロジェクトを成功に導く重要な要素となる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の影響でリモートワークを実施している面識のないメンバーが、3ヶ月という短い期間の中で、改善活動としてVRオフィス(憩いの場)を構築する活動に挑んだ。タックマンモデル各ステージにてコーチング技術を用い、リモートからでもチームへと成長したそのアプローチ方法について述べる。


高度IT人材(プロジェクトマネージャ)の自律的な育成制度の策定と実践

山田 知明,荻野 貴之,宮崎 正博


近年,デジタル化の加速による産業構造の変革やビジネス環境の変化が急激に進み,プロジェクト(PJ)にかかる期待は大きくなり,PJの難易度や複雑性は増している.それにより,プロジェクトマネージャ(PM)の役割は変化し,求められるPMスキルは高度化と多様化が進んでおり,進化し続けている.弊社において,従来のPMスキル開発は,PMBOK等の座学による知識習得とPJ活動におけるOJTを主流として実施していたが,1) PJ特性やOJTにより習得するスキルが依存すること,2) PJ期間が長く,網羅的なスキルの習得は時間を要すること,3) 自身の特性やレベルにあったロールモデルに出会う機会が不足していることが課題であった.上記の課題に対して,1) PM同士が連携するコミュニティづくり,2) 最新PJを追体験する教育コンテンツ策定,3) PM志望者が自身の将来像を鮮明にイメージ出来る機会の形成のアプローチにより,PM志望者の将来のありたい姿を明確化し,PM同士が自律的に相互支援を行うことにより,短期間でスキルを習得できる人材育成制度を策定した.本稿では,人材育成制度の内容と実践事例について述べる.


大規模システム開発の探索的テスト採用時におけるマネジメント手法

水主 雄大,山城 かすみ


ITシステムのプログラムテストについて,近年では,これまで一般的だった試験項目票を用いた品質保証手段のみを用いることは,効率性と有効性の観点から最適解ではなく,異なる試験手法や複数の手法を取り入れるケースが増えてきている.筆者のプロジェクトでは,従来の試験項目票による品質保証手段に加え,探索的テスト手法を採用し,そのメリットを引き出すマネジメントについて検討し,実践を行った.本稿では,その有効性と留意すべき点を整理し,共有する.


クラウドプラットフォーム事業者から提供されているアーキテクチャ改善フレームワークのITシステム開発プロジェクトへの適用の考察

村上 貴裕


クラウドコンピューティングサービスを活用したITシステム開発には,設計にあたり特有の留意点がある.これら特有の留意点に関するナレッジを体系化したアーキテクチャ改善フレームワークが,クラウドプラットフォーム事業者から提供されている.本稿では,アーキテクチャ改善フレームワークをITプロダクト開発に適用する際の活用手法について,活用フェーズ,プロダクト品質へ与える影響,リスクとの関係性に関して考察を行う.


社会貢献活動とWell-beingな社会

野尻 一紀


SDGsという持続可能な開発目標が一般に浸透しつつある今日、その達成度を測る指標の一つとして、Well-beingの考え方が脚光を浴びている。PM学会メンタルヘルス研究会では、プロジェクト現場におけるメンタルヘルス不調の予防やWell-Beingについて、研究を重ねてきた。本稿ではWell-beingの意味、個人や組織、地域社会とWell-Beingの多面的関連性について考察する。また、社会貢献活動の評価軸としての社会的価値を、Well-Beingの考え方から見た側面について考察する。


リモートワーク環境下でのプロジェクト運営におけるコミュニケーション・ステークホルダーマネジメントに関する提案

伊藤 良行


新型コロナウイルス流行前は,対面でプロジェクトメンバーとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを推進してくことがスタンダードであった.しかし,新型コロナウイルスの影響により,筆者が担当するプロジェクトは一切対面コミュニケーションのないリモートワーク環境でのプロジェクト推進が必須となった.筆者はコミュニケーションマネジメントおよびステークホルダーマネジメントが重要となるなか,リモートワーク環境で各種施策を実施し,スケジュール通りにプロジェクトをサービスインした.本稿ではリモートワーク環境において,コミュニケーションマネジメントとして実施した施策や効果について紹介する.また,ステークホルダーマネジメントにおいて,対面コミュニケーションも交えたハイブリットなマネジメントを提案する.


DX時代の人財マネジメント
- 既存の社員の能力を高めるリスキリングの考察 -

加藤 智子,柴山 真里


世の中のDXへ取組みが急速に加速し,IT人財の不足が深刻化している.このような状況下で,企業はこれまで以上に他社との差別化を図り,自社の優位性を維持,もしくは高めながら,人財を確保し適切にマネージすることが求められている.人財の確保には,優秀な人財を新規に獲得し,現場のニーズにあったスキルを身につけた人財に育てるアプローチと,既存の社員の能力をさらに高め,これまでとは異なる分野や今後必要になるスキルを追加で習得させる教育(リスキリング)を行い個人の可能性を最大化するアプローチの両方が必要になる.本稿では,筆者の企業内人材育成担当者としての経験を踏まえ,後者の既存社員のリスキリングにフォーカスし,社員がスキルを獲得し新たなポジションや役割で力を発揮するために,どのような視点でリスキリングを検討すれば良いか,実践的な取り組みを含めて考察する.


ニューノーマルな働き方におけるプロジェクトマネジメントでのセキュリティ管理の考慮事項

林 香里


ニューノーマルな時代となり、リモートワークが定着化し、今までのように物理的に1つの同じ場所でメンバーとともに業務を行う状態から、複数拠点や自宅からのリモートワークも混在した環境で業務を行う形に変化してきている。これにより、多様な働き方が実現され多様な人財の採用にもつながり、活躍の場が見込まれる一方、プロジェクトを管理する上でのセキュリティ管理については、今までとは異なった視点でのセキュリティに関する考慮も必要となっている。本稿では、ニューノーマルな働き方の中でのプロジェクトにおけるセキュリティ管理を、継続的に推進していくための施策を考察する。


アジャイル研修実施からの学び

石井 真,竹内 徹


2021年9月に発足したキンドリルジャパン株式会社では、アジャイルへの取り組みの一環として、社内有識者を講師に置いて、社員と取引先を対象としたアジャイルの公開研修を開催し、大きく好評を得た。研修は初学者を対象に、入り口から実践的な話と段階的に理解が得られるよう構成した。また、その研修準備は、ストーリーボード作りから、プロトタイプ作成、アーリーアダプターへのインタビューを繰り返し行いながら進めた。また研修内容も、参加者のフィードバックを反映していく形を取り、進行管理および内容両面でアジャイルのプロセスを盛り込んだ。講義も一方的なものではなく、チャットや投票を通じて、インタラクティブかつフィードバックを得られるよう工夫した。本稿では、研修内容の概要を紹介し、研修の準備、開催から得られた知見から、トラディショナル型のプロジェクトからアジャイルプロジェクトに必要なマインドセットについて論じる。


ソフトウェアドキュメント検証の社内推進活動

吉村 直人


当社では,ソフトウェアの開発生産性,品質向上施策として,曖昧表現,誤表記を機械的に検出する,ドキュメント検証ツールを開発,2013年から社内展開を推進,一定の普及を得ている.これに加え2020年から新たに,ドキュメント検証をプロジェクト成果物に一斉適用する,ドキュメント検証サービスの社内提供を開始,社内推進活動を行っている.しかしながら,ドキュメント検証サービスの普及は進んでいない.ドキュメント検証の更なる社内推進のため,現状分析に基づく,ドキュメント検証サービスの活用事例収集,情報発信活動,導入支援活動,適用領域拡大などを実施すると共に,プロジェクト現場の要望に応える機能強化を進めることにより,ドキュメント検証サービスの普及を進めている.


PMの行動変容を目指した主体的かつ対話的なプロジェクトマネージメント教育の実践

杉野 晴江


近年,新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)の拡大により,プロジェクトマネージャー(以下「PM」)も在宅勤務が増え,リアルでの出社は減少した.このようにPMの働く環境が変化しても,プロジェクトの品質と生産性を向上させPMのエンゲージメントレベルを向上させる必要性には変わりはない.したがって,私達にとってこのPMのエンゲージメントの基礎となるPMの能力向上は,引き続き喫緊の課題であり,このPMの働く環境の変化に迅速に適合したPM教育の実施が重要だと考えた.本稿では,PMが主体的に考え対話しながら理解を深めて学び行動変容につなげる為に2つの形式で行ったワークショップ(オンライン型,対面型)を紹介する.これらの具体的な事例をもって,教育適用時の経験と,教訓と今後の展望について報告する.


現代のシステム導入におけるプロジェクトマネジメント

伊藤 博隆


DX(Digital Transformation)案件など,新しい価値創造を目標としたプロジェクトにおいて,顧客が自身の要求事項を定義出来ず,システム導入が目的と合致しない状況で,システム導入の構想策定,要件定義を実施するプロジェクトが増えている.そして,プロジェクトマネージャーに求められる上流工程のマネジメントが,以前より高い難易度となっている.また,働き方改革という背景により,プロジェクトマネージャーのプロジェクトコントロールは,重要度を増している.これからのプロジェクトマネージャーに求められることを,ステークホルダーマネジメントの観点で考察する.


PM育成における『ダブルPM』の有用性に関する考察

久保 恭彦


プロジェクトにおけるプロジェクトマネジャー(PM)を2名体制で構築する『ダブルPM』は,後進PMの育成および組織のPM不足に対して有用な手段となり得る.大規模プロジェクトにおいて,上位ランクのPM(上位PM)が組織上のPM任命を受け,プロジェクト実行上の実質的なプロジェクトマネジメントを後進PMが担う.これにより,上位PMにとっては後進PMをサポートする程度の負荷で済むようになり,後進PMにとっては本来扱うことができない規模のプロジェクトを管理する経験と実績を得られる.さらに,上位PMにとっては当該プロジェクトにおける負荷が最小化されるため,他のプロジェクトとPMを重任することも可能となり,組織の慢性的なPM不足に対しても有用な手段となり得る.


実判例から見るプロジェクトの情報提供義務とマネジメント義務

曽我 純映


ソフトウェア開発プロジェクトに係る係争は後を絶たない.システム開発が,建築物とは異なる無形のものを作り上げる性質のため,完成形の認識が受発注者によって食い違うことが多い事に起因する.過去の多くの裁判事例でも,争点は,作ろうとしたものの第三者評価と,責任範囲に言及されるものが多い.ソフトウェア開発のプロジェクトが複雑になるにつれ,受発注者各々の役割は責任の所在と共に曖昧になりがちとなる.これまでの正しいとされてきたプロジェクトマネジメントのプロセスの精緻な遂行のみでは,トラブルを予防することはできず,発注者及び受注者の義務を正しく捉えプロセスを改善することが肝要である.


複数プロジェクトにおける有識者共有による資源マネージメント

高田 健一


プロジェクトが失敗する原因は様々である.原因の一つとして,要件定義をはじめとする上流工程を的確に実施できていないことからプロジェクト終盤の工程において,不具合が多発し,納期・コスト・品質の各面において計画どおり遂行できないことがある.上流工程を的確に実施するためには,的確なスキルを持った要員をアサインする必要があるが,人材不足等の都合により効果的な人的資源マネージメントを行えない状況がある.複数プロジェクトで人的リソースを共有し,効率的に資源マネージメントを実施する施策を報告する.


リモートワーク環境下におけるシステムテストのプロジェクト管理手法について

藤井 緑


システム開発におけるシステムテストは,ユーザー受入テスト前にシステム開発者が行う最終テストである.故に計画通りのスケジュール及び品質でテストを完了する必要があり,テスト関係者をプロジェクトルームに集めて迅速な情報共有を行い,実施することが効率的である.しかしながら,COVID-19の影響により,昨今のシステム開発はリモートワーク環境での実施へと変化したため,テスト関係者が集まらなくても,システムテストを円滑に進めるためにプロジェクト管理手法の工夫が必要となっている.本稿では、リモートワーク環境下でシステムテストを行う際のコミュニケーション計画やリスクマネジメントについて,筆者が携わったプロジェクト事例を通して有効であった手法やツール,課題について考察する.


軽量なデータ駆動型品質予測モデルにより開発者中心の品質管理を牽引するツールの提案と実証

大坪 弦也,向井 広幸,鵜林 尚靖


ソフトウェア開発の現場での品質管理の主役は,プロジェクトマネージャであるケースが多い.本論文では,プロジェクトメンバーが開発を遂行時に発生させた問題(レビューでの指摘やテストで発見したバグ)に対して,プロジェクトメンバーが行うべき横展開対策を,データ駆動型の「品質予測モデル」により自動的にアドバイスするツールを提案する.本ツールは,品質管理の主役を,プロジェクトマネージャからプロジェクトメンバー全員へとシフトし,セルフマネージメントを促進する.提案する「品質予測モデル」は,「機能・メンバー特性」と,実プロジェクトのデータから独自に分析し定義した「7つのインシデント」との相関関係による“重み付け”という軽量な手法により実現する.軽量な手法により,異なるドメインのプロジェクトに対しても,低コストでの導入を可能とした.他プロジェクトでの検証の結果,プロジェクト管理工数を28.2%削減できることを定量的に証明した.


変革型チームビルディング

斉藤 功治


お客さまの要件ベースのシステム提供から,お客さまの目的を達成するためのサービス提供へと変化する中で,ITシステム構築のプロジェクトの進め方は,従来のウォータフォールモデルでの進め方から,PoCの実施やアジャイル開発の導入など変化してきている.一方でプロジェクトチームの構築については,依然として従来の組織ベースでのチーム形成が基本となっており,求められるスピードや変動する要件に合った迅速かつ柔軟なチーム形成が困難であり,知識・スキルの不足によりプロジェクトの遅延や損益悪化に繋がることも少なくない.こうした問題を解決する,あるいは軽減するには,組織を跨った専門部署との連係や,新技術などに対応して自部署の得意とする分野を広げる日々の人財育成を進めることが重要である.


プログラミング未経験者のIT人材早期育成に向けたリメディアル教育手法による要員調達の有効性に関する考察

増田 浩之,上條 英樹,奥村 真也


DXへの要望の高まりやコロナによる働き方の変化,人口減少等の背景から今後,増々IT人材が不足すると予測されている.実際,ITスキル人材の不足によりプロジェクトの立上が難航するケースが増えている.IT人材の調達には社内IT人材やITベンダーからの調達が一般的であるが,要員不足を補うために社内IT部門以外の要員を育成してIT人材として再配置するケースやITベンダーもIT未経験者をキャリア採用しIT人材の早期育成を行うケースが今後,増えると予測される.IT以外のキャリアを持つ人へのIT教育のハードルの一つにプログラミングに対する心理的な壁があるが,対応策として大学教育で採用中のリメディアル教育の考え方が有効であると考えた.そこで,近畿大学と共同研究しているリメディアル教育手法を用いた大学生向けのプロフラミングカリキュラムを基に,要員調達の一つの課題解決策として,ロボット教材とビジュアルプログラミング言語を用いたプログラミング未経験の社内人材やキャリア採用者向けの教育カリキュラムを設計し,コースウェアを作成した.本稿では,プログラミング未経験の社内人材を対象にコースウェア受講による効果を検証し,有効性について論ずる.


