論文要旨(Abstract)一覧

自動化におけるアジャイル開発の適用

Mr.Hiroshi Tomita


RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは,従来人手で行ってきた業務プロセスをソフトウェアによってプロセスを自動化するものであり,近年利用が拡大している.早期リリースによるロボット化利益享受の早期化,ロボット仕様確定のし易さ,業務変更への対応のし易さの観点から,ロボット開発におけるアジャイル開発適用のメリットを説明する.また,繰り返し型のロボット開発を行うにあたり,共通化などの注意すべき点を説明する.


プログラムマネジメントにおける品質管理手法の考察

Mr.Shinichi Takahashi


プログラムマネジメントとして,複数のプロジェクトを管理する場合,プロジェクト間で品質管理を行うことで相互補完の効果により品質向上に寄与できる. 本論文ではプログラムマネジメントにおける品質管理に関する考察を行い,プロジェクト実施後に発生した本番障害分析結果を同様の要件に適用することで品質向上につながる方法を提示する. また,プログラムマネジメントにおいて,品質を確保するための重要な要素について考察を行う.


大規模海外展開プロジェクトにおけるPMOの役割

Mr.Jiro Nonoyama


現地主体となる大規模な海外拠点展開プロジェクトを円滑に進めるに当たり,体制にPMO(Project Management Office)の存在を構築することは重要な役割を持つ.プロジェクトの立ち上げ,基本設計,テストといったそれぞれのフェーズにおいて、どのタイミングに何の作業を検討し、どのように展開していくか,といった事前の実行計画の策定と合意が重要となる.また展開した計画については,トラッキングの頻度と手段についても考慮して常に日本側と海外拠点とのコミュニケーションを密に行う必要がある.本稿では特に基盤・テストの推進を中心にして実践した海外プロジェクトの失敗事例・成功事例を元に,教訓,及び今後のPMOのあり方について考察する.


PM論文におけるリスクマネジメント研究の傾向

Dr.Yasunobu Kino 、 黒木弘司、 豊嶋大輔


プロジェクトを成功に導くためには、リスクを適切にマネージすることが重要である。このことから、リスクマネジメントに関する研究は、従来より活発である。その研究内容の傾向を確認するためには、論文を熟読することにより、確かめることができる。また、熟読するのとは別に、キーワードに分解し、そのキーワードの出現傾向を確認することにより分析することもできる。本研究では、後者の方法を用いて、リスクマネジメント研究の傾向を分析した。


ソフトウェア開発プロジェクトマネージャ育成に関する多面的な取り組み

井川 淳司


AI・IoT・等のシステム高度化、様々な開発手法(ウォーターフォール・アジャイル・等)を組み合わせたハイブリッド型開発の増加、国内とオフショアの分散開発プロジェクトの増加、等、ソフトウェア開発プロジェクトの難易度は年々高まっているが、難易度の高いソフトウェア開発をマネジメントできる人材が不足しており育成が急務な状況である。 今回、ソフトウェア開発プロジェクトマネージャ育成に関する多面的な取り組み(現場でのコーチング・メンタリング、身近なプロジェクト事例・失敗プロジェクト事例を用いた集合研修、ソフトウェアエンジニアリング(開発プロセス・テスト・生産性向上・見積・等)の勉強会、自己啓発の促進、等)について報告する。


傳役(もりやく)コンセプトによるPM人材育成への取り組み

池田 敦志、 小島 浩


近年,SIビジネスを取り巻く環境は, 要求される製品やサービスの多様化,顧客からの納期の短縮やコスト削減要請などにより,厳しさを増している.SIビジネスの収益を確保するためには,プロジェクトの成功率を上げる必要がある.プロジェクトの成功は,プロジェクトマネージャー(PM)の能力に懸かっているが,プロジェクトを完遂できる能力を持ったPMは,育成の遅れにより不足傾向にある.既存の研修メニューやOJTを中心とした教育では限界があり,新たな教育方法を開発する必要があった.富士通クオリティ&ウィズダムでは,「傳役」というPM育成コンセプトと実践力の強化を目的とした育成メニューを作成し,2016年度より富士通グループやパートナー向けにPM実践教育を行っている.ちなみに「傳役」とは,殿様の跡継ぎを育てる役目を担う家臣を言う.それによる人材育成の効果がでている.本論文では,「傳役」の教育内容の紹介とその効果について論述する.


PMコンピテンシー分析によるプロジェクト成功率向上への取り組み

池田 治彦、 原田 正彦、 椎名 利成、 吉村 義弘、 小林 一彦、 村山 昌克、 久保田 芳和


株式会社日立産業制御ソリューションズでは,プロジェクト混乱防止を目的として,プロジェクト管理システムを構築した.本管理システムは,プロジェクト最上流の未受注の案件審査段階から納入後の顧客運用状況の調査,確認,フィードバックまでのライフサイクル全般を管理対象としており,その中で,プロジェクトの成功/失敗の評価およびプロジェクトマネジャコンピテンシー評価/分析を行っている.プロジェクトの成功要因は,プロジェクトマネジャの力量,行動特性に依存する部分が多いが,今回,プロジェクトマネジャコンピテンシー評価とプロジェクト成功/失敗の因果関係を分析し,プロジェクト成功へ導くためのプロジェクトマネジャの弱点克服/能力開発に繋げる活動を報告する.