ERP導入における要件定義の進め方の提案
- 要求定義と要件定義の違いに留意して -

広川 敬祐,大場 みち子


 システム導入において、要件定義は重要な作業とされ、ERP導入においても同じである。ただし、ひと言で要件定義といっても、業務要件、システム要件、機能要件、非機能要件と分類できるものであるが、その分類と内容をシステム導入の関係者が同じ認識で理解していると言えない状況がある。 ERP導入においては、ビジネス要求を定義し、それに基づいてシステム化要件を定義していくことが必要である。ここでのビジネス要求やシステム化要件を混同したり、ビジネス要求を定義しないでシステム化要件を定義すると、後工程になって手戻りが発生したり、ユーザー要求を満たせないシステムになってしまいがちである。 本研究は、ERP導入における要件定義の進め方として、ビジネス要求とシステム化要件の違いを明らかにし、ERP導入を失敗しないための要件定義の進め方の提案を行うものである。


ニューノーマル時代における新入社員研修の一事例
- 新入社員の心理的安全性に配慮した集合研修とオンライン研修のハイブリッド設計 -

福島 奈津子,柴田 開仁,鈴木 加代子,西野 晶子,杉山 志保,中島 雄作


2020年4月,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,筆者らの所属会社における3か月間の新入社員研修は,集合形式で当初計画されていたものを,全てオンライン形式もしくは自主学習に急遽切り替えた.その経験をもとに,筆者らは,プロジェクトマネジメント学会2020年度秋季研究発表大会にて,「ニューノーマル時代における新入社員研修の在り方の一考察」を発表した.2021年及び2022年においては,筆者らは,コロナ禍の状況を見つつ,集合研修とオンライン研修を織り交ぜて新入社員研修を実施し,雑談の促進,心理的安全性への配慮等,様々なノウハウを獲得した.本稿では,ニューノーマル時代における新入社員研修の一事例について述べる.


新卒採用におけるWell-being志向マネジメントの一提案

鈴木 加代子,柴田 開仁,福島 奈津子,猪又 大助,西野 晶子,杉山 志保,中島 雄作


2020年初め頃,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,筆者らの所属会社における新卒採用面接は,対面形式で当初計画されていたものを,全てオンライン形式に切り替えた.インターンシップもオンライン形式となり,広報活動,会社説明会などもネット主体に変わった.筆者ら人事担当も原則リモートワークとなった.一方,会社としてWell-being経営の推進に取り組むことになった.筆者らの所属会社では,社員のライフサイクルを「獲得」「定着」「活躍」の3つのフェーズに分けてWell-beingの推進施策を実行しているが,新卒採用においては「獲得」フェーズにあたる.筆者らは,「採用候補の学生の為になることは何か」に重きを置いて活動することとし,様々な学生にとってのWell-being推進施策を実行した.本稿では,新卒採用におけるWell-being志向マネジメントの一提案について述べる.


AIを活用した不調プロジェクトの予兆検知

山本 昭典


プロジェクト状況を常時監視していれば,ある特定の仕掛プロジェクトに対しては,将来不調になるかどうかを判断できるが,大量の仕掛プロジェクトに対して判断する場合は,相当な時間を要するはずである.この不調プロジェクトになるかどうかを判断する手法について,人間の知見を活用し,かつ作業効率を向上させるため,AI(Artificial Intelligence:人工知能)を導入することにした.本稿では,AIを活用した不調プロジェクトの予兆検知について,プロジェクトマネジメントにAIを取り込んだ経緯,AI学習データの整備,シミュレーション,およびAI予測を行うにあたって直面した課題や展望を述べる.


アフターコロナ及びDX時代に向けてPMOが為すべきこと

中島 雄作,小豆澤 亨,神崎 洋,木村 和宏,大槻 義則,中村 仁之輔


2020年以来,新型コロナウイルス感染の波はしばらく継続する気配があり,かつDXの変革も今よりもっと推進しなければならない.プロジェクトマネジメントの標準化,生産性向上,品質管理等の業務を遂行してきたPMOも,DXの波に乗り遅れてはならない.現場プロジェクトより先んじて指導的立場になる使命がある.そこで,本稿では,カッツモデルに沿って,アフターコロナ及びDX時代に向けてPMOが為すべきことについて論述する.


ユーザーとの共創を促進させる実践的教育

石原 寛紀


近年,DX(Digital Transformation)という言葉が広く浸透している.企業は,ビジネス環境の激しい変化に対応し,データとデジ タル技術を活用して,顧客や社会のニーズを基に,製品やサービス,ビジネスモデルを変革していくことを求められている.こうした中,システム開発の現場においては,開発者とユーザー企業(ビジネス側)とが一緒になってプロダクトの品質を高めていく共創型のSIが広まってきている.一方で,これらを推進する「人材の不足」は深刻な状況にある.経済産業省のDXレポート(2018)では,「人材の不足」を,ITシステム「2025年の崖」として報告されており,人材の確保,育成が急務な状況になっている.本稿では,「人材の育成」に注目し,ユーザー企業に向けた実践的な教育プログラムを開発,適用させ一定の成果をあげた.その取り組みを紹介するとともに,効果および今後の展望,課題について検証する.


リスクマネジメントの有効性を向上するための施策

西尾 和剛


プロジェクトにおけるリスクマネジメントの重要性は,広く認知されており,プロジェクト開始時には,リスク特定,リスク分析,リスク対応計画を行うことが常識となっている.しかし,ソフトウェア開発プロジェクトにおけるトラブルの事例は,依然として発生しており,その多くの原因は類似していることから,リスクマネジメントの実践における不十分さが,その根本にあると考察している.本稿では,こうした問題を解決するために,ソフトウェア開発プロジェクトにおいて,リスクマネジメントが疎かになる要因と有効性を向上するための施策について考察し,実際のプロジェクトの事例を用いて対策と効果を紹介する.


海外法人との連携における品質リスク低減のためのワークストリーム適用事例

古田 莉央


近年,日立ではM&Aを含めグローバル事業が拡大し,海外法人との連携が増えている.そのような中,日立と海外法人との間で品質に対する考え方の違い(ギャップ)に起因して品質トラブルとなる事例が発生した.その事例からの反省により,お互いのギャップを整理し,品質リスクの低減を図る取り組みを行った.具体的には,日立と日立グループ海外法人(海外法人A)との間でWorkstream(ワークストリーム)(注1)を立ち上げ,開発プロセスや関連部門の役割の違いを整理した.両社の連携案件が立ち上がった際,洗い出されたギャップに対し案件ごとに事前に対策を講じることで,未然に品質トラブルを防ぐ仕組みを作り上げることができた.今後,同様に海外法人のM&Aが発生した場合は今回のワークストリームの活動実績をもとに同様の取り組みを実施することで,他海外法人との品質トラブルも未然に防ぐことができると考えている.本論文ではワークストリームの立ち上げからギャップの整理,ワークストリームの評価までを対象とし,実施したこと,苦労した点/工夫した点,成果について報告する.注1) 本論文では「日立と日立の海外法人が連携する案件に対し,品質トラブルを未然防止するための開発プロセスを確立する活動」をワークストリームと定義する.


研究開発における従来型管理法とアジャイルの融合に関する一考察

新谷 幸弘


近年,アジャイル型プロジェクトマネジメントメソッドがソフトウェア開発を中心に浸透してきている.これらは多くの場合,ウォーターフォール型プロジェクトマネジメントメソッドとの対比で論じられている.一方,研究開発マネジメントに対するアジャイルの適合性に関する研究事例は多くはない.本研究では,研究開発において従来型R&Dマネジメントとアジャイル型プロジェクトマネジメントの融合性に関して考察した.その結果,研究開発の段階によって特性が異なるとの知見を得た.


スクラム型開発疑似体験ワークショップの事例紹介

谷川 麻理,所 儀一,馬 ちゅう,三好 きよみ


昨今、変化の激しいビジネス環境に対応するために、ソフトウェア開発の現場でもアジャイル開発手法を導入する組織が増加している。従来のウォーターフォールモデルからアジャイルへ移行するにあたって、アジャイル未経験者を抱える組織では、アジャイルの理解・導入の仕組みづくりの支援を必要としていると考えられる。そこで、アジャイル未経験者を対象として、スクラム型開発のフレームワークおよびアジャイルのマインドセットを学習することのできる手法といわれるLEGO4SCRUMを基にしたワークショップを実施した。本稿では、ワークショップの実践結果について報告する。


転職経験と仕事への取り組み方の関連について
- テレワーク勤務のプロジェクト型業務従事者を対象として -

三好 きよみ


本論文は,転職経験と仕事の取り組み方との関連について,テレワーク勤務のプロジェクト型業務従事者を対象としたアンケート調査結果を統計的に分析した.社会や経済活動などの様々な変化の中で,一人ひとりの意思や能力に応じた働き方を実現するために,転職を視野に入れることを促進するための知見を得ることが目的である.テレワーク環境下の生産性,仕事環境,チーム内コミュニケーション,個人のチームワーク能力,自己調整方略,ワーク・モチベーション,及びワーク・エンゲージメントについて,転職経験の有無によって比較した.その結果,個人のチームワーク能力のうち,バックアップ能力,モニタリング能力について,転職経験ありの方が転職経験なしの者よりも低い値であった.ワーク・モチベーションのうち,協力志向モチベーションについて,転職経験ありの方が転職経験なしの者よりも低い値であった.


システム特性を考慮した規模見積りに関する考察

青野 朝日,村井 穏永,八木 彩乃,清水 理恵子


システム開発にかかる開発費用の見積りには,規模見積りと工数見積りが必要である.規模見積りには,機能要件と規模の関係が捉えやすいファンクション・ポイント(FP),工数見積りには過去の実績データが豊富な Source Lines of Code(SLOC)を使用することが多い.開発費用の算出には,規模見積りの結果を工数見積りへ反映させる必要があるため, FP を利用して SLOC を機械的に算出できることが望ましい.原田ら(2006)の「要素見積法」では IFPUG 法のトランザクションファンクションを再分類し,複雑度を割り当てたものを FP として SLOC を算出している.また,八木ら(2021)では画面項目数を FP として SLOC を算出し,見積り精度が高いことを確認している.これらは,画面から判断できる要素が規模に影響していることを示している.本論文では,これらの要素以外で規模に影響すると考えられるシステム特性に着目し,考察した結果を報告する.


ティール組織の発想をプロジェクトにも適用できるか検証してみた

三上 晃司


世界は豊かになり,貧困状態に陥っている国は大きく減少,マズローの欲求5段階説で定義されるヒトの「欲求の発達レベル」は益々あがっていき,人々の働き方,管理のしかたもまた,成長させなければならない段階が訪れたと考えている.企業・団体・行政の組織体制のみならず,プロジェクト体制についても然りである.現在,最も成長・成熟した状態と言われる組織形態であるティール組織の発想を,実際のプロジェクトにも適用可能であるのか検討・検証した結果を論じる.


PM国際規格から見える理想と現実
- 唯名論的解釈のすすめ -

端山 毅


国際規格は,特定の分野の専門家が,その知識と経験を結集し,議論を通じて実務を抽象化し,合意した一般的な理論を記述したものである.重要な概念を定義し,その関係を整理して示すためには,定義された概念をあたかも実在するかのように記述せざるを得ない.規格を実在論的に解釈すると,そこに記述された概念に対する忠実さを求めているように見えてしまう.しかし,抽象化された概念は,もともと社会で広く多様な形で実践されていたことを整理し,簡潔な名称を付与したものである.このような実態に着目することで,実務上で取り組むべき課題を認識し,その課題解決のために国際規格を有効に活用することができる.本稿では,プロジェクトマネジメントの国際規格であるISO21500:2012を抜本的に改訂したISO21502:2020に着目する.これを唯名論的に解釈することで,プロジェクトマネジメントにおいて世界の人々が意識している問題を読み解き,実務上の活用の幅が広がることを主張する.


ITインフラ構築プロジェクトにおける効率化及び品質向上に向けた取り組みと有効性検証

金山 淳一


情報システム開発プロジェクトにおけるITインフラの構築プロジェクトについては,昨今のクラウド基盤の浸透やビジネススピードの加速とともに短納期かつ高品質への要求が高まっている.このような情勢の中,様々な環境構築を自動化するためのデプロイメントツールは各ベンダから提供され,自動化される部分についての作業効率化や品質の確保はできる状況にはなりつつある.しかし,事例の少ないソフトウェアや自動構築可能なソフトウェアでも汎用的に使用されない項目については自動化されていない実状もあり,最終的にITインフラ構築を完遂するためには,自動化されない手動構築部分の作業効率化や高品質化が必要不可欠となる.こうした中で,自動構築と手動構築を併用したITインフラ構築における効率的かつ高品質な作業についての取り組みについてその有用性の評価を行う.


大規模プロジェクトの上流工程マネジメント

吉田 政史


大規模開発のように開発規模が大きく開発期間が長くなると,開発に支障を来す事例が発生する可能性も高くなる.大規模開発を進めるうえで重要と考えるのは,要件定義などの上流工程をスキルある有識者が可能な限り不確定要素が無いように取り纏め,品質が保証できる開発計画を立てることと,開発期間中に発生する課題対応時に判断することができる判断要素を明確にすること,そして多くのステークホルダーとプロジェクト成功に向けて意識統一をはかり対処することである.大規模開発の途中にさまざまな課題が発生した時に,COCOMO開発曲線の考え方に開発要員スキルを加味した開発ベースラインの判断基準を作成し,多くのステークホルダーと意識統一をはかり,課題解決期間の短縮を行った.その課題解決の際に使用した開発ベースラインの検討経緯と課題に対処した内容を紹介する.


大規模ミッションクリティカルシステムにおける商用維持管理作業の品質管理に関する考察

市岡 亜由美,掛川 悠,高橋 秀行,林 智定


我々の社会生活が高度化/複雑化するに伴って、これを支える情報システム(所謂、ミッションクリティカルシステム)の果たす役割は極めて重要なものになって来ており、多様なサービスを、高い品質を維持しながら、途切れる事なく提供し続ける事が求められている。その為には、アプリケーションやインフラと言ったプロダクト自体の品質のみならず、システム(環境)維持に向けた種々の作業に対しても高い品質を実現する必要があり、システム提供者は、作業品質の向上に向けた様々な取り組みを続けている。この様な状況を踏まえ、本稿では、長年、大規模ミッションクリティカルシステムの維持に携わって来た著者らの、商用維持管理作業品質向上に向けた取り組み内容とその効果について報告するとともに、今後に向けた新たな取り組み方針について紹介するものである。


プロジェクト・マネジメントスキル向上事例紹介

内川 奈津希,橋本 里実


筆者が従事している金融機関システムの保守・拡張プロジェクトにおけるプロジェクト・マネジメントのプロセスやアウトプット(様式)は,ウォーターフォールの開発標準としては概ね完成されたものとなっている.一方で,プロセス(ガイド,手続)に従えばプロジェクト管理はできるが,真の目的を十分理解しないまま計画書や管理資料を作成し,プロジェクト管理を行なっているケースが増えている.また,プロジェクト・マネジメントも日々進化している.そこで,最新のプロセス,アウトプットに準拠させることによる品質の向上とプロジェクト・マネジメントスキルの底上げを目的に行ったプロジェクト・マネジメントプロセスの見直しおよびプロジェクト・マネジメント勉強会の活動を紹介する.


プロジェクトマネージャ育成における課題管理について

菊池 広明


近年,プロジェクトマネージャの人材が不足しており育成が急務な状況である.プロジェクトを成功に導き,顧客満足度を得られるプロジェクトマネージャを育成するためには,業務知識やIT知識を身に付けた上で,プロジェクトマネージャとしての経験を積ませながら育成していくことが必要不可欠である.さらに,本人のモチベーション向上,PM資格取得,研修によるマネージメント知識の習得も必要である.本論文では,プロジェクトマネージャ育成時,課題管理の重要性を理解することが顧客満足度を得られる結果に繋がることに着目した点について述べる.


大規模開発案件輻輳プロジェクトにおけるCOCOMOモデル活用事例

豊田 玲子,山中 淳史


ソフトウエア開発プロジェクトにおける短納期化への要求は,ビジネススピードの加速とともにますます高まってきており,複数案件を並行開発する必要性も生じている.本稿で取り上げるプロジェクトは,プロジェクトをユーザーとメーカー双方で協力して成功させたいというプロジェクトではあったが,開発規模の大きな複数案件を決められたサービスリリース日に向けて並行開発する必要があり開発期間が不足するという状況に置かれていた.そこで,必要な開発期間を確保するためにCOCOMOモデルによる開発期間限界の曲線を活用してプロジェクトとしての実力値を定量的に明示して顧客説明を実施した.結果として顧客にご納得頂ける実現可能なシステム開発スケジュールを策定することができた.本テーマでは,開発期間不足という課題を解決したプロジェクト計画を策定し,複数案件を計画通りに開発完了することで顧客満足度の高いシステム開発ができた成功事例として報告する.


海外向け制御システムにおけるプロジェクトマネジメント

田中 康博


大規模システムのプロジェクトが混乱する要因としては,ステークホルダーのスコープに対する認識の相違に起因するものが多い.大規模システムにおいては規模の大きさから,多数のステークホルダーによるプロジェクト推進が必要となるが,コミュニケーション不足によるスコープに対する認識の相違は,プロジェクト混乱につながる.こうした問題を解決する,あるいは軽減するためには,コミュニケーションルール(事前に試作などのモノを見てお互いに評価すること)を事前に定め,成果物スコープやプロジェクトのスコープのベースラインを明確に設定しておくことが効果的である.海外向けシステム開発で適用し成果をあげているので今後の展開も含めて報告する.


基幹システムのクラウド移設におけるリスクマネジメント計画と実践

石井 悠,岡村 勝仁,中田 勝士


システム老朽化を背景に,既存システムをクラウドへ移設する案件は増加傾向にある.特に,基幹システムのクラウド移設においては,大規模なデータ移行・切替えが必要となる.顧客の業務影響を最小限に抑え込みつつ,大規模なデータ移行を伴う基幹システムの本番切替えリスクは極めて高い.本番切替えを問題なく完遂するためには,データ移行,外部システム切替え,日次処理性能におけるリスクに対して,いかに早期段階で課題として顕在化できるかにかかっている.また,切替え失敗時を想定して,コンティンジェンシープラン計画・立案し,万が一に備えることも必要不可欠である.本稿では,基幹システムのクラウド移設のプロジェクトマネジメントにおける,本番切替え完遂に向けたリスクマネジメント計画とその実践,取組み結果について考察する.


在宅勤務環境下におけるニアショア開発プロジェクトチームの立ち上げに関する考察

尾崎 正行


本稿では,在宅勤務環境下でのニアショア開発プロジェクトチームの立ち上げについて考察を行う.COVID-19の流行を契機として,オフィスに集まって働くという働き方に対する見直しが余儀なくされ,システム開発の現場においても在宅勤務環境にて開発を実施する形態のプロジェクトが増加している.初期はすでに進行中のプロジェクトをどのように在宅勤務環境下にシフトしていくかが課題のポイントであったが,このような状況が継続する中では,ゼロから新たなプロジェクトチームを立ち上げる機会が増えてきており,在宅勤務環境下でのチーム構築に対する課題が発生してきている.筆者は,COVID-19禍以降に,複数のニアショア開発プロジェクトチームの立ち上げに携わってきた.それらの経験より,チーム立ち上げに際して,どのような課題や注意点が存在し,それらをどのように乗り越えることでチームリードを行ってきたかをまとめる.


プロジェクトの重要成功要因である顧客ニーズを具現化する価値提供人材育成の取組
- プロジェクト経験豊富なメンターによるノウハウ承継施策の紹介 -

原田 雄一,安井 一清,飯塚 裕一,田村 真里子,貞本 修一


多様化し,急速に変化する顧客ニーズを的確に具現化するアプリケーションエンジニアは,システム開発において中核的な存在であり,プロジェクトの重要な成功要因となっている.本稿では,アプリケーションエンジニアに求められる能力をプロジェクト経験豊富なメンターから中堅社員に継承していくための取組として,株式会社NTTデータ公共社会・基盤分野PMO担当が企画・運営しているメンタリング施策を紹介する.


ローコードツールを用いたアジャイル開発における品質確保の実践

土屋 美帆


本論文では,ローコードツールを利用したアジャイル開発における品質管理について述べる.アジャイル開発において,開発プロセスの中で品質を確保する方法については、多くの報告がある.しかし,システム全体を通した品質確保の方法論や,検出バグに対する解析方法は未だ確立されていないのが現状である.さらに,ローコード開発を利用したアジャイル開発の品質確保に関しては、殆ど事例が無い。そこで、実例として、ローコードツールを利用したアジャイル開発において、システム全体を通した品質を確保するための実施した施策と、その結果及び考察を述べる。


達成感を得ながら成長意欲を促す、人材育成活動の提案

畑 伸二郎


筆者は、プロジェクトマネージャーとして、各メンバーの育成を支援し、組織力を強化していく役割を担っている。しかしながら、筆者が受け持つ事となったプロジェクトは、継続的に開発作業を繰り返しており変化が少なく、ビジネス面、品質面においても安定したプロジェクトであった為、メンバーは成長意欲を持って目標を設定し、自己研鑽を積んでいく活動ができていなかった。そこで筆者は、メンバー自身が迷いなく意思を持って明示的な目標を設定し、目標を具現化しながら成長を実感できる取り組みを試行した。実際に多くのメンバーが成長を実感し有効的であった取り組みであった為、本稿にて紹介する。


継続的な事業成長を支える「強い組織への進化」の取組み

皆川 広之,米重 年晴,田中 実,本木 克典,中泉 雅行,白川 貴敬


日本電気通信システム株式会社 共通技術推進本部は,継続的な事業成長を支える強い組織作りをミッションとしており,新しい技術とデジタルトランスフォーメーション(DX)で,ビジネス環境の激しい変化に対応するべく,業務そのものや,組織,プロセス,企業文化や風土の変革に向けて活動している.強い組織作りが目指す「あるべき姿」をオペレーショナルエクセレンスの実現とし,今取り組むべき対策として,全社レベルでのDX推進活動のスキーム構築と,強い組織へのマインド醸成を掲げた.2019年度より,デジタルプラットフォームの構築に取り組み,全社横断の推進体制を整備し,DX推進のKPIと施策活用を連動させながらリテラシー向上と変革に向けたマインドの定着化を実現した.これにより,デジタル企業へと大きく前進するとともに,社員のモチベーションに一定の改善効果が見られたため,3年間の活動について報告する.


PDPC法を応用したPMメンタリング指導の工夫と配慮
- “武勇伝を語り聞かせるだけのPMメンタリング”からの脱却 -

角 正樹, 梶浦 正規


 近年,システム開発に対する要求は複雑化しているにもかかわらず,短納期,低コストの要求はさらに高まる傾向にある.システム開発プロジェクトを率いるプロジェクトマネージャ(以下、PM)には高度な資質や経験が求められるが,その養成は容易ではない.PMの養成には実務経験から学ぶOJTが欠かせないが,プロジェクト完遂とOJTの両立が難しくなっている.そこで,OJTとの併用,あるいは減少したOJT機会の補完,代用としてメンタリングによる指導が増えている.しかし,メンタリングの実施方法は様々であり,期待した効果が得られていないケースも見受けられる.メンタリングが奏功しない要因は,メンタ,メンティ,メンタリング運営事務局,それぞれにあるが,メンタリングの成否はメンタの資質,指導力に依存するところが大きい.本稿では、筆者がメンタとして指導する場合の指導上の工夫と事例を紹介する.教材制作や指導方法にはPDPC法を応用した.これにより,“武勇伝を語り聞かせるだけのPMメンタリング”からの脱却を図る.


予兆モデルを活用したプロジェクト失敗の予兆検知

鈴木 宏明,小川 純平,松田 佳之


プロジェクトを成功に導くためには, 過去の失敗から教訓を得て, プロジェクト推進に生かすことが必要である.しかし, 実際には過去に繰り返された失敗と同様の過程を経てプロジェクトを失敗させてしまうことが散見される.そこで, プロジェクトが失敗に至る経過を過去の事例からモデル化した.モデルを活用することで, プロジェクトが失敗に至る進行をしていないか, 簡易な手法で判断することを実現する.本稿ではこのモデルを紹介し, 進行中のプロジェクトとモデルとの類似性を継続的に評価することで早期にプロジェクト失敗の予兆を捉える取り組みについて報告する.


ニューノーマルな働き方における中途採用者のプロジェクト受け入れ時のコミュニケーションマネジメント
- 中途採用者の実体験からの考察 -

深澤 和哉


コロナ禍でリモートワークが推奨された結果,企業の採用活動においても面接から内定まで,全てオンラインでのみ実施することが定着してきた.このような状況下で,IT企業においては中途採用者を一度も対面で話す機会もなく,即プロジェクトへ配属することは珍しくない状況となっている.リモートワーク前提で採用された中途採用者のプロジェクトへの受け入れには,技術教育や人間関係構築の面において,対面作業が可能だったこれまでとは異なったコミュニケーションマネジメントが求められている.本稿では,筆者のコロナ禍で転職し,プロジェクト業務に携わってきた経験をもとに,ニューノーマルな環境での中途採用者のプロジェクト受け入れ時の課題とその課題についての施策について考察する.


複数の小規模プロジェクトを担うプロジェクトマネージャーの育成

高橋 達也


昨今のITプロジェクトでは,小規模かつ短期間のプロジェクトが多数存在する.プロジェクト管理の高度化が進む中で,プロジェクトマネージャーの需要は継続して高いと言えるが,その一方でIT人材の不足は引き続き,大きな課題である.このような状況下において,複数の小規模プロジェクトを同時に任せられるプロジェクトマネージャーの育成が早期に必要であると感じている.本稿では,複数の小規模プロジェクトを担うプロジェクトマネージャーの育成に関して,育成の必要性,育成に向けたアプローチ,およびアサイン時の考慮点について,長年筆者が担当してきたシステム保守のプロジェクト経験を踏まえて考察する.


プロセスマイニング技術を活用した超短期間でのDX人材育成事例

中山 翔太,溝渕 隆,三宅 敏之,仁尾 圭祐


近年,様々な企業がDX推進に取り組んでいるものの,成功している企業が多いとはいえない状況である.多くの企業がDX人材特有の育成の難しさやDX案件を完遂することができる有識者の確保といった課題に直面している.DX人材特有の育成の難しさの理由として,「DX人材の定義が明確にされていない」「必要となるスキルセットが多岐にわたりアジリティが求められるDX案件では人材育成の期間を十分に計画できない」といったことが挙げられる.PMBOKでは人的資源計画を立案し,人材育成をマネジメントするための知識エリアとして資源マネジメントが定義されている.実際のDX案件に適用としようとした場合,DX人材特有の難しさといった課題に直面するプロジェクトマネージャーは多い.本稿では,それらの課題に対する解決策としてプロセスマイニング技術の活用を提案するものである.プロセスマイニングでは,実際に稼働しているシステム内のイベントログデータという客観的データを入力することでビジネスプロセスの抽出・プロセスモデルの作成・プロセスを通るイベント数の定量化が可能である.この特徴を利用することで,UX/UIを改善する実際のDX案件において必要となるスキルを定量化し,超短期間でDX人材を育成した事例を報告する.


保守運用リーダーが着目すべき継続的サービス改善のテーマの抽出方法に関する一提案

松宮 美穂,島田 和彰,蓬澤 守一,山中 一史,伊部 佑希,中島 雄作


筆者らは,IT保守運用部門のメンバを数名から数十名抱える立場の現場リーダ(ITサービスマネージャ)である.継続的サービス改善こそがITサービスマネージャの活力の源泉と考える.しかしながら,継続的サービス改善のテーマ選定は案外難しい.そこで,まずはあらゆるステークホルダの目線で継続的サービス改善に関する課題を挙げた.すると,ITサービスマネージャが真に着目すべき継続的サービス改善に関する課題が,①エンドユーザ,②顧客担当者,③配下のメンバの3つのステークホルダの課題に絞り込めることがわかった.これら3つの課題は,キーワードからの強制連想法と,ITサービスマネージャが気づきにくいことに特化した抽出手法とを用いて考えればよいことがわかった.本稿では,保守運用リーダーが着目すべき継続的サービス改善のテーマの抽出方法に関する一提案について述べる.


大規模プロジェクトにおけるマトリクス組織型の現場マネジメントを経験して考えたこと

豊島 直樹


当社における基幹系システムを司るハードウェアやソフトウェアが共に老朽化を迎えており,シェアの高いパブリッククラウド環境への移行と刷新を行うプロジェクトを現在も進行中である.規模の大きさゆえに,現場組織も多数存在するが,各現場組織の組成とは別に,機能別に効率的な検討と意思決定をするための横串組織を組成する形を取っている.PMOとは違い,機能別の名前の検討体を表すタスクフォースと名付けているが,横串組織の実際の現場リーダーを務めた経験から,マトリクス型組織の運営の難しさとメリット,デメリットについて本稿で考察する.


MLSEによるモダンPMのアップデート
- 機械学習工学を適用した新たなプロジェクトマネジメントへの挑戦 -

浦川 伸一


我が国においても,情報システム開発に人工知能を採用したプロジェクトが急増している。多くの事例から考察できるのは,ソフトウエア工学をベースとした開発アプローチの限界である。近年機械学習工学(MLSE)という新たな学術領域が議論され始めているが,ソフトウエア工学との差異など,まだまだ未成熟な領域も多い。そこで,モダンプロジェクトマネジメントをどのように応用し適用していけばいいのか,AI社会原則、AI倫理などの関連テーマにも触れながら,今後の指針について整理を試みる。


業務システムの障害を撲滅する「日別・変化点別リスクマネジメント手法」

藤崎 聡


多くの企業が競争力の維持・強化のためにITの強化に関心を持っている一方で,既存の業務システムの運営コストが足かせとなり、IT強化に十分に取り組めない課題がある.業務システムは,長期利用の中で機能追加・変更により処理が複雑になり,その内容が十分ドキュメントに反映されずにブラックボックス化しているケースが少なくない.少しの変化が思いも寄らない場所に影響を与え,その結果システム障害が多発することとなる.根本的な解決策はシステムのモダナイゼーションだが,予算や要員などの制約により既存システムを使い続けている企業が多い.そこで,業務システムが長期利用されることを前提とした上で障害撲滅を実現するための手法を考案した.システム障害が発生する要因を「システムの変更」「データの変化」「業務の変化」の3つと定義し,それらを日別に抽出して対策を立案することで障害を撲滅した.今回考案した手法と,実践結果を元に有効性について考察する.