衛星追跡管制地上システムの段階的設備更新プロジェクトにおけるリスクと対策

石井 順一郎


衛星追跡管制システムは衛星や深宇宙探査機との通信を担う重要な地上設備である。これらの地上設備において老朽化等による設備更新を行う場合、地上設備自体が冗長構成となっているシステムでは、片系ずつ順番に更新する「一括更新」が一般的に行われるが、冗長構成となっていない地上設備では、長期間の衛星運用休止を避けるため、構成設備の部分的な更新作業を数年間かけて繰り返し、システム全体を更新する「段階的更新」の手法が採られることが多い。本稿では衛星追跡管制システムにおいて段階的設備更新を行う場合に生じうる課題やリスクを挙げるとともに、これらの具体的な対策について述べる。


情報価値に基づくプロジェクト組織の評価と設計
― コミュニケーション計画の視点から ―

石井 信明、 大場允晶


プロジェクトの成功には,プロジェクト組織構造と組織内のコミュニケーション・リンク構造について,十分な計画を練ることが欠かせない.本稿では,プロジェクト組織を構成するサブ組織間のコミュニケーション・リンクの構造から,Webページのランキング計算の原理を応用して,各サブ組織の持つ情報価値を導き出す.さらに,実行するワークパッケージの重要度から求める各サブ組織の重要度と各サブ組織の情報価値との距離からプロジェクト組織構造の評価指標を定める.その上で,あるべきプロジェクト組織構造とコミュニケーション・リンク構造を導く設計手法として,評価指標の最小化を目指す手法を開発する.設計手法の有効性を,簡単なプロジェクト組織構造の設計を例として示す.


開発現場の業務仕分けによる開発者の負担軽減事例
~開発者を雑務から解放する~

石田 兼司、 荒木辰也、 松山新、 今井達朗


開発現場において,各種開発付帯業務は意外と多く,プロマネや開発者の時間を浪費する一要因である. 一つひとつは小さな業務であるが,開発プロジェクト全体では,大きな間接工数が発生しており,看過できない事象が発生している. これまで,私たちは,開発現場の「働き方改革」の一環として,ドキュメント作成業務の効率化施策について紹介してきた. 今回は各種開発付帯業務と,少し対象を広げ,これまで属人的であるがために困難と思われていた開発現場の雑務の切り出しとアウトソーシング化に関する取り組み事例を,導入プロセス,効率化施策,期待効果などを交えて紹介する. プロマネや開発者がより良い仕事をするための仕組みづくりのヒントとして頂きたい.


“プロジェクト内SEPG”の育成と配置

泉 友弘、 田中 覚、 三角 英治、 佐藤 慎一


プロジェクトが高度化・複雑化し、PMの業務が増加していることや、適切な開発プロセス・管理プロセスの定義・実行が不十分であるためにプロジェクトが問題化することを背景に、各々のプロジェクトでPMの業務を支援し、開発プロセス・管理プロセスを定義・実行する役割を、“プロジェクト内SEPG”として当社流に定義した。 その展開に当たり、人材育成施策として、プロジェクト固有の品質保証ストーリー(目標品質の達成に向けた各工程の到達品質と取組みに関する計画)策定のスキル育成プログラムや、人財相互の情報交換のためのセミナー・ワークショップを開催している。また、適切な人材配置に向けた推進活動を行っている。 (SEPGはカーネギーメロン大学のサービスマークである。)


PM能力向上における資質の活用

磯部 匡志、 佐藤 靖嗣、 木村 和宏


 能力向上に向けた取り組みとして大きく2つのアプローチがある.1つはプロジェクト管理手法等の技量に着目したアプローチ,もう1つはリーダーシップ等の行動に着目したアプローチである.技量面では,これまで知識・経験の両側面から育成施策に取り組んできたが,行動面に関してはメンタリングにおける暗黙知の継承など部分的な取り組みに留まっていた.行動は個人の資質に影響される.ここでの資質は繰り返し現れる思考,感情,行動を類型化したものをいい,自身の上位の資質を活用することが能力向上に効果的に作用するといわれる.  本稿では,プロジェクト・マネージャ(以下PM)の行動面に着目し,資質を活用した能力向上の取り組みについて論じる.


プロジェクトマネージャの役割期待と生涯キャリア

一栁 晶子、 一柳晶子


1960年代にモダンPM(プロジェクトマネジメント)が確立され約半世紀が経ち,プロジェクトマネージャ有資格者数も国内だけでも数万人規模となっている.本稿では,プロジェクトマネージャ有資格者数の推移,資格取得時の年齢,プロジェクト経験年数,活動領域(勤務先業種,業務部門),また,想定されるキャリアパスからあらためて職業としてのプロジェクトマネージャの役割期待を考察する.また,1990年代以降欧米を中心に関心が高まっているバウンダリレス・キャリアや個人が希望するキャリアを歩んでいける環境の整備などについて,プロジェクトマネージャの生涯キャリア(デザイン)の視点でその有効性を考察する.