レジリエンスを導入した情報システム開発プロジェクト・チームの編成に関する研究

荒木 寿珠,関 哲朗


情報システム開発プロジェクトのチームの編成には,機能型やプロジェクト型,マトリクス型などのプロジェクトの組織形態やDiSC理論やHerrmannモデルなどの個人の行動特性に基礎を置く議論がなされてきた.一方で,プロジェクト・チームの生産性は,メンバ個人のモチベーションなどに依存することはよく知られたことであり,プロジェクト・チームの組成に当たってはチーム・メンバの依存関係や補完関係を意識することが望まれる.例えば,FFS理論では補完型チームと同様に同質型チームの有効性についても言及されているが,前提が必ずしも知識集約型の仕事ではない部分もあり,何れが有効であるかは一概には判断できない.本研究では,長期化,複雑化する情報システム開発プロジェクトの生産性の確保のために,メンバのモチベーションの維持,向上の必要性に注目した.そこで,チーム編成のための従来のアプローチに加え,個人の持つレジリエンスを考慮することの可能性を考察する.ここで,レジリエンスは,ネガティブ・インパクトに対する抵抗力,回復力であり,別の言葉で言い換えるならば,ストレスに対するロバストネスに相当する概念である.本研究では,補完型チームの有効性に言及し,従来型のチーム編成方法にレジリエンスの尺度を加えたチーム編成方法に関する研究の端緒を与える.


統計数理モデルのメタモデル化の試み
- 信用マンダラ -

福田 淳一


伝統的な統計解析を始めとして機械学習やAIの浸透によってさまざまな統計数理モデルがビジネスに浸透してきている。ただ、統計数理モデルは数式で表現され、その解釈はエンドユーザには難しいものとなることがある。工業製品の品品質管理等に使われるモデルは説明変数も目的変数も物理的な世界のものであり、利用者にとっても日頃から馴染んでいる世界のものであるので解釈はしやすい。しかし、筆者が関わっている与信モデルでは目的変数は人の「信用力」となる。これは性質や概念の世界のものであり物理的に計測できるものではない。一方、説明変数は「年収」や「担保の価値」であり物理的に計測可能なものである。物理的な世界と物理的に測れないものを結びつけているものが与信モデルである。このようなモデルでは説明変数と目的変数の関係を説明することが困難になることがある。筆者は物理的な統計数理モデルを抽象化するメタモデルを考えることによってこの乖離を埋められるのではないかと考えた。筆者は関係する与信の世界でメタモデル化を試行し、このメタモデルを信用マンダラと名付けた。実際の与信を模倣したデモデータによるものではあるが、信用マンダラによるモデルは従来のモデルより説明しやすく精度も高いものになることがわかった。


プロジェクトの成功確保に向けたメンバの離任防止策に関する研究

青柳 福美,関 哲朗


プロジェクトの進捗に従った環境の変化などから,プロジェクトのマネジメントに当たるメンバや一般のメンバから離任者が発生することは経験上よく知られたことである.その原因は,人間関係のストレス,プロジェクトの現場の混乱やこれらに起因するモチベーションの低下にあるとされている.このような現象は国内外を問わず多発していて,決して無視できないプロジェクトの失敗要因であるにも係わらず,この種の議論,特に国内における議論は決して多くはない.一方で,メンバが離任することへの対策は,バックアップ要員の用意や外部からの増員,現有メンバによる埋め合わせなどであったりするのが一般であり,海外の研究ではメンタ制度の導入が提案されていたりするが,これらは必ずしも有効な方策とは言えない.国内では外部からの要員の追加が一般に行われるが,Brooksの法則が示すようなコミュニケーション・チャネルの増加は無視できず,その適用には慎重になるべきである.また,プロジェクトの内容を熟知した現有メンバによる対応も負荷の状況によってはモチベーションを大きく低下させる要因となる可能性は否めず,一人の離任が他メンバの離任に繋がる2次リスクに発展する可能性も否めない.本研究では,いくつかのプロジェクト・チームの下層に所属するメンバの離任事例を考察することを通して,離任構造の検討を行った.結果として,離任に至るストレスの主たる要因がエスカレーションを含むコミュニケーションにあることを指摘した.


拡大するステークホルダのマネジメントに関する研究

加藤 真実,関 哲朗


従来のプロジェクト・ステークホルダ・マネジメントの議論は,プロジェクトの成否に直接関係する個人や組織に限定されていた.企業のステークホルダは株主に限定されてきた.これが2008年のリーマンショック以降は金融機関等にも拡大され,そして,SDGsの認識はステークホルダ資本主義に新たな解釈を与えることでステークホルダの範囲を拡大している.加えて,働き方改革の推進による個人の持つワーク・ライフ・バランスの感覚,すなわち,個人の行動に対する優先順位付けの多様化や,コロナ禍下でのテレワークの急速な推進がもたらした労働環境の変化や個人の感性の変化は,仕事優先,仕事をするための場における労働といった従来の「当たり前」に大きな変化を及ぼしている.本研究では,プロジェクトを取り巻く環境の変化を整理し,そこに発生するステークホルダの存在を確認することで,拡大するステークホルダに対するマネジメントに係わる研究の端緒を与える.


若手PMの育成
- 製造業での経験に基づく考察 -

湊 陽介,寺田 由樹


本稿では筆者の製造業でのITプロジェクト経験を踏まえ,若手PMの育成について述べる.製造業においても,デジタルトランスフォーメーションの推進の加速に際して,早期の要件実現を目指し,短期間での開発を繰り返すようなアジャイル開発も増えている.IT人財の不足が続く中で,長期間の大型システム開発プロジェクトを通し,時間をかけて要員を育成するような機会も減っており,特に若手PMの育成は重要で,且つ難しい状況にある.若手PMとして育成を受ける立場,およびシニアPMとして,若手を育成する立場の双方の観点からPM育成についての課題とその対応策について考察する.


コロナ禍における部門運営の課題対応に関する事例紹介

山倉 勉


新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が全世界に流行してから2年以上が経過し,緊急事態宣言下での行動制限やワクチン接種といった様々な対策が講じられてきているが,変異型ウィルスの影響もあり今現在もなお感染者数そのものは高い傾向が続いている状況にある.日常生活に変化をもたらしているのはもちろんであるが,職場への影響も大きく,勤務形態として在宅勤務を代表としたいわゆるテレワークに軸足を移している企業が増えてきている.組織を管理・運営するマネージャーにとってもコロナ流行前とは状況が変わりテレワーク特有の問題や課題への対応が必要となってきている.本論文ではコロナ禍における部門運営に関する問題や課題をあげ,実際に筆者が自部門において行った対応内容について事例を交えて紹介する.


分散開発における新規ニアショア拠点立ち上げ事例について

土屋 泰


プロジェクトを進めていく上で,オフショア開発,ニアショア開発といった手法を用いて開発コストを抑え,品質を確保しながら利益を最大化させることが重要である.しかし,世界的なCOVID-19感染拡大の影響を受けて,既存のニアショア開発拠点だけでは要員確保が困難になり,短期間で新規ニアショア拠点を立ち上げることになった.委託先や開発拠点の選定については前提条件を明確にした上で比較検討し,決定した.また,立ち上げに際しては,現地に社員を常駐させ,要員の指導育成や問い合わせ対応を行うことで,早期のチームビルディングを実現することができた.委託先が自立的に開発するための条件をあらかじめ明確にし,常駐社員および委託先の意識統一を図り,一体となって取り組むことにより,最終的に常駐社員の支援なしで引き継ぎを完了させることができた.これにより短期間で新規ニアショア拠点を立ち上げ,そのノウハウを吸収することができた.本稿は,委託先の選定,開発拠点の決定から,要員の技術指導と引き継ぎを行うまでに注意すべきポイントを事例としてまとめたものである.


システム開発プロジェクトにおけるニアショア導入に関する考察

迫 佳志


従来のシステム開発プロジェクトにおいては,オフショア拠点を構えて,一部開発作業をオフショアに依頼するケースが多くみられた.しかし,昨今では,オフショアのコストメリット低下や経済安全保障の強化の観点等からオフショア拠点の代わりに,国内にニアショア拠点を構えるケースも増えてきた.リモートワークの導入が急速に進んでいる昨今において,ニアショアの活用はこれまで以上に重要になってくると考える.また,新たにニアショアを導入する場合,これまでになかったマネジメント負荷の増加等新たな課題が出てくることも考えられる.本稿では,筆者が首都圏で推進するプロジェクトにニアショアの導入を行った実体験を交えながら,ニアショアを使うことによるメリットや課題について考察を行う.


DXの推進に影響を与える組織文化の要因の調査
- 因子分析と重回帰分析の適用 -

河村 智行,野口 晴康,鷲谷 佳宣,当麻 哲哉


我が国の多くの企業が,デジタルトランスフォーメーション(DX)による成果を十分に得られていないと言われており,DXを効果的に推進できる能力の獲得が急務である.本研究は,DXの推進に影響を与える組織文化の要因を明らかにすることで,企業のDXの推進に寄与することを目的とする.E.Scheinの組織文化のモデルを参照してアンケートを作成し,インターネット調査により日本企業から297件の有効データを収集した.そして,これらのデータに対し因子分析と重回帰分析を適用した結果,「DX推進組織のリーダ・メンバのITなどのスキル」および「DX推進組織のメンバのリスクテイクなどの特性」の2つの組織文化の要因がDXの推進に直接強い影響を与えていることを明らかにした.これらの要因の影響を考慮して改善を進めることで,企業は効率的にDXを推進できると期待する.


ヒューマンモデルによる統合的コミュニケーション構造整理の提案
- ヒューマンモデルによるプロジェクトコミュニケーション構造可視化の提案 -

原口 直規


2017年に報告したヒューマンモデルと呼ぶコミュニケーションモデルを拡張した.工学的に考えると力学モデルとなり、弟子を入れた立体モデルとなる.また,それを構成する各タイプが協調作業を繰り返すことで協調作業そのものを最も得意とする人格が生まれ,正六面体となるモデルが仮説としてできた.自分のプロジェクト経験とは合致するので,過去の類似例を求めた所,非常に多くの例があることがわかった.政治家や統治者の観点,宗教家の観点,精神科医の観点などから纏められた過去の整理結果は非常に実用的な考え方を含んでいる.これらに科学の発展による工学的視点,ヒューマンモデルのような可視化技法を追加することで“心の科学”として統合的により深く解釈できる可能性がある.その研究の端緒に立ったと思われるので今回はそのオーバビューを提示したい.


日本企業のグローバルプロジェクトにおける効率的なコミュニケーションマネジメント

山吉 俊郎


複数の国のメンバーが参加するグローバルプロジェクトでは,プロジェクト内の共通言語を英語に統一することが望ましい.しかし,日本企業の海外プロジェクトのように,日本が主導するプロジェクトでは,英語をビジネスレベルで使えるメンバーだけで体制を組めることはほとんどない.現実的には,日本語で意思決定が行われ,英語に翻訳されて,海外メンバーに伝達される.単一言語で進められるプロジェクトと比較して,コミュニケーションにノイズが混入する可能性が高い.ノイズを減らすためには,翻訳しやすい日本語でドキュメントを記述するように,プロジェクトでルール化することが効果的である.


タックマンモデルによるチームリビルディングの評価と考察
- 新リーダへの動機付け -

水島 圭


昨今のパブリッククラウドを中心とした技術革新や顧客の内製化が拡大する中で,顧客が当社に期待することや依頼内容に変化が出始めていた.大規模案件対応だけではなく,内製化対応中の顧客からの個別対応依頼が増えていた.個別対応依頼は,大規模案件と比べると規模も小さく,スケジュールも短い小/中規模案件となる.そのため,当社の顧客依頼に応えるためには,小/中規模案件を柔軟に対応できるチームへの組織変更が必要である.本稿では,小/中規模案件に特化したチームへの再編(チームリビルディング)における実績と評価およびチームリーダの育成に関する考察を述べる.


気づきに着目したPM育成の一考察
- オンラインミーティングの活用 -

辻川 直輝,大鶴 英佑


プロジェクトマネージャ(PM)には,変化の著しい市場への適応,リスクへの柔軟な対応、新規プロジェクトでも大きな失敗をしないことが求められる.失敗プロジェクトの反省をみると,課題・問題は意識していたが影響を見誤った,兆候はあったがリスクを認識することが出来ず原価が悪化した等が挙げられている.早く気づくことが出来れば適切な対応も期待できるため,気づくことに優れたPMを育成することが必要である.そこで,幹部・同世代との交流を図り,第一人称で考え,気づく機会を創出し,知識や対応の引き出しを増やすことを目指してPM交流会を推進している.FY2016以来,PM交流会は、幹部講話,親睦会,ディスカッションの3つを軸として集合形式で行ってきた.ディスカッションを高揚させる導入,手書き・付箋紙の活用,PMへの期待の見える化が大切である.評価は,アンケートによる5段階評価,自由な意見から抽出した関連ワードの出現傾向から行っている.一方,テレワークの推進、COVID-19など昨今の状況を考慮すると,オンラインミーティングの採用は必須でありFY2021からディスカッションを中心にPM交流会を実施している.本稿は,オンラインミーティングへの移行,実施結果,課題を取りまとめて評価し今後の対応について考察している.


共創ビジネスにおける顧客満足度向上の実現に向けた取り組み

岡 恭佑


筆者が所属しているプロジェクトグループでは,従来大手通信会社の情報システム部門とシステム開発を行っていたが,「更なる利益の獲得」「ビジネス領域の拡大」を目指して営業部門と直接契約型のプロジェクトを立ち上げた.営業部門はビジネス機会の損失を重視していたことから,品質以上にスピード・コストの削減を望んでいた.スピード・コストの削減を実現する方法は多種あるが,その中でも比較的効果が高く,取り組みやすい「品質コストの削減」により顧客の要望を実現することとした.しかし,品質コストを無暗に削減することは既存システムの品質悪化を助長する原因になるため,いかに既存システムの品質に影響を与えず,品質コストを削減するかが問題である.本プロジェクトでは①案件特性を考慮した品質水準レベルの決定,②既存システムに影響を与えない品質コストの削減の2 点を問題解決のアプローチとして取り組みを行った.結果として「コスト削減」「開発スピードの向上」を実現し,顧客満足度を向上することができた.本論文では高い品質が求められるシステムにて品質を確保しつつ品質コストを削減する手法とその評価について述べる.


情報システムの本番作業の品質向上活動の一事例

今村 公嗣,中島 雄作


規模が急拡大した組織では,それまでの組織統制のやり方ではひずみが生じ,通用しなくなることがしばしばある.当担当でもプロジェクトが急拡大したことによりそれまで整備してきたルールが形骸化し,そのルール重要性が無視されることが常態化してしまい,重大作業ミスに繋がった.本稿では,「急拡大によりどのように組織統制がほころび,重大本番作業ミスに繋がっていったのか.それをどのような工夫で立て直したのか.」を述べる.


システム開発プロジェクトにおける統合変更管理実施の課題

花嶋 滋雨


激しく変化するビジネス環境において情報システムの果たす役割は今までになく大きなものとなっている.情報システムの開発プロジェクトにおいて,当初想定していなかった要件や急激に変化するビジネス環境へ対応するため,プロジェクト途中で成果物の仕様変更をすべき状況が発生する.プロジェクトが目指す成果物の納期や割当てられている予算等への影響を最小限にしつつ,仕様変更の目的を達成するための手法である統合変更管理の重要性と,その知識を実際のプロジェクトにて適用した事例とその際に発生した課題及びその対応案を紹介する.


入札案件における顧客価値向上を見据えた要件定義

外舘 修一


顧客価値を向上させるためには,あるべき姿を見出して顧客と共有し,そこに向けて具体的なプランを立てていくバックキャスティング思考が効果的である.しかし,官公庁や自治体など公共系の入札案件では,既存システムリプレースのみを目的とした入札案件が多いのも事実である.このような入札案件は,顧客の成長を妨げる結果となる.本稿では, 受注後のベンダーの立場として要件定義フェーズにて顧客価値を向上していく手法を検討する.


国内向けソフトウェアリモート開発センターにおける新規参画社員定着のための取り組み

菊地 修一郎


著者は10年以上にわたり,主に首都圏向けにソフトウェアアプリケーションのリモート開発サービスを提供するセンターにて,新規に参画する社員の採用や教育を担当してきた.当センターでプロジェクトに新規に参画する社員のほとんどは,キャリア採用で入社する社員や,同じ企業グループに所属する海外の企業から出向してくる社員であった.それらの社員は着任後に企業や出身国の違いによる文化的な差異や本人と周りの期待のギャップに遭遇した.これらのギャップはプロジェクトでの生産性に影響を与える.筆者はこの状況を調査・分析し,新規参画する社員がプロジェクト参画早期から効率的に作業を行うことができる方法を模索した.当論文ではこの活動を通じて,新規参画する社員のプロジェクト参画時のパフォーマンスを改善した事例について紹介する.


大規模SIプロジェクトにおける第三者によるソフトウェア品質の「見える化」と品質保証の取り組み

鍋谷 祥子,中村 知久


PMOなど第三者としてプロジェクトに助言を行う立場においては、ともすれば、プロジェクトの現場から「評論家」との批判を受けることがある。特に、SQAなど第三者によるソフトウェア品質の評価では、設計書ページ数、レビュー工数、テスト項目数、バグ数などの品質データの集計と分析に基づいた客観的な助言を行う。しかし、データに基づく客観的な助言がプロジェクトの行動変容につながらない場合、プロダクト品質の向上に対しての影響力は皆無となってしまう。このような第三者による品質評価の在り方という課題に対して、ソフトウェアの開発規模が2MLを超える大規模SIプロジェクトでの事例を紹介する。プロジェクトマネージャをはじめとした現場担当者から「プロジェクトに寄り添っている」との評価を得た事例から、プロジェクトの行動変容を喚起した「現場に刺さる」第三者品質保証の取り組みとソフトウェア品質の「見える化」のポイントについて述べる。


アジャイル型開発初期参入時のスクラムチーム体制構築における対策と効果

高峰 慎平,海老原 聰,島村 久仁彦,古久保 貴則,吉村 友希


時代の変化に伴い,事前にニーズの変化を予測できない中,状況の変化で実装する機能の優先順位が変わるため,それに対応することが難しい.このような状況に対応できるよう,アジャイル開発にて短納期でシステムを構築したいという要望が多い.しかし,実際アジャイル開発にてスクラムチーム体制を構築する際,アジャイル知識を持ち、全工程のスキルを持ったメンバーのみで構築できることは,ほとんどない.アジャイル開発自体が初めてで,プロダクトオーナー,スクラムマスター,開発チーム各ロールの役割を理解していないメンバー多い.設計,開発,試験等スキルが偏り,不足している開発者がいる.顧客と開発会社メンバー混合のチーム体制となる.このようなスクラムチーム体制となって開発を行う際の対策と効果について考察する.


リモート開発センターにおける品質向上のための取り組み

新谷 のどか


システム開発プロジェクトを成功裏に収めるために,品質管理は不可欠である.筆者は現在リモート開発センターの品質管理チームに在籍し,プロジェクト品質管理業務を担当している.当該センターが参画するプロジェクトのサービス品質を確保し,センターとしての価値を高めるために,独自の品質保証プログラムを制定し,ある一定の適用基準を設け,適用基準に該当するプロジェクトを対象に品質保証活動を行っている.これは,プロジェクトメンバー外である品質管理チームによるプロジェクト計画や成果物の点検を実施し,リスクや課題などの品質に影響を与える要因を明らかにするとともに,改善案を関係者に報告し,品質を保証する活動である.効果を見つつ,適用プロジェクトの範囲を拡大していく予定である.この品質保証活動内容を紹介するとともに,活動実績からみえる効果と課題について考察する.


品質マネジメントプロセス実践の組織的取り組み(Part 2)

上原 孝男,伊藤 理恵,荒木 泰至,安河内 武,島村 智


システム開発プロジェクトの推進において,上流工程において品質を作り込むことがとても重要である.本課題解決のために,品質計画・品質分析・品質対策・見解・事例活用といった一連の品質マネジメントプロセスの組織実践の取り組みを既に開始している.これらの取り組みにあたり,昨年度は過去のプロジェクトの事例を踏まえた品質計画書雛形等の整備展開と,プロジェクトへの実践・活用について報告した.今回は,昨年対応中であった「品質分析・品質対策の実践」について,NECの品質会計の分析技法を踏まえて,プロジェクト管理ツールの活用による分析データの収集と,プロジェクト遂行時点で必要な品質分析観点を品質分析支援ツールへ整備し,プロジェクトで活用する取り組みについて実践しており,これらの取り組みを紹介する.


フィーバーチャートを活用した産業機械の進捗管理手法に関する研究

弘中 諒,井筒 理人,池田 英生


当社機械事業部門では,高砂製作所において,様々な産業機械を一品生産している.製作所内の加工工場にて加工する加工品,外部の購入品と合わせて組立工場で最終製品を組み立てている.納期遵守のためには,組立工程の開始予定日に必要な部品が揃っていることが重要である.製品に必要な組立部品は多種類で多数あり,製造LTが異なる点,複数の受注オーダ向けの部品を同時期に製造しなければならない点から,結果的に納期の優先度付けが困難となっている.私たちはプロジェクト管理手法の1つであるフィーバーチャートによる進捗可視化方法と納期の優先度付け方法を開発した.本システムは3つの特徴がある.まず生産管理システム,小日程計画システム,調達EDIのデータと,人手で取得・生成したデータをもとにして,部品の進捗を可視化できる.次に部品・工程毎に持つ情報をもとにユーザーが必要な部品をフィルタリングして,フィーバーチャートに進捗を描画できる.最後に各部品複数の納期を設定することができ,優先度が高い納期をもとに進捗を可視化できる.2020年本システムの試行を開始して,新業務プロセスの有効性を確認した.


ボトルネック解明がIT運用業務のリードタイムを劇的に短縮させた事例と考察

石井 太一,高橋 遼平


大規模なITインフラ基盤を持つ企業では,日々大量の設定追加/変更作業が発生している.それらインフラ設定作業は,システム開発におけるボトルネックになりがちであるため,企業はIaC(Infrastracture as Code)や自動化等によって設定変更作業の高速化を図る傾向がある.しかしながら,IaCや自動化は対象システム,運用者のスキルセットとの相性へ非常に依存しており,導入したからといって必ずしもスループットが向上するとは限らない.また,そのために導入した仕組みを維持し続けることにも相応のコストが継続的に発生し,更なる改善を行う際に足かせになることもあり得る.本稿では,大幅な業務変更や自動化によることなく,業務上のボトルネックのメカニズムを明確にしながらプロセス改善をしたことによって,品質・コストを維持したまま従来の1/5のリードタイムで大量の設定追加/変更作業を実現できた事例を報告する.報告の中では,制約理論(TOC:Theory of Constraints:)における「集中の5ステップ」を参考とした改善活動の進め方について具体的に考察をする.


スループットのモニタリングに基づいたサービスデスク改善活動

吉田 昇平


IT運用のひとつであるサービスデスク(SD)業務の価値として,利用者からの依頼を高いスループットで捌いていくことは、重要な価値の1つである.SDには,より高いスループットの実現に向けた改善活動を行っていくことが常に求められているが,日々の業務と並行してスループットの改善活動を行うことによって改善活動自体がスループットの低下を引き起こすリスクをはらんでいる.本論文では,当社のSD業務を対象に,日々の業務のスループット低下を起こさずに改善することに成功したプロジェクトを事例として,オペレーションの変更がスループットにどのような影響を及ぼすのか、スループットのモニタリング結果をどのように活用したのかを報告する.報告の中では、スループットの評価指標の策定、オペレーション変更のスループットへの影響、スループットのモニタリングに基づいた改善サイクルについて述べる.また,今回は制約理論(TOC:Theory of Constraints)の考え方も取り入れている.今回の事例を参考にSD業務をはじめとする,様々なIT運用業務の改善につながることを期待する.


クラウド時代のグローバル体制におけるプロジェクト推進やチームマネジメントの事例紹介

李 静嫻


今後、日本のIT業界では国境を越え、開発の一体化が主流のトレンドになる可能性が高いと考えている。経済統合、経済一体化というトレンドの下に、ITの一体化も急速に進んでいる。特に、近年はデジタル技術を利用して、より効率的な業務を実現するDXなどの概念は注目されている。ただし、日本IT業界の人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高いと指摘されている。そこで、他の業界と異なるIT業界の特徴の一つとして、時間と場所に縛られずに働くことができる点から、現状、日本のIT業界に不足している人材は、グローバルに活躍できるマネジメント人材ではないか、と思案していた。本稿では,グローバル体制で開発を進める中での心得を紹介し、従来の日本国内開発との異なる点から、プロジェクト推進やチームマネジメントを行う上での工夫したポイントについて記述する。


PBL(探求学習)とプロジェクトマネジメントの関連性

北畑 紀和


PBL(Project Based Learning)は探求学習として近年高等学校で盛んに実施されている.筆者は,ある高等学校の1年生全員にプロジェクトマネジメント入門講座の講義を実施したことが縁で2021年度の1年間のPBL成果発表会をオンライン会議システムにて参加した.事前に3~5分程度にまとめられた動画とポスター1枚にまとめられた資料を参照したうえで,1,2年生全員,141名58チームの発表をオンラインで視聴した.発表と資料からPBLとプロジェクトマネジメントの関連性を分析し,今後のPBL学習の参考となることは何かを考察した.


プロジェクト主導の持続的なプロセス改善を支援する伴走型OJTの実践

熊川 一平,龍 真子


ソフトウェア開発の手法やツールの進化は目覚ましく,続々と新たな手法の研究やツールの開発が進んでいる.競争力のある企業はこうした新しい手法やツールの適用を進め,プロジェクトを成功に導いている.一方,多くのプロジェクトは日々の業務に忙殺され,新たな技術の導入によるプロセス改善に挑むことができていない.そこで我々は,プロジェクトが主体的かつ持続的にプロセス改善が進められるようにするための,伴走型研修を開発し,組織内の多くのプロジェクトに導入した.ここでは,導入した研修の概要とその効果,並びに取り組みを進めることで得られた知見を報告する.


BPOサービス開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの留意点

山下 浩徳


近年では働き方改革やDX推進に取り組む企業が増加し、業務の外注化機運も高まりBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場規模が拡大している。BPO市場へ参加するには情報システム開発だけでなく業務プロセスを含めたサービス開発が必要である。サービス開発では、開発ベンダーが要件を決定し、情報システム稼働後の業務利用も開発ベンダーが受け持つ、という点が受託開発とは異なる。またサービス事業では、業務利用における効率化が事業収支に直接影響するという特徴がある。本稿では、筆者が担当したBPOサービス更改プロジェクトを通じて、BPOサービス開発プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの留意点を説明する。


チームビルディングにおけるコミュニケーション再考

森本 千佳子,南 圭介


プロジェクトマネジメントにおいてコミュニケーションが重要であることは自明である。自明ではあるが、古今東西、トラブルプロジェクトの原因の多くはコミュニケーションミスに起因しているし、コミュニケーションに悩んでいる人は依然として多い。プロジェクトマネージャとメンバー、プロジェクトステークホルダーなど様々な人間関係が存在するプロジェクトにおいて、「コミュニケーション」は一言で片づけられない要素を含んでいる。本稿では、改めて、コミュニケーション構造を確認し、プロジェクトマネージャがどのように振る舞い、どのようにコミュニケーションするべきかについて論じる。また、コミュニケーションの要素の一つである「伝える」について、演劇的手法を紹介し、ワークショップでの実践例とその成果を紹介する。


オフショア開発からニアショア開発への体制シフトについての考察

清水 美鈴


コスト削減やリソース確保を目的として,多くの大型のアプリケーション開発プロジェクトでは,オフショア開発が採用されてきた.デジタルを活用することで地域の活性化を支援するため,オフショアからニアショアへ体制をシフトする取り組みが行われている.本論文は,筆者の参画する開発プロジェクトでの経験を元に,オフショアからニアショアへの体制シフト時の検討事項,アクション事例,課題や問題点について考察する.


組織構造におけるプロジェクトの集合体の売上予測

清水 裕斗,前田 紗矢香


個々のプロジェクトマネジメントを強化し、成功に導くことは重要だが企業として会社或いは事業部単位でプロジェクト集合体の売上や利益などの予測をし、早期に対応することも企業にとっては重要である。本研究では、「組織ごとに年度で売上パターンが存在すること」を仮説とし、過去3年分(約27万件)のデータを用いて検証した。その結果、組織の下位組織ごとに売上のパターンがあり、年度を跨いでもそのパターンは変わらないことが検証できた。そこで仮説に基づき、パターンごとにプロジェクトの集合体としての売上予測モデルを構築し、さらに四分位数を用いることで予測値を範囲で示せるようにした。モデルの予測値と実績値を比較して精度を検証した結果、モデルの有効性を確認できた。


デジタル社会の実現に向けたデータ利活用案件における要件調整プロセスの提案

後藤 大介


大規模プロジェクトに関する政府調達は,要件定義と設計・開発の工程が別の事業者による対応となる.ITベンダーが担当することが多い設計・開発工程では,不十分な要件定義がインプットとなることも多い.筆者が担当した行政間のデータ連携システムを開発するプロジェクトも該当するものだった.本プロジェクトは,「要件の起点がお客さまとは別の組織である」,「ステークホルダーが非常に多い」という2つの特性がある.これらの特性から要件定義が不十分なまま対応を進めるには,基本設計工程以降において大きなリスクがあった.そのため,基本設計工程前に要件定義を補完するプロセスを設け,リスクの解消に向けた3つの施策を実施した.結果,QCD目標の達成に加えて,行政全体の要件を満たしたシステムを構築したことで,お客さまからも高い評価をいただいた.本項が,同様の特性を持つプロジェクト,要件定義が不十分であるプロジェクトの一助となれば幸いである.