サービスサイエンスの観点を取り入れた品質アプローチの考察
-SI品質の確保に向けた5レイヤ・マネジメントの実践-

伊東 憲一、 中泉貴子


SI(システム・インテグレーション)プロジェクトの遂行において,時間やコストの限られたリソースの中でどのように品質を確保するのかは,多くの取り組みがなされている大事なテーマである.SIプロジェクトにおける品質活動にはいくつかの観点があるが,特に大事なのはエンドユーザーにて実感する満足度の向上への取り組みである.本稿では,システム要件やSLAのみでは体系化しにくいエンドユーザ視点の品質に対して,サービスサイエンスで定義されている6つの特性を照らし合わせ,これまでの取り組みの有用性について考察する.


現行踏襲型プロジェクトの8つの問題点と再構築マップによるアプローチの提案

稲葉 豊茂


「現行踏襲」というキーワードの下に行なわれる業務システムの再構築プロジェクトは,近年増加の一途をたどっている.それにともなって,品質・納期・コストや顧客満足を満たせず失敗プロジェクトとなる例も後を絶たない.「現行通り」という要件は,一見容易に思えるが,多くの失敗のタネを含んでいる.なぜ同じ失敗が繰り返されるのか.本稿では,現行踏襲を謳ったプロジェクトの問題点を,過去10年間の多くの失敗事例からお客様とベンダーの立場で抽出し,8つの問題点に整理した.また,問題を解決する一助として,再構築における変更点をアプリ開発とインフラ・運用保守の観点から整理する,再構築マップの考え方を述べる.


フレーミングを用いたマトリックス型組織運営方法の提案

井上 有二、 井上有二


VUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))という言葉で表現されるように、変化が大きく絶対的な答えが無い状況で、どのように結果を出していくのかということに観点が集まっている中、その対応策の1つとしてマトリックス型組織が再び注目されている。しかし、その特性が故にその運営が困難を極め、逆に組織の混乱を招き失敗と定義されるケースも少なくない。本稿では、今後の時代におけるそのマトリックス型組織の重要性を定義すると共に、その運営方法として筆者のプロジェクトが採用しているフレーミングを提案する。


定常業務中心の組織にプロジェクトマネジメントを定着させる際の考慮点

井之川 幸彦、 五條直人


「定常業務」と「プロジェクト」は相対する定義を持つ。ところで事業会社におけるITシステムの開発・保守の場をみると、初めに「プロジェクト」でシステム開発を行った後に、「定常業務」として保守活動が行われることが多い。長く運用されているITシステムでは、保守作業の効率化が進められた結果多くのオペレーションが「定常業務」化されていく。この結果ある程度の期間経過後に「プロジェクト」に取り組もうとした際に、正しいプロジェクトマネジメントが遂行できないケースや、「いつものやり方」が通用せずトラブルプロジェクト化するケースがある。 ITの進化は速く、「いつものやり方」がいつまでも通用するものではない。このことから「定常業務」として保守作業を中心に実施している組織においても、正しいプロジェクトマネジメント技術を身に付け、定着させておくことが肝要と考える。 そこで本稿では、定常業務中心でオペレーションしている組織にプロジェクトマネジメントを定着させる活動について、事例を基に課題と改革への取り組みを示す。


設計、テストでの性能検証プロセスの導入により、性能問題を早期に検出するための取り組み

井元 崇之、 川村 冠東、 和田 美江子、 中越 修


性能問題はプロジェクト終盤で検出されることが多く,開発遅延やコスト増大の原因となる.プロジェクト終盤での性能問題を防止するためには,システム開発のなるべく早い段階で性能問題の原因を解消することが必要である.本稿では,性能問題を早期に検出できるようにするための取り組みとして、過去に発生した性能問題の原因の分析、標準とする性能分析ツールの選定,および設計,単体,結合テストなどのより早いフェーズで性能検証を行うプロセスの策定について述べる.また,本プロセスの適用により性能問題を早期に検出したプロジェクト事例を紹介する.


プロジェクト中盤に注目したコンピテンシ分析

岩間 智史、 武田 善行


近年,高業績者の行動特性に着目し,より良いプロジェクトマネジメント手法を明らかにしようとする研究が盛んに行われている. 本研究では、高業績PMと標準なPMがプロジェクトの中盤どのような行動をとっているのかを因子分析し行動特性を比較する. 標準なPMの成長を促すことを目的とする. 過去にPMを務めた経験のある大学生を対象としてアンケート調査を行う. 過去のプロジェクトで高い成果を上げたチームとそれ以外のチームを比較分析する.


アプリケーション保守におけるアジャイル・メトリクスの活用事例

岩谷 晋吾


近年ますますアジャイルを取り入れたソフトウェア開発が盛んとなってきており,数多くの種類のアジャイル・メトリクスに関しても提言がされている.しかしながら,ウォーターフォール手法からアジャイルへ移行したアプリケーション保守・拡張の現場では,実際にはメトリクスの活用において多くの課題が存在している.本論文では,アジャイル・メトリクスの導入と活用の経験から参考となる知見を共有することを目的とする.


内的要因を考慮した新たなITリスクマネジメントの提案及び評価

植草 皓、 谷本茂明、 畑島隆


IoTやFintechといったICT技術の発展によりインターネットの利便性が向上する一方で,ITガバナンスへの脅威も叫ばれており,ITリスクマネジメントの重要性も高まっている.ITリスクの発生要因は外的要因と内的要因に大別される.前者はアンチウイルスソフトやファイアウォールのような技術面と,セキュリティポリシの作成と遵守による運用面に分類され,サイバー攻撃対策として広く普及している.しかし,これらはヒトの心理面や倫理面が重要な要因である内部不正に対しては効果が十分でないため,後者の内的要因からの対策が求められている.本論文では,外的要因に加え内的要因を考慮したリスクアセスメントにより,新たなITリスクマネジメントを提案する.


歴史上のサブリーダーから学ぶプロジェクトマネジメントの教訓に関する一考察 ~第2報:失敗プロジェクトと,リーダーとサブリーダーとの関係性に基づく分析~

上野 奈々、 上野奈々、 下村道夫、 玉田亮


プロジェクトの現場では理論やツールも重要であるが,個人の経験と勘がより重要とされることも多い.それらを探る一手法としては,歴史上のプロジェクトや個人を分析・考察することが考えられる.一方,プロジェクトや組織の運営においては,リーダーの支援や代行,メンバーとリーダーとの橋渡し役などを担うサブリーダーの重要性が高く,その行動がプロジェクトの命運を左右することがあると言われている.旧稿では歴史上の様々な時代の成功プロジェクトにおけるサブリーダーの行動をプロジェクトマネジメントの観点から分析した.本稿では,分析対象を失敗プロジェクトに拡げるとともに,リーダーとサブリーダーとの関係性に依存した,サブリーダーの教訓を考察する.


プロジェクトにおけるアンチパターンの蓄積および体系化に関する考察

内田 吉宣、 海老澤 竜、 山岡 彰、 初田 賢司、 小山 清美


本来発生すべきではない費用やムダな費用であるロスコストを削減するには,失敗の予兆を早期に察知し適切な対応を行うことが重要である.我々はこれまで、プロジェクトにおける失敗構造の類型化によるアンチパターンを用いたロスコストマネジメント手法について検討してきた.ロスコストを削減するためには,アンチパターンをいかに網羅的に蓄積するかが肝である.本報告では、これまで対象としてきたプロジェクトの振り返りの場以外情報からのアンチパターンの作成可能性とともに,アンチパターンの体系化方法について報告する.


多国籍ITサービスにおけるプロジェクトマネージャの現状とレベル向上に関する考察

遠藤 洋之


ITサービス業界では, 米国企業による米印型国際間開発モデル(GDM)の確立と並行して, 日系企業による日中型オフショアモデルの確立と, それに続く開発拠点のアジア太平洋(APAC)地域への展開施策が進められた. 両モデル間には相違点が多く, 日系企業が日中オフショアモデルの延長として日印GDMを試みつつ, 期待した効果を得られない例が見られる. 当論文では, 国際拠点間連携の為の現状把握として行ったAPAC域内拠点におけるPMレベル判定やWorkshop事例を通じ, 同地域におけるPMの現状を整理し, 多国籍ITサービスにおけるPMレベル向上とプロジェクトの遂行法に関わる考察を行う.


男子学生の恋活パーソナルプロジェクト
~第一報:行動計画策定フェーズ~

大城 健一、 下村 道夫


昨今,若者の恋愛離れ,晩婚化,未婚化が社会問題となっている.その理由の一つとして,恋愛経験が少ないことから,恋愛の進め方やノウハウなどの知識が乏しいことが挙げられる.恋愛は独自性があり,出会い,アプローチ,告白といった複数のプロセスを経て達成させることから,パーソナルプロジェクトと捉えることができる.本稿は,恋愛をプロジェクトと見立て,プロジェクトで一般に用いられる各種フレームワークや技法を適用することによって,恋愛を成功に導くための方法論を提案しており,今回は行動計画策定に着目している.本稿の狙いは,恋活のやり方がわからないため,恋人獲得の具体的行動に踏み出せない男子学生の一助となることである.