リモートワークを適用したITプロジェクトマネジメント事例

若松 禎之


リモートワークの特性を踏まえたITプロジェクトマネージメントを適切に遂行するには,多様な事例の共有と実際のプロジェクトでの試行錯誤が必要不可欠であるが,従来型の開発拠点に要員を集約するプロジェクトと比較すると未だ導入事例は少ない.今回紹介する事例は,開発プロセス,システム構成等に特性を持つプロジェクトである.その特性を踏まえ従来のPJ事例のノウハウを適用しようと試みたが,リモートワーク特有の条件のため適用が困難であったり,適用できたとしても期待する効果が得られない局面が多かった.本稿では事例のPJで得られたリモートワーク適用時のITプロジェクトマネジメントにおける知見について共有を行うとともに,今後のプロジェクトへの適用の可能性について考察を行う.


初学者のソフトウェア開発PBL実践における課題と解決案

小星 春緋,小笠原 秀人


PMBOKを用いたソフトウェア開発PBL(Project Based Learning)の特徴は,プロジェクトをマネジメントするための一般的な知識を用いてプロジェクト進めることである.しかし経験が浅い初学者がPBLを実施する際には,チームビルディングに不慣れ,実施すべき項目の理解不足,成果物の欠陥による品質低下など,さまざまな問題がある.今回、2022年4月~7月の13週間に渡りPBLを実践した.このPBLでは,4名のメンバでチームを構成し,「千葉工業大学施設混雑状況マップ」というシステムを開発した.本稿では,その実践内容を具体的に紹介し,初学者が陥りやすい問題点を挙げ,その解決方法を提案する.


プログラムマネジメントにおけるライフサイクル改革についての考察

高橋 新一


システム開発への投資がある程度完了し,十分成熟した顧客システムにおいては,プログラムマネジメントにおける長期開発・保守契約において,様々な課題が発生する.システムのライフサイクルを導入期・成長期・成熟期・衰退期としてとらえた場合,成熟期において課題の整理を行い,衰退期に移行しないよう,ライフサイクル特有の成熟期での課題を整理し,新たなライフサイクルに以降するための改革が必要と考える.そこで本論文では,プログラムマネジメントにおけるライフサイクル課題に着目し,新しいライフサイクルに移行するための考慮事項とその解決策をライフサイクル改革として考察を行う.


顧客向け進捗報告と課題管理業務による若手のプロジェクトマネジメント力向上

赤澤 鼓


筆者は,初任配属から4年間,経営データ活用基盤の保守業務を遂行している.現在は,領域リーダとして,課題管理・要員管理・小中規模案件の見積もり~リリースまでの一連のプロジェクトマネジメントを行っている.自身の経験を振り返ると,2年次より保守チームの課題管理や顧客向け進捗報告を行っていたことが,プロジェクトマネジメント力向上につながったと考える.本論では,課題管理や顧客向け進捗報告で意識したこと,またそれによって獲得できたスキルについて述べる.


EVMのPV見積もり精度向上に関する一考察

山本 翔太,清水 颯太,瀬戸口 大空,小笠原 秀人


筆者らは,大学の講義にて,プロジェクトマネジメントに関する知識を活用し実践する,プロジェクトマネジメント演習(以下,PM演習)と呼ばれるPBL(Project Based Learning)に取り組み,ソフトウェア開発プロジェクトの計画を行った.その際,Planed Value(以下,PV)の設定に時間を要し,またPVの精度もあまり高くなかったために,Earned Value(以下,EV)との差異が大きくなり,プロジェクトに遅延を発生させてしまう状況が多発した.本論文では,PVの見積もり精度の向上に関する,筆者らが提案した見積もり方法の提案を行う.


パッケージ導入時の設定変更作業の取り組み

廣川 陽祐


パッケージ導入時にお客様が事前にパッケージの仕様や制約の全てを理解した上で要件定義時に実現方式まで合意することは難しい.本論文ではマルチリリース型Waterfall開発手法でのパッケージ導入において,スケジュールベースラインとコストベースラインが優先される前提のプロジェクトで要件定義からパッケージの実画面を使用してお客様要望を反映する際のスコープベースラインコントロールの手法を提案する.この手法では2種類の変更管理プロセスを用いて,変更要望概要により当初予定の変更反映作業工数内で実施可否判断を行うことで,適用する変更管理プロセスを決めスコープベースラインコントロールを行うものである.この手法によりシングルリリース型Waterfall開発手法を比較して,パッケージ適用プロジェクトはお客様自身が業務をパッケージに合わせていくという特徴があることからお客様自身がパッケージの仕様や制約を踏まえた変更要望を効率的に反映できる.


WFHにおける「5 Generations in the workplace」の考察

阿部 秀城


新型コロナウィルスの感染拡大に伴い「WFH(Work From Home)」を採用する企業が増え,現在では「ニューノーマル」を見据えた働き方の選択肢の1つとして考えられるようになってきた.これまで1つの場所にメンバーが集まって仕事をしていた時代からバーチャルな環境で仕事をする機会が多くなり,これまでとは違ったマネージメント上の課題が見え始めている.ダイバーシティの考え方の1つに職場にいる5つの世代のそれぞれの特性を捉えてマネージメントするという考え方がある(「5 Generations in the workplace」).これは職場が同じであることを前提とした考え方であるため,バーチャルな職場環境においてどのように各世代をマネージメントするべきかを考察する.


リモートワークにおけるプロジェクトチームの育成

佐藤 雅子,福原 優志


Covid-19の流行と共にリモートワークの推進が様々な企業で行われ一般化してきており,今後も働き方の選択肢としてリモートワークが定着していくことが考えられる.リモートワークは通勤時間の短縮などメリットもあるが,一方でプロジェクトチーム育成の観点からすると,チームメンバーのモチベーションの維持,スキルの育成、コンピテンシーの改善,チームの結束力の強化などをどのように行うのかということが新たな課題になっているプロジェクトも多いと捉えている.本稿では2021年と2022年のプロジェクト活動の状況を比較すると共に筆者が実際のプロジェクトでチームビルディングのために行ったスクラムでしばしば用いられるゲームの紹介やその効果についての考察を行う.


テレワークを利用したプロジェクトにおけるコミュニケーション課題の改善事例
- ツールや環境ではなく,最後は「人」であること -

宮崎 琢磨


本稿では,筆者が担当したテレワークを利用したプロジェクトにおけるコミュニケーション課題の改善事例について述べる.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が2022年に入ってもまだまだ減少傾向という状況になく,我々の日常生活にも大きな影響を与えている.我々が日々実施しているビジネスの形態においても,流行前の形態とは大きく異なった状況となっており,新たな形態としてテレワークを利用したプロジェクト運営が定着してきた.しかしこのテレワークの利用による弊害として,コミュニケーションをとること自体の難しさ,コミュニケーションが正しくとれているかの不安などのコミュニケーションの課題が発生してきた.本稿では,今後も継続していくことが予想されるテレワーク利用の中で,筆者が担当したプロジェクトにおいて,コミュニケーションへの課題に対し,ツールや環境だけではなく,「人」として,コミュニケーションへの意識改革をどのようにして実施したのか,その意識改革からどういう結果が生まれたのかについて考察する.


重大障害発生時における点検方法と進捗管理の仕組みを改善し対応期間の短縮

渡邉 勝也,山家 俊輝


2020年に当社お客様にてストレージ装置(OEM製品)の設定不具合により,冗長機能が正常に動作せず,セカンダリ機に切り替わらないトラブルが発生.当日の業務開始に間に合わず大きな問題となった.原因は,OEMベンダが2019年に実施した冗長機能設定の仕様変更に起因と判明.他のお客様でも同様の発生リスクがあったため,EC(Engineering Change)により早急に設定値を確認し適切な値へ変更する必要があった.当EC対象がこれまでにない膨大な数であったため,自部門だけでなく,他部門からも対応人員を招集し短期間に育成並びにスキルの平準化を行う必要があった.さらに,EC開始以降,タイムリーな情報共有の仕組みも構築し,営業/SE/サポート部門とEC適用状況の一元管理を行った.本論文は,問題発生後にお客様業務の早期復旧と,他のお客様へのリスク拡大をいかに最小限に抑えるかについてまとめたものである.


他社構築システムにおけるレガシーマイグレーション対応事例

西脇 英幾


デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進が求められる中,新たなビジネス価値を創出するための攻めの分野と,基幹業務を確実に遂行する守りの分野を区別し,それぞれを強化することが経営に直結する課題となっている.A社において,ミドルウェアやブラウザのサポート期間の観点から期限内にシステム移行させなければならないシステムが複数存在しており,それらを計画的に対応していくことが求められている.本稿では,守りの領域のレガシーマイグレーションを高品質,短納期で効率的に実施するために行った施策,および実際に起こった問題とその対策について記述する.


テレワーク時代におけるリモート・マネジメントの在り方

橋口 宏樹


コロナ禍により世界が一変し,これまで当たり前に行っていた行動・交流(旅行や外食・懇親会等)が一気に制限された.ビジネス環境も大きく変化し,テレワークが急速に拡がり定着している.そしてメンバーが拠点分散したリモート環境下でのプロジェクト運営では,これまでには無い新しい課題が噴出している.この時代の変わり目においてプロジェクトで成果を出すには,コミュニケーション手段を変えるだけでなく,マネジメントのやり方も変える必要があると考えた.本稿では,テレワーク時代の心理的な変化を把握した上で,不確実性の高い環境下でパフォーマンスを最大限発揮するための効果的なリモート・マネジメントの在り方について考察する.


プロジェクトマネジメントを認知する動機付けの考察

櫻澤 智志


プロジェクトマネジメントは,プロジェクト活動のみならず日常生活やグループ活動にも適応可能なスキルであることは言うまでもない.その一方,「プロジェクトマネジメント」を学問,知識として認知せず,無意識のうちにプロジェクトマネジメントを活用し,行動しているケースが多く見受けられる.意識的にプロジェクトマネジメントを認知し,知識と経験の両輪でマネジメント能力を向上していくためには,この「意識的に認知する」ための「きっかけ」をどう掴むか,ひいてはどう与えるか,がポイントになる.筆者が長年続けている大学でのプロジェクトマネジメント教育の事例や,筆者自身が自社で行っているOJTや社員面談から見えてきた傾向や課題を分析し,効果的な「動機付け」について考察する.


プロジェクトの成功に向けた仕組み整備と取り組みのポイント

平方 泰光,二科 英弘,上原 光徳,佐野 祥一朗


NTTデータでは,これまでに不採算プロジェクトの発生により,お客様へご迷惑をおかけするとともに経営に大きな影響を及ぼすことがあった.当社が抱えていた問題点の分析から,不採算プロジェクト抑止の仕組み整備や強化対策を進めてきており,近年はプロジェクト成功確率の向上につながってきている.ここでは,一連の仕組み整備や取り組みとともに,それらの立ち上げから遂行,見直し等を通じて得たポイントや所感を紹介したい.なお,プロジェクトの成功に関してはQCD確保が代表的だが,品質やスケジュールの観点もコストに影響することから,ここではコスト観点を中心に見据えている.


大規模・高難度プロジェクトにおける上流工程マネジメントに関する考察

佐藤 陽介


近年、あらゆるビジネスシーンにおいてIT技術の活用は不可欠であり、各企業におけるビジネス戦略には必ずIT戦略が伴う。筆者の関わる中間流通・小売業においても例外ではなく、元々抱えている消費者ニーズの多様化、物流費高騰、労働力不足等の社会課題に加え、COVID-19によるEC需要の高まりなど急激な市場環境の変化に追随すべく、ビジネスモデルの見直しとIT投資の動きが活発化している。この動向に伴い、ITプロジェクト自体もビジネスの根幹に関わる案件については、新技術・サービス活用、既存システムとの連携と影響考慮、マルチベンダ化、プロジェクト期間中の市場環境変化リスク等、大規模化・複雑化・高難度化の傾向にある。このような特性のプロジェクトについては、特に上流工程におけるマネジメントが成否を大きく左右する。本稿では筆者が担当したプロジェクトをモデルケースとしてプロジェクトマネージャが実践すべきポイントを考察する。


ニューロダイバーシティ(神経多様性)のメンバーとのコミュニケーションに関する考察

五領 舞衣


日本では障害者人口が年々増加傾向にある.特に昨今では,2006年には7000人だった発達障害の児童数が2019年には7万人を超え,日本人の10人に1人には発達障害の傾向があるという指摘をする専門家もおり,近い将来,発達障害のある人と働くことが当たり前になると予想される.しかし,発達障害のある人はコミュニケーションが苦手であることが多く,PMはコミュニケーション方法を相手の特性に合わせていく必要がある.そのような脳や神経,それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて尊重する,「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という概念がある.ニューロダイバースな人材は企業に多種多様な恩恵を生み,特にデジタル分野と相性が良いと言われている.本稿では,筆者が経験した障害者のインターン受け入れ,およびメンタリングを通じ,どのようにニューロダイバースな人々とコミュニケーションをしていくべきかを考察する.


複数の検知手段を組み合わせ実施するプロジェクトリスク点検活動

海堀 修


不採算プロジェクトの発生を抑止するためには,プロジェクトリスクを早期に検知し,適切なリスク対策の実行やリスク回避を行うことがが重要である.本稿では,複数のプロジェクトリスク検知手段を組み合わせてリスク懸念のあるプロジェクトを抽出し,効率的にプロジェクトリスクの点検を行う取り組みについて紹介する.


コロナ禍及びDX時代における保守運用チームのコミュニケーションに関する一考察

梅本 里史 ,天野 歩未,三橋 彰浩,樽井 孝紀,中島 雄作


IT保守運用部門は,様々な制約からリモートワークが進んでいないケースが見られ,Withコロナにおける多くの課題を抱えている.最近,WithコロナやDXという題目の講演,文献は多数あるが,経営者向け,ビジネス企画,営業向け,自動化のものが目立つ.IT-SM部門のチームリーダ向けのものはあまり見かけない.そこで筆者らは,「コロナ禍及びDX時代における保守運用チームのコミュニケーションに関する一考察」について考えた.


保守プロジェクトにおける品質向上施策の最適化について

鈴木 啓介


近年,ITシステムは社会インフラとなり日常生活に不可欠となっている.それに伴い,お客様からのアプリケーション開発プロジェクトへの品質要求が増大している.一方、金融系基幹システムの保守開発をウォーターフォール型で実施しているプロジェクトにおいて,システムトラブルへの再発防止策の積み重ねによる品質向上施策の増加がコスト増の一因となっている.お客様は品質を維持しながらコスト削減要望が強い.この相反する要望を実現する為に重要な事はお客様と合意の上で,品質を保ちつつ,これまで積み上げた品質向上施策の品質効果を評価し,最適化する事でコストを削減する.本稿では,実際のプロジェクトの実例をもとに考察を行う.


m-SHELモデルを用いたUXに基づく誤操作対策の提案

關口 拓未,谷本 茂明


2018年に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を策定したことに伴い,企業はデジタル技術を活用し,ビジネスの利便性向上やイノベーション創出に関する取り組みを加速させている.その反面,個人情報漏洩等のセキュリティインシデントも数多く発生しており大きな問題となっている.本論文では,個人情報漏洩,特にメール誤送信を対象に,ユーザーエクスペリエンス(UX)に基づく誤操作対策を新たに提案する.最初に,質問紙調査によるメール誤送信に対する実態調査を行い,次に,この結果を基にヒューマンエラーの分析モデルであるm-SHELモデルを用いてリスク要因を特定した.さらに,リスク要因に対するセキュリティ対策を提案し,定性的な評価により有効性を明らかにした.以上より,メール誤送信など個人情報漏洩低減の一助とした.