オープンソースプロジェクトに対するジャンプ拡散モデルに基づく開発工数予測モデル

大野 晃太郎、 田村慶信、 山田茂


ソフトウェアプロジェクトを管理する上で,開発工数を推定することは重要な作業である.特に,オープンソースプロジェクトの特定バージョンのリリースに必要とされる開発工数は時間の経過とともに複雑に変動していくため,プロジェクトの状況を定量的に評価することが難しい.本研究では,開発工数に与える不規則な変動をジャンプ拡散項として考慮し,Wiener過程とジャンプ拡散過程に基づくプロジェクト進捗管理のための開発工数予測モデルを提案する.また,オープンソースプロジェクトに対するモデルの適用例を示すために,実際のオープンソースプロジェクトにおけるバグトラッキングシステム上のデータを分析する.


リーダーとフォロワーの関係に基づくプロジェクトの成功要因に関する研究

大野 晃太郎、 横山真一郎


リーダーシップは,プロジェクトマネージャに必要とされるスキルである.プロジェクトの成否にはリーダーのそのスキルは重要である.同時にリーダーに追従するフォロワーのスキルや,リーダーとフォロワーとの適切な関係性もプロジェクトの遂行や成否に大きく影響を及ぼす.しかし,リーダーのみに注目したリーダーシップ研究が多く,フォロワーとの関係性がプロジェクトの成否にどのように影響するかについての研究は少ない.そこで本研究では,リーダーとメンバーの関係性がプロジェクト成功に及ぼす影響を把握するために,プロジェクトリーダに対しフォロワーの対応とリーダーの特性についてアンケート調査を行い,プロジェクトの規模や種類さらにリーダー特性ごとに,プロジェクト成功率に対してリーダーとフォロワーのそれぞれの特性とお互いの関係性の影響の度合いについて検討した.なお,分析にはロジスティック回帰分析を用いた.


PM学会教育出版委員会におけるPM標準カリキュラムの検討状況と今後の活動方針について

大村 保之、 木下 実


PM学会教育出版委員会(委員長:橋爪宗信)ではPM学会として広く大学等の教育現場で活用できるプロジェクトマネジメントの標準カリキュラムの策定を目指して検討を進めている.過去からも検討は継続的に実施してきたが,それらの成果を加味し,最近の大学等教育現場でのプロジェクトマネジメント教育の実態を踏まえた上で,どのようなカリキュラムがより効果的に大学等教育機関で活用しやすいかを現在検討している.現在検討しているのは,プロジェクトマネジメントの標準知識で学部学科等の区分によらない共通部分と各専門分野に特化したプロジェクトマネジメント領域にフォーカスした個別部分のうち,前者の共通部分における科目概要案の検討をおこなっている.春季大会に実施した各大学の先生方とのセッション結果を加味した検討状況を報告し,今後の策定方針と予定を説明して本取り組みについてPM学会員のより多くの参画を奨励したい.


プロジェクトマネジメント行動ルールを機械学習するエージェントを用いたプロジェクトの計画精度と評価基準の影響に関するシミュレーション

岡田 公治


プロジェクト挙動シミュレータを用いて膨大なプロジェクトマネジメント経験を蓄積させることで,プロジェクト評価基準に応じた準最適なプロジェクトマネジメント行動ルールを機械学習するプロジェクトマネジャー計算機エージェントを実装可能であることが,先行研究により示されている.本稿では,プロジェクト挙動シミュレータとプロジェクトマネジャー計算機エージェント用いて,プロジェクト計画精度の違いとプロジェクト評価基準の違いが,プロジェクト実施結果に与える影響をシミュレーション実験し考察する.


ソフトウェア開発におけるテストチームの設置に関する一考察

小笠原 秀人


製品のソフトウェア開発では、新規開発だけでなく、既存のソフトウェアを改造する派生開発も数多く行われている。派生開発は既存のソフトウェア資産を活用できるというメリットがある一方で、品質を確保するためのテスト工数・期間は削減できていないという課題が存在する。 この課題に対応する施策として、テスト自動化の取り組みが効果的であり、近年、多くの組織で取り組みを推進している。しかしながら、リソースの不足や技術力不足などによって、テスト自動化を推進するための体制の整備が進まず、組織的に安定して実践できる状態に辿り着かないことが多い。そこで、海外のソフトウェア開発部門に、テスト自動化の技術開発と推進を専門とするチームを設置し、社内の各開発部門におけるプロジェクトに配置し、テスト自動化に責任を持つという体制を提案し、実践した。 本発表では、テスト自動化における阻害要因と、その阻害要因に対する施策と実践内容を、事例を交えて紹介する。


テスト工程におけるバグ分類を用いた品質評価と残存バグ予測の適用事例

垣原 睦治


SIサービスにおけるソフトウェア開発プロジェクトでは、開発したソフトウェアの品質状況により、テスト工程で多くのバグが発見される場合がある.これらのバグは、要件定義、設計、コーディング、レビューやテストの不十分さなど様々な原因によって発生する.出荷後の品質状況を良好にするためには、出荷までに様々な観点でのテストや必要に応じて品質改善対策を行う必要があるが、このとき、品質状況や改善対策の効果の把握のために、品質評価と残存バグの予測が重要になる.この方法として、発見されたバグをカテゴリで分類し、この集計結果を基に品質評価と予測を行うことを試みた.この方法をプロジェクトに適用し、出荷後の品質状況と比較することで有効性を示す.


人工知能(AI)と統計モデルの予測精度の差に関する統計的検証と予測精度向上のための検討

梶山 昌之


プロジェクトの規模、工数、コスト、工期、品質、リスクなどの、プロジェクトのマネジメントに関係する諸量を定量的に把握し、予測や管理に活用するためには、メトリクスの統計的な分析と予測モデルの構築が必要となる。近年は人工知能(AI)により予測や判別のモデル作成する試みも行われている。しかし、どのような課題に対してAIが適しているのかは良く知られていない。本稿では、統計モデルを用いる方法と、機械学習のモデル(ディープラーニング)によるアプローチを比較することにより、両者の予測精度の違いを統計的に検証する。また、予測精度を向上するための方法について検討する。


ステークホルダが持つゴールとタスクの定量的評価手法の考察
―産官学連携プロジェクトにおける複数ステークホルダ間のジレンマの解消―

加瀬 匠汰朗、 加藤 和彦


 本研究は,産官学連携プロジェクトにおいて連携を阻害する組織間のジレンマを解消することを目的としている.前報では,産官学のステークホルダについてゴール分析手法のi*(アイスター)で定義されるゴールとタスクの関係を調査し,形式概念分析を用いて類似性を見出すことで各ステークホルダの方針の違う部分や連携可能な部分を踏まえてゴール,タスクを抽出することに成功した.しかし,抽出されたゴール,タスクに対する定量的評価を行っていなかった.  本報では,抽出されたステークホルダのゴール,タスクについて定量的な指標を設定し,評価を試みる.定量的評価により,ゴール,タスクの優先順位を考慮した問題解決を図ることが可能となると考える.


生産性向上に向けた動的リーダ配置手法の提案

片岡 優也、 田隈 広紀


我が国のOECDによる労働生産性は低水準に位置しており、一人当たりGDPが低いことを示している。さらにICTシステム開発では「システムの仕様変更対応」「各工程の見積もりの甘さ」といった原因で47.2%が失敗している。そこで特に要求が高度なICTシステム開発の生産性向上を目的に、各工程の要求技術に長けたメンバを動的に開発リーダへアサインする手法を提案する。本研究では主に、①各工程のリーダをメンバの保有スキルを元に選出する方法、②リーダ交代時に引き継がれる定式的・暗黙的な情報項目、③開発リーダが共通的に備えるべき素養の明示とその獲得に向けた指針を示す。さらに開発リーダ経験者5名のアンケートを基に、これらの有効性を確認した。


「60歳を直前にして転職に挑戦。ライフシフトのための
プロジェクトマネジメント!!!」
~人生100年時代の自己改革のすすめ~ 

勝連 城二


 近年、人生100年時代と言われるように長寿化が進み、社会の人口構造、社会システム、年金制度、雇用制度、価値観も大きく変わろうとしています。私自身が60歳を前に、退職して引退か、雇用延長かを考えた末の結論は、従来の価値観を変えて元気なうちは働くべきとし、自分のスキルを最大限活かし、やりがいのある仕事をすべきであると、自己変革への挑戦に取組んだのです。日本において数百万社以上ある中に、“自分を今以上に成長させる会社”が、必ずどこかに存在すると信じ、転職を決意し、1年かけた“転職プロジェクト”をスタートさせたのです。 プロジェクト実行においては、プロジェクトマネジメント知識の実践を徹底し、ステークホルダーマネジメントを発揮して、転職プロジェクトを進めていきました。その結果、60歳を直前にして、関西地区のある中小企業に採用が決定し、転職を果たすことができました。


大規模開発と保守を共存させるDevOpsの考察

金子 英一


昨今のシステム開発は,ビジネスゴールを早期に実現する為に,短いサイクルでの開発と本番環境へのリリースを繰り返す手法が主流となってきている.一方で,依然として基幹業務における大規模なシステム開発では長期のスケジュール中に複数の本番リリースを計画する場合がある.ひとたび本番環境へリリースを実施した後は,開発環境で発生する変更と,本番環境にリリースした機能に対して発生する保守の変更(障害対応も含む)を,一方もしくは両方に反映するかを判断,決定し,システム全体の整合性を取りながら改修,テスト,リリースするという複雑な管理が必要となる。その際,主要となる管理プロセスは,変更管理,インシデント管理,構成管理およびリリース管理である. 当研究では,基幹業務の大規模なシステム開発において,DevOpsの考え方に基づき、継続的なインテグレーション、テストからリリースとデプロイにおける主要な観点として,前述の管理プロセスの対応策と効果について考察する.