プロジェクト内SEPGの配置推進の取り組み

泉 友弘,三角 英治,辛島 陽子,佐藤 慎一


NTTデータでは,プロジェクトの品質保証を行うために,ソフトウェアプロセス技術や最新の開発技法を活用して,品質保証ストーリー策定,プロセス定義・改善,品質分析・評価,プロジェクトの状況把握などを行い,プロジェクトの円滑な遂行を支援する技術者として“プロジェクト内SEPG(Software Engineering Process Group)”を定義し,展開を進めてきた.また,プロジェクト内SEPGを効果的にプロジェクトに配置するために,現場の意識醸成を図るとともに,組織としてのルール等の整備,SEPG配置状況の把握や支援,育成などを行ってきた.それらについて現時点での総括を行い,今後の課題を考察する.


エンタープライズアジャイルにおけるフレームワーク採用事例の特徴

吉田 知加


近年のソフトウェア開発では,そこに含まれる不確定要素や戦略的製品・サービス開発のために,これまで小規模開発に適用してきたアジャイルを大規模開発にも適用する動きが増えている.そこでは,Scaled Agile Framework (SAFe), Disciplined Agile (DA) などのスケーリングアジャイルを拡張するためのフレームワークが適用される事例が多くみられている.しかし,日本ではこれらのフレームワークがどのように採用されているかの事例文献は少ない.この論文では,日本企業で採用されている主な大規模アジャイルフレームワークの特徴を文献から確認し,日本企業でエンタープライズアジャイルを推進する日本企業のリーダー層8名に対しインタビュー調査を実施した.その結果を,大規模アジャイルフレームワークを採用した事例と,非採用事例に区分し,計量テキスト分析することで,それぞれのアジャイル開発における特徴を明確にする.


プロジェクト・リスクの傾向と効果的なリスク・マネジメント

宮田 政樹,三品 喜典


当社は,プロジェクト開始前に,顧客関連リスク,体制リスク,技術的なリスク,費用見積リスク等の事前に準備された複数の観点に従ってリスクを洗い出している.この時,各リスクに対し予防策を立てると共に,顕在化した際の対応策(費用を含む.)を明確にする.しかしながら,組織において,リスクに係るデータの蓄積及び傾向分析が行えていないことから,その妥当性判断はプロジェクト・マネージャやプロジェクト審査者の経験や知見に依存する.本稿では,過去3年の官公庁向けプロジェクトについて,「リスク観点別の計画値と実績値(顕在化)の傾向」と「プロジェクト・リスクに対する予防策とリスク顕在化の関係性」を紹介すると共に,現時点で効果が高いリスク・マネジメントを提案した.


品質管理における思考プロセスの形式知化の取り組み

高橋 結芽


システム障害が社会生活や企業活動に与える影響は大きい.システム開発プロジェクトにおいて,本番稼働前に欠陥を取り除くためには,品質管理が重要であることは既知の事実である.一方で,システムに求められる要求レベルは高度化しており,システム開発プロジェクトにおける品質管理は一層難しくなってきている.この状況に対応していくためには,品質管理の手法を一層確立させていく必要があると考える.特に,品質分析の元情報となる「品質データの精度」の向上と,品質活動の経緯を把握するための「品質分析プロセスの記録」の2点は即時効果があると考える.品質データそのものに問題がある場合,正しく状況を把握することができない.また,品質分析プロセスに不備があった場合は,後戻り作業をまねく場合がある.本稿では,「品質データの精度」と「品質分析プロセスの記録」の二つに関する品質管理の手法を紹介する.


住民情報パッケージビジネスにおける複数プロジェクトマネジメントのツールチェーン活用事例

黒田 一光


我々が手掛けている地方自治体向け住民情報システムは,法改正対応等で同時期に複数ユーザーで同じ作業が発生する.また,いわゆるマイナンバーを含む特定個人情報を扱うことから外部からのリモート接続が許可されておらず,客先現地での対応が必須である.このような状況の中,同じ作業を個々の担当者が実施しているが,情報共有が効率的に行えず一定の品質を担保できないという課題を抱えていた.特に,特定のユーザーで発生した問題,障害に対する他ユーザーの状況整理や,情報共有方法について改善が求められていた.本論文では,これらの課題に対して,プロジェクト管理ソフトウェア「Redmine」,コラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams」を活用したプロジェクト管理手法の改善策とその効果に関する考察を行った.


条件付きアソシエーション分析を用いた顧客属性別による購買ルールの抽出

河西 裕次郎,武田 善行


ビッグデータを用いたデータマイニングでは, 顧客の詳細なニーズを推定するために, 顧客関係管理と呼ばれるCRMが盛んに行われている.CRMにおいては, 主にRFM分析を用い, 顧客分類毎に適した施策を講じることで, 顧客満足度向上による収益増加を目的としている.加えて, アソシエーション分析を用いることで, 有用なルールを抽出し施策に適応がなされている.本研究では, 製品毎にアソシエーション分析を行うことで, 顧客の購買傾向について明らかにする.販売履歴データを対象に製品別に分析を行い, 製品別アソシエーションルールの抽出を行った.結果として, 抽出された製品別アソシエーションルールから詳細なニーズの推定が可能となった.


コンビニ等の夜勤労働者の有効活用法についての実例と提案

中山 翼


 コンビニ経営において、近年のコストの高騰や人件費の増加が利益の減少につながり、経営の圧迫のみならずお客様の満足度低下が懸念される。そこで、本来業者に依頼するような作業を夜勤の従業員が行うことで、コスト削減に取り組むと同時により良い環境をお客様に提供することが可能ではないかと考える。筆者は、夜間アルバイトにてコンビニの駐車場の白線を引く作業を計画から実行までをリスク、コストなどの面を考慮した上で実行した。本稿では、この経験とその成果を分析するとともに、その結果を基にコンビニ経営のコスト削減においての夜勤労働者の有効活用法について考察していく。


ピクミンで考えるプロジェクトマネジメント

高田 僚太


プロジェクトの成功にはプロジェクトマネジメントが重要である。プロジェクトマネジメントを活用すればプロジェクトを円滑に進め、成功する確率やプロジェクトの期待度が高まるからだ。しかし、プロジェクトマネジメントを学ぶにも独学では難しく、教わるための環境も多くはない。プロジェクトマネジメントを学ぶ環境として、私はゲームに着目した。本稿では、任天堂が発売したゲームソフト「ピクミン」を攻略する際にプロジェクトマネジメントを活用し、スケジュールやリスクの管理などのスキルがどれくらい重要なのか、ゲームでもプロジェクトマネジメントのスキル向上に役に立つことを考察する。


プロジェクトにおける計画段階からのリスク想定の取り組み

内野 善啓


プロジェクトにおいて,ステークホルダーの増加や,技術の高度化,多様化により,計画フェーズよりリスクを想定した成功に向けたフィジビリティの確保が不可欠である.しかし,どれだけリスクへの備えをとっていても,プロジェクト遂行中には新たな課題の発生やコスト損失の発生など,想定外のリスクが必ず起きる.これらのリスク想定をできるだけ計画段階から盛り込み,回避策を準備しておくことで,損失コストを抑制し、プロジェクトを円滑遂行することに取り組んでいる.本論文では,リスク想定における注意点やクリティカルパスのあぶりだしに注力するといったリスクヘッジ活動について説明する.


多国籍マルチベンダーのSaaSを活用するシステム開発のプロジェクト計画と管理

大野 彩


SaaSを活用するシステム開発プロジェクトで特に複数の海外ベンダーSaaSを活用する場合,それぞれのベンダーによってプロジェクト標準や進め方が異なり, SaaS仕様書やテスト環境の利用方法など, 取得したい情報のレベルやタイミングが揃わないリスクが高くなる.本論文では多国籍マルチベンダーのSaaSを活用するシステム開発プロジェクトにおける, 適切なプロジェクト計画・管理方法を定義しリスク発生を低減する手法を提案する.この手法では, 各ベンダーへの情報提供依頼の結果としてプロジェクトに必要な情報のばらつきが発生することを考慮し, リスク費用を積むと同時に必要な情報とタイミングをリスト化し情報収集計画を立てる.プロジェクト開始後にはベンダーのSaaS仕様や環境の早期把握を最優先しWorkshopを開催して理解を促進する.またプロジェクトを通してお客様間やプロジェクトの現場などで多層的なコミュニケーションを継続的に実施し, 都度発生する課題やリスクに対してタイムリーに手を打っていくことにより, リスクを極力低減しプロジェクトを成功に導く.


CMMIに基づくサービス提供プロセス改善に関する一考察
- SAFe導入組織への試行 -

中村 英恵,小林 浩,長田 武徳


CMMI®のプラクティスとSAFe®のナレッジには親和性がありお互いに補うことを確認した(中村,小林,長田2022).CMMIのモデルの一つであるCMMI-SVC(サービスのためのCMMI)にはサービス提供に関するプラクティスが存在するが,これはSAFeの構成の一つであるPortfolio SAFeの遂行能力を向上する可能性がある.本稿では,SAFeを実装しているプロジェクトに対するヒアリングを通じて,CMMIがサービスに関するプロセス改善にどのように寄与するかを示し,その有効性を考察する.


ベイジアンネットワークを用いた製品別上位顧客の購買傾向の分析

村松 康汰,武田 善行


ニューノーマル時代のマーケティングではデジタルトランスフォーメーションによるデータテクノロジを活用し, 購買行動の変化に迅速に対応する必要がある.特に顧客関係管理では生活様式の変化に柔軟に対応し, 顧客の詳細なニーズを正確に把握する事が必要とされている.顧客関係管理では一般的にRFM分析等の分析手法を用いる事で顧客分類に適したアプローチを行っている.本研究では顧客細分化を行う事でRFM分析の精度向上を図る為, 顧客クラスタ毎の購買傾向についてベイジアンネットワークを用い分析を行う.販売履歴データを対象にRFM分析の購買頻度と購買金額が上位の顧客にクラスタ分析を用い分類を行う.多くの顧客が分類されたクラスタを一般的な用途の顧客とし, 分析を行った.購買頻度と購買金額の高低で購買傾向に違いがある事を明らかにした.


プロジェクトライフサイクルの循環を見据えた管理プロセスの標準化

吉田 祥子,伊東 美咲


ソフトウェア開発作業の一般化に伴い市場の競争が激化する中,「精度の高い見積」及び「低コスト・高品質な開発が行えるプロジェクトマネジメント」が重要となっている.しかし筆者が所属する組織では,「過去プロジェクトの実績が収集できておらず見積根拠に乏しい」「プロジェクト管理プロセス及び粒度が統一されていない」といった課題が発生していた.そこで,筆者のプロジェクトにおいて「見積,プロジェクト計画・立上げ,プロジェクト遂行,振返り」のプロジェクトライフサイクルが循環する管理プロセスを策定し,かつプロセスを組織内で標準化することで属人化の排除に取り組んだ.本稿では,策定したプロジェクト管理プロセスの紹介と留意すべき点について共有する.


自動化ツールを活用した大量データ移行案件におけるプロジェクトマネジメントの考慮点

山廣 佑樹


近年,稼働している情報システムの老朽化等により新システムへと移行する案件において,短納期・低コスト・高品質を求める傾向が加速している.情報システムが大量のデータを保有している場合,新システムへのデータ移行期間が長期化し,人的コストが増加するケースが多くある.このような背景に対して著者がPM として担当した新システムへの移行案件において「データ移行期間の短縮」・「人的コストの削減」・「品質の向上」を狙いとして「Jenkins」を活用したツールでの自動移行環境を構築した.本稿では,狙いに対しての振り返りを整理し,期待通りの効果が出た部分と,プロジェクト計画時に考慮すべき注意点を論ずる.


ソフトウェア開発PBLのためのデザインレビューチェックリストの試作

板倉 宇寿,下田 篤


ソフトウェア開発PBLにおけるデザインレビューは,学習者にとって多くの気づきが得られる重要な活動である.しかし,軽微な指摘に多くの時間を費やしてしまい本質的な議論に時間が割けない問題が生じやすく,有効な観点を提示することが求められる.ただし,PBLにおける観点は,実務者の場合と異なり,品質を高めるための本質的な観点だけでなく,学習者に配慮するなどした異なる視点も加味することが求めらる.そこで,本研究は,PBLにおけるチェックリストとしての要件に遡り,望ましい要件からチェック項目を導き出す方法を提案した.外部設計書を対象とした検討を行い,1)ソフトウェア開発の要件,2)文書作成の要件,3)学習の要件を導き出し,20項目からなるチェックリストを試作した.実際のPBLに適用して有効性を評価した結果,デザインレビューの学習効率を高める効果が見込めることがわかった.


海外ベンダと協業する際の品質マネジメントにおける譲歩と堅持

木浪 正治


プロジェクトマネジメントに関し、海外ベンダは、慣習や思想など多くの点で日本とは異なっていることがある。考え方の異なるベンダと作業を進めていくと、品質担保の考え方について意見の対立が生じることがある。海外ベンダと協業する場合には、双方の「当たり前品質」を相互理解し、役割と責任範囲を明確にすることが重要である。本稿では、日豪のベンダが合同でひとつのシステムを構築する際に、留意すべき品質マネジメントの観点とその効果について考察する。


SIプロジェクトにおけるリスク顕在化防止に向けたリスクデータ分析の取り組み

中田 隆幸


プロジェクトには様々なリスクが存在し,それらのリスクを顕在化させないことは,プロジェクト成功の要因の一つである.プロジェクトの特徴の一つである独自性から,リスクはプロジェクト毎に多種多様であるが,同じ技術の使用,同じ業務内容,同じ顧客などの共通性がある場合,類似するリスクが存在する可能性がある.したがって,過去のプロジェクトのリスクから得られる知見は,新たに開始するプロジェクトにとって有用な情報になる.本稿では,プロジェクトに存在するリスクに着目し,過去のプロジェクトに存在した実際のリスクをデータ化して分析を実施した活動を紹介する.