RPA(Robotic Process Automation)プロジェクトにおけるマネジメント手法の確立
―エンタープライズ・アジャイル開発導入の手引き適用事例―

上條 英樹、 上條英樹


RPAは,国内の労働環境の変化に伴うホワイトカラー業務の自動化要求の高まりなどを背景に日本においても昨今,急速に普及しRPAプロジェクトが立ち上がりつつあるがプロジェクトの導入からの円滑なプロジェクト推進方法についてマネジメント手法が確立されていないのが実状である.そこでプロジェクトの導入時にマネジメント手法の選択判断方法からサポートしている産業技術大学院大学酒森研究室と産学共同研究した「エンタープライズ・アジャイル導入手引書」を実際の複数のRPAプロジェクトに適用しRPAプロジェクトの特徴の分析,プロジェクトマネジメント手法について検証を行い選択した手法の具体的な効果とRPAプロジェクトのマネジメントのポイントについて論ずる.


グローバルパッケージ導入における複数ステークホルダーの期待値マネジメントへの取り組み

川上 麻衣


日本の市場も昨今ではアジャイルのSpeed開発が増加しつつあるが,まだまだ基幹系においてはウォーターフォール開発の局面開発も根強い.日本のアプリケーション開発はお客様の要望にあわせカスタマイズ開発することに重きをおくので,操作性,効率性,見た目等もレベルが高い.そんな市場で,グローバルパッケージを導入しようとすると必ず日本のお客様の文化のGAPが発生するため、プロジェクトマネジメントの考慮点が多々必要となる,またグローバル企業とのコミュニケーションも連携して進めるため、双方のスタンダードの認識が合わないと,コミュニケーションレスによる弊害も発生する.本稿ではグローバルパッケージを導入する際に生じる弊害を,グローバル企業とお客様を含めたステークホルダーをどのようにマネジメントしながら,成功にサービスインさせたかについてその取り組みを紹介する.


有識者観点を取り入れた自動ソースコードレビューの提案
― Deep Learning適用によるソースコード品質の見える化 ―

河本 啓


ソースコードレビューを実施しているにもかかわらず,テスト工程以降に品質問題が発覚するケースがある.静的コード解析ツール適用の限界,第三者によるソースコードレビューの限界という2つの課題によるものである.課題解決の為,Deep Learningを用いた有識者観点の自動ソースコードレビューを実現した.前倒しで品質問題を解決できるように,ソースコード単体品質を見える化し,実装時に有識者観点の指摘を解決できる様にした.プロジェクト全体のソースコード品質を見える化し,プロジェクト全体のどこ(機能/人)に品質問題があるかガバナンスできる手段を考案した.システム開発領域での品質マネージメントの取り組みとして,Deep Learning活用実績を公開し共有する.


オープンイノベーションに関する能力の成熟度評価の提案

北 寿郎、 松本潤一


近年、日本企業においてもオープンイノベーションの重要性が認識され、様々なプロジェクトでオープンイノベーションの取り組みが行われている。しかし、そこで重視されているのは、内部のニースと外部のシーズのマッチングであり、オープンイノベーションを成功に導くための組織能力という視点からの考察はほとんど行われていない。 本研究では、オープンイノベーションに関する欧米および日本国内における様々な事例や研究成果をもとに、PMMIにも通ずるオープンイノベーションの成熟度評価の枠組みを提案する。


ソーシャル活動におけるPM活用事例

北畑 紀和


北海道網走市において地域のフリーペーパーを年2回発行し、現在は14号まで継続発行している。編集メンバーはボランティアで作業を行い発行費用は全て広告で賄っている。また編集メンバーは地域に在住しているメンバーだけではなく、東京、札幌など遠距離に居住しながら活動に参加しているメンバーも約半数いる。最新情報やツールなどはどうしても都会の方が有利という面は否定できないが地域創生活動を行なっていく上で、この有利な部分を積極的に活用して課題解決に取り組んでいる。PM手法の一部を活用することと物理的な距離が離れている中でソーシャル活動を継続していく仕組みは、全国的にもまだ少ないと思われ事例として紹介させていただきます。


マネジメントスキル向上を考慮したプロジェクト疑似体験手法の改善

木村 利昭、 地濃啓介、 井手野下美幸、 井上雅生、 坂本慧


プロジェクトでは,経験知を元にして解決策を検討する場合が多々あるが,経験値を得ていくためには時間を要する.我々は,その経験値共有のために「すごろく」を利用したプロジェクト疑似体験手法を構築し,2013年と2016年の研究発表大会で報告をしてきた. これまで,数々の適用を行い,評価・改善を行ってきた.その結果,プロジェクトの経験知共有という成果に結びつけることができたが,プロジェクトマネジメントのスキル向上へ繋げる点は,まだ不足があった.1つは,計画要素が構築できていないこと,もう1つは,実施時の評価指標であるQCDの回復に重きが置かれ,問題解決に適する対策を採用しないケースが見られたことである. 本稿では,その改善内容と効果を報告する.