生体認証を利用したシステムの構築におけるプロジェクトマネジメント

大田 駿介


以前から指紋や指静脈といった生体認証は犯罪捜査や高セキュリティエリアの入場管理などのシーンで使用されていた。近年の顔認証アルゴリズムの認証精度や処理性能の大幅な向上により、顔認証を利用したシステムが広く使われるようになってきている。本稿では、顔認証を利用したシステム構築の経験を元に、顔認証システム構築のプロジェクトマネジメント観点でのポイントを説明する。


プロジェクト振り返りによる成功確率向上に関する考察
- 第三者参画による振り返り効果の最大化 -

宮田 剛,荒木 辰也,石塚 仁子,今井 達朗


近年の開発プロジェクトは、技術やシステムの高度化により、その難易度が高まってきている。また、複数プロジェクトを担当しているプロマネも多い。このようにプロマネの負荷が高くなっている状況下においても、プロジェクトを成功させている一定数のプロマネが存在する。数多くのプロジェクトのPMOを経験してきた私たちは、こういった状況下では、プロジェクト単体に留まらない横断的な振り返りの実施が、複数プロジェクト間での設計思想や技術、成功事例及び失敗事例からのノウハウを継承し、プロジェクトの成功をより確実にすると考えている。これを実現する施策として、私たちが行ってきた第三者視点を加えたプロジェクト振り返りを考察する。


社内コンプライアンスに対する取り組みの一事例
- 内部統制組織の立ち上げから黎明期を脱するまで -

鳥山 美佐,川崎 誓子,岡 文男,中島 雄作


当社は設立から約20年を経過したが,基盤プラットフォームの開発・保守を手掛ける事業を核として急成長してきた.売上,利益に重きを置いてきたが,従業員数が1,000名に近づき,超えようとしている規模まで成長し,CSR (Corporate Social Responsibility)活動や,ESG経営により一層力を注いでいく経営方針となった.さらに,働きやすさとやりがいから始めるウェルビーイング経営を推進し,日本で一番,従業員とその家族が心身ともに健康かつ社会的にも満たされた幸福な状態となることを目指している.しかし,それらのベースとなる内部統制の仕組みが確立しておらず,社内コンプライアンスに対する浸透度が低い状態であった.そこで,筆者らは内部統制組織の立ち上げ,コンセプト作りをし,様々な法令順守の啓蒙活動を展開していった.本稿では,社内コンプライアンスに対する取り組みの一事例について述べる.


不確実性が高く複雑化したウォーターフォール開発へアジャイルメソドロジーを導入したハイブリッド型プロジェクトマネジメント手法の提案

七田 和典


近年,ビジネスに IT が不可欠なものとなり,企業は多種多様なシステムをビジネスに活用しており,DX化の動きも加速している.新規性・難易度の高い要件の実現や新技術・新製品への対応が求められるシステム開発プロジェクトが多く発生しているが,特に大手金融機関では大規模なシステム開発案件においてはウォーターフォール開発を採用されるケースが多く,プロジェクトの下流工程で新規性に起因する問題が顕在化し,プロジェクトの進捗に影響を与えるリスクが高い状況となっている.本稿では大手金融機関のプロジェクトの事例を交え,不確実性が高く複雑化したウォーターフォール開発へアジャイルメソドロジーを導入し,プロジェクトを成功に導いたハイブリッド型プロジェクトマネジメント手法を提案する.


優良顧客を対象とした印刷素材における購買傾向の可視化

内山 雄人,武田 善行


近年, ICTの発達により観測される購買履歴データは増大しており, こうしたデータを用いた科学的, 工学的な研究が広く行われている.その手法として, 購買履歴データを用いたマイクロマーケティングの一種である, CRMに関する研究が盛んに行われている.CRMにおいて最も重要視される施策は優良顧客の識別と維持であり, 顧客を知り, 理解することが非常に重要視されると指摘されている.本研究ではCRMに着目し, CRMでよく行われているデータマイニングを行い, 優良顧客を対象とした印刷素材における購買傾向に違いについて分析を行った.印刷機器販売代理店の購買履歴データを用いて製品種別にRFM分析を行い, 優良顧客の特定を行った.得られた結果を基に, 優良顧客の購買製品に対してABC分析を行い, 主要製品である印刷素材の購買傾向についてベイジアンネットワークを用いて分析を行った.結果として, 優良顧客における印刷素材の購買傾向の違いについて明らかとなった.


大規模組織におけるAgile開発の実践とプロダクトオーナーのスキル獲得の一考察

西山 美恵子,宇山 篤志,杉山 恭太,山内 貴弘


スクラム型のアジャイル開発において,プロダクトオーナーの役割はスクラムチームから生み出されるプロダクトを最大化することである.そのためにはプロダクトオーナー自身がビジネスサイドとシステムサイドの両方に精通している必要がある.一方で大規模な組織では職掌範囲が明確に分かれ,ビジネスサイドとシステムサイドが分離しているケースがほんどである.こうした背景からプロダクトオーナーは少なからず, 現状の組織にはないスキルを獲得する必要に直面する.今回取り上げる事例は,プロダクトオーナーがどのようにスキルを獲得するかを確認するとともに,周囲のメンバーはプロダクトオーナーに対してどのようにアプローチをしたのかを分析することで,プロダクトオーナーのスキル獲得の過程を事例から考察するものである.分析フレームワークには,プロダクトオーナーのスキル獲得を分析するものとして正統的周辺参加論を用いた.


チーム活動をより良くするための反省会の有効活用手法

ダン フー タック


COVID-19と共に生きることを決意し、お祭りやイベントなどは再び開催されることが許可された。筆者は大学や地域でたくさんの活動計画に参加している。計画を実施する過程で、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともあり、今後の計画で改善するべきところがある。そのため、反省会が必要である。しかし、反省会でメンバーがお互いに批判をし、関係不和になるケースが散見される。反省会を効率的かつ効果的に進めるために、筆者はK P T(Keep-Problem-Try)という方法と誰でも入力できる Google Docsを組み合わせて実行した。本稿では、チームリーダーとしての筆者の経験とその成果を分析していく。また、その結果を基にチーム活動をより良くするためのリーダーのあり方について考察をしていく。


品質向上活動の事例

村上 ひとみ


お客様より今後開発規模拡大が見込まれるが,これまで以上に品質が良くなるようアイディアを出して対応してほしいと依頼された.そこでリスクを回避するために,品質に問題ない体制を構築することが必須となり,専任チームを立ち上げて品質向上活動を実施することとなった.主にはプロジェクトで作成する納品成果物に対して品質向上活動を実施した.活動の結果,過去の制度改正対応時と比べてお客様レビューの指摘数が減少し,サービスイン後の本番障害の数も減少傾向となった.このことでお客様の信頼を獲得し,お客様の課題解消にも貢献できた.その後専任チームは解散したが,仕組みづくりは定着させたため,現在も品質向上活動は継続実施できている.本稿では筆者が実際に実施した品質の作りこみ方,品質向上の工夫についての経験事例を説明する.


女子大学生 脚痩せプロジェクト

松原 花,武山 詩園


大学の講義でプロジェクトマネジメントについて学び、WBSやリスクマネジメントなどの知見や気づきが得られた。これらのスキルを身近な事例で活用したいと思い、筋トレにプロジェクトマネジメントを適用してみた。「夏までに足を出せるようにする」をゴールに、計画を立て実行。プロジェクトの結果や自分自身の傾向、効果的な工夫・改善点について掘り下げ、まとめた。また、日常生活でのプロジェクトマネジメントの活用方法について考察した。


コミュニケーションにおける対立と配慮の関係の調査

蘇 振博,下田 篤


プロジェクトを成功させるためには,様々な人間関係の対立(コンフリクト)において,適切な配慮の下でコミュニケーションすることが求められる.本稿では,こうした対立と配慮の関係を,対人配慮のモデルとして知られるポライトネス理論で説明できることを提案した.職業経験のある461人から回収したアンケート結果から,目的変数である意見のし難さの度合いを5つの変数(行為,力関係,社会的距離,性別,年齢)で説明する回帰木分析を行った.その結果,コンフリクトの状況においても目上には意見し難い傾向があること,同僚や目下であっても感情についての意見は控える傾向があることなど,納得できる結果が得られ,提案の妥当性が確認できた.


アートプロジェクトにおける契約書類の有用性
- 文化庁の有識者会議によるガイドラインに関する考察 -

宇田川 耕一


7月27日のNHKニュースで、「文化芸術分野の労働環境を改善するため、文化庁の有識者会議は口頭で契約するなどの慣習を見直し、条件が明記された書面を作成することなどを盛り込んだガイドラインをまとめ、27日に公表」したことが報道された。文化庁によれば、「俳優や音楽家、舞台スタッフなど文化芸術の分野では慣習として口頭での契約が多い」という。では、アートプロジェクトの現場では、本当に「口頭での契約が多い」のか。さらには「(アーティスト側が)不利益を被ったり、トラブルに発展したりする」可能性はあり得るのか。ガイドラインでは、「契約内容を明確にした書面の作成を推進する」としたうえで、具体的な契約書のひな型やその解説も示されている。筆者が過去に実際に手掛けたアートプロジェクトの実例をもとに、その実体との乖離の有無、ひな型の有用性について検証する。


機能共鳴分析手法FRAMを用いたCCPM適用時の分析法の検討

日下部 茂


制約理論を応用したクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント (CCPM) の適用にあたってはプロジェクトの特性や問題点を分析する必要がある.本稿ではそのような分析に機能共鳴分析法FRAMを用いたモデリングを用いることについて検討する.FRAMでは機能やアクティビティに着目したモデリングを行うが,その際,先行する機能やアクティビティの出力を,後続する他者の入力,事前条件,時間,資源,制御といった側面と関連付ける.このような関連付けにより,プロジェクト進行における過度な相互作用やエスカレーションといった共鳴を分析できると考え,FRAMのモデリングによるCCPM適用時の分析について論じる.


変化の激しいデジタル時代を勝ち抜く組織運営
- 金融業界における大規模アジャイル組織運営事例 -

渡邉 優作,寺本 遼平,篠崎 悦郎,島村 純平,白井 憲一


変化の激しいVUCAな時代にあって、金融業界でも顧客ニーズの変化に合わせたサービスの創出が求められている.しかし、従来型のプロジェクトマネジメントや組織では変化に合わせてアジリティ高くサービス創出することが難しい.金融業界に求められる高い品質を確保しつつ、ニーズに合わせて迅速かつ柔軟にサービスを多数創出するための組織運営、また、製販一体の多様性のある組織化を、著者らは大規模アジャイルフレームワークを元に実現してきた.本稿では、その活動内容と結果について述べる.


DX技術を活用した東日本大震災に関わる非構造化データの可視化による震災ナレッジ共有の取り組み

後藤 直也,高橋 悠香,高橋 貞明,武澤 慎文,古瀬 健治,中村 仁


東日本大震災から11年が経過したが,震災発生当時の教訓や知見を,今後の様々な災害に向けて,どのような形で活用できるかが,大きな社会課題となっている.そこで筆者らは,東日本大震災発生時のさまざまなデータを分析・整理し,災害の教訓としてオープンデータ化を目指す取り組みに参画した.分析対象となる震災データには,避難者推移や支援物資の配備状況といった情報の他にも関係各所のヒアリングデータなど,取り扱い難度の高い非構造化データも多く含まれていた.本論文では,それらの非構造化データに対し,AI等のDX技術活用よる可視化を通じ,震災ナレッジ共有を進めた取り組みについて報告する.


利他的行動の導入による顧客志向行動の理論的考察
- 情報システム開発プロジェクトにおけるロイヤルティ向上にもとづく動機づけモデルの研究 -

中原 あい,関 哲朗


中原らによる先行研究では,プロジェクト・メンバのモチベーションの維持/向上対策を提案する中で,Kotlerらの顧客志向の議論や新たに相互ロイヤルティの概念を導入している.従来のステークホルダの議論において,ステークホルダ・マップの中心にはプロジェクマネジメント・チーム,または,プロジェクト・チームが置かれてきた.メンバの視点からは,マップの内側に位置するほどステークホルダとして利己的な存在であり,外側に位置するほど利他的な存在であることが示されていることになる.このような整理によれば,提案のモデルが強い利他的行動にもとづくものであることが理解できる.本研究では,顧客志向や先行研究の背景には利他的行動の原理が働いていることを理論的に議論することで,メンバのモチベーションの維持/向上には利他的活動が有効であることを確認し,先行研究の理論的側面を補強する.


異文化組織間知識移転プロセスのP2M視点に依るモデル化
- 多国籍ITサービス企業内プロジェクト管理知識移転に関する事例研究 -

遠藤 洋之


筆者は,日系国際ITサービス企業の異価値体系圏間オフショア委託,及び現地顧客向けサービス提供の為の,プロジェクト管理(PM)知識の国際移転事例研究を行っている.当研究の調査対象は,日系国際ITサービス企業J社のAPAC地域現地拠点宛PM知識移転活動である.先行研究における企業コミュニティ内知識移転プロセスは, 知識の送り手である本社から受け手である海外拠点へのプロジェクト的移転を前提としており, 知識移転段階(Stage)モデルによってそのプロセスを表現している.本稿では,在APAC地域の個別拠点を知識の受け手とする有期の知識移転活動を1プロジェクトと見做し, 複数APAC拠点宛の長期に渡るPM知識移転活動をプログラム(プロジェクトの上位概念)と定義する.そしてプログラム・プロジェクト・マネジメント(P2M)の観点から, 知識移転プログラム活動を分析し, 知識移転プロセスのモデル化を提案する.


熟練プロジェクトマネジャーが持つ暗黙知の抽出に関する研究計画

木野 泰伸


プロジェクトマネジメントに関する知識については,既に,多くのガイドや書籍が発売されており,広く流通している.しかし,それらのガイドや書籍を読み,知識を身に着けたのみで,優秀な熟練したプロジェクトマネジャーになれるわけではない.熟練したプロジェクトマネジャーは,既に文章や図として形式化された知識だけでなく,自身の経験を通じて獲得した暗黙知を多く持っている.幸い,プロジェクトマネジメント学会には,個人として多くの熟練したプロジェクトマネジャーが参画している.本研究では,そのような熟練したプロジェクトマネジャーにインタビューを実施し,文章化を行い,質的研究法やテキストマイニングの手法を用いて,本人も意識していなかったような暗黙知の抽出を試みる.本発表では,その研究計画について述べる.


エンタープライズ向けアジャイル開発におけるスコープマネジメントの考察

中本 傑,宮島 雄一,岡村 龍也,鈴森 康弘


一般的にエンタープライズ向けのシステム開発においては,予め固定されたローンチタイミングが必達の条件であり, サービスインに向けてスコープをコントロールしながらプロジェクトをドライブすることが非常に重要である.さらに,DX(Digital Transformation)時代のビジネス状況は,デジタル技術の進歩を背景としたVUCA(Volatility:変動性,Uncertainty:不可実性,Complexity:複雑性,Ambiguity:曖昧性)ともいわれる予測が困難な状態となっている.企業は,VUCA時代に対してスピード感を持って柔軟に対応することが求められており,そのための開発手法として「アジャイル開発」が広く採用されてきている.本稿では,エンタープライズ向けアジャイル開発において,実際の案件で試したスコープマネジメント手法に関する知見と,そこから見えてきた改善点及び対応策に関して言及する.


「七夕企画」でのプロジェクトマネジメントの効果と改善点について

川瀬 美都,生駒 有香莉,玉手 杏,堀越 風未


札幌学院大学では、学生が学生のために活動している、コラボレーションセンターという団体がある。COVID-19による自粛が明け、その活動内容にプロジェクトを企画する機会が増加した。一方、プロジェクトマネジメント講義で学習した筆者は、コラボレーションセンターで企画するプロジェクトに、学んだ知識を活用できると考えた。そこで、2022年に企画した「七夕企画」において、 プロジェクトマネジメントの知識を活かして企画から計画・実行を行った。本稿では、「七夕企画」における プロジェクトマネジメント実例の紹介とその効果を紹介するとともに、今後のプロジェクトへの改善点を考察する。