機能共鳴分析手法FRAMによる個人レベルのソフトウェアプロセストレーニングのモデリング

日下部 茂、 日下部茂


開発を伴うプロジェクトでは開発のプロセスが重要な役割を果たすとされ、例えば、その改善フレームワークとして開発のためのCMMI-DEV といったものが提唱されている。CMMI-DEVは開発の業務で必要とされる概念や原則,必要な技術,手法,ツール,管理ノウハウといったものの集合から,ベストプラクティスを体系化したモデルである.しかしながら、そのようなモデルやテンプレートを実際のプロジェクトの状況に合わせて実際に活用するのは必ずしも容易ではない。本研究は、そのような指針を得る方法として、FRAM(機能共鳴分析手法)によるモデリングを活用することを提唱する。本発表で特に、CMMI-DEVのOTに関連する、PSPのトレーニング事例に対してFRAMによるモデリングを試行した結果について述べる。


ウォーターフォールとアジャイルを統合した管理手法Wagileの実践と課題

香西 淳司、 織野 太輔


大規模でミッションクリティカルなITシステムの開発に際しては,納期管理や契約形態の観点から,従来よりウォーターフォール型のプロジェクト管理手法が適用されてきた.しかし近年では,ユーザー企業を取り巻く環境が急速に変化してきており,開発フェーズ途中でのシステムに対する要望の変化が高頻度で発生するため,早期立ち上げと追加機能開発への柔軟な対応が同時に実現できる管理手法が求められている.本稿では,大規模アプリケーション開発プロジェクトにウォーターフォールとアジャイルを組み合わせた管理手法を適用した事例を取り上げ,納期管理および開発作業効率の面で得られた効果と課題,今後の展望について記述する.


新チームにおけるブレーンストーミング活性度とチーム内共感度の
モニタリング方法の検討

小関 菜月、 関研一


ビジネス創成に関するPBL授業において、新チーム結成後、新規事業テーマの検討を行うフェーズがある。ここでのチームブレストにおいて、チーム毎の調和に差があり、かつ、最終的なチームのPBL授業評価に繋がっている印象があった。この原因を,ブレスト時の活性度やチーム内の共感度から図れないかと考えた。本研究では、ビデオを用いた行動観察や、SNSによるキーワード頻度カウント等により、チーム内の調和度合を指標としてモニタリングする方法を検討した。提案するモニタリング方法によるブレスト時のチーム状態と各チームのPBL評価との相関について報告する。


リソース調達のためのEVM先行指標に関する検討

今野 裕紀、 今野裕紀、 小野浩之、 堀内俊幸、 下田篤


従来,EVMの先行指標として,プロジェクト完了時総予算を過去の生産効率などを用いて予測するEACが知られている. しかし,この指標はプロジェクトの途中時点の生産性を時点が離れた将来まで継続すると仮定しているなど,予測精度に改善の余地がある.また,予測結果が完了時の値であるために,近未来の管理にそのままでは活用できない問題もあった. そこで,我々はACを従来のコストとしてではなく将来必要となるリソースと見なし,近接した期間では生産性の変化が小さいとの仮定の下,近未来の必要リソースを見積る方法を提案した. 本発表では,前記従来研究において課題となっていた,予測期間の拡張を目的とした検討結果について報告する.具体的には,従来未活用であった,過去の情報,将来の計画情報など,予測期間を拡張するための検討案を比較した結果について述べる.


ソフトウェア開発組織における国際的知識移転の組織属性最適化
〜オフショア開発組織の二時点比較調査〜

後藤 哲郎


ソフトウェア開発の国際化が進む中で,コスト面・品質面でのメリットを出しつつ国際競争力のある技術力,商品力を高めていくことのできる新しい組織をいかに生み出すかは重要な課題である.近年の日本では人材不足等の理由からオフショア開発が拡大してきた.オフショア開発では国際的組織間の効果的・効率的な知識移転が必要である.知識移転を円滑に行えるかどうかは,その知識の送り手側と受け手側の組織がどのような属性を持っているかに依存する.そのためその属性を移転しやすいものに適応する取り組みが行われると考えられる.当論文では,開発相手国(受け手)側組織が,円滑に知識移転を進められるかを考えて組織を最適化させる取り組みを行ったかを組織属性に着目して二時点比較により明らかにする.


デジタルトランスフォーメーションで新規事業を創出するプロジェクトにおけるプロジェクトマネージャの人材像

坂井 稔


日本において,デジタルトランスフォーメーション(以降,DX)の活用は2017年から徐々に始まり,2018年は事例がさらに増加している.典型的な例を挙げると,①いわゆるデジタル技術を持つインターネット企業が一般企業と組み,先端デジタル技術を生かした新しい事業開発のプロジェクトを始める,②オープンイノベーションとアジャイルをベースにして,企業のDX活用を支援するインキュベーション企業が活動を始める,等が挙げられる.しかし,数多くの企業がDXを使った事業創出の重要性を理解しつつも,動き出すことが出来ない,あるいは,動き出しても推進が続かない実態も散見される.これらの日本企業が新しい事業創出をするにはDXにフォーカスしたプロジェクトマネジメント手法が求められる.本稿では,どんなスキルや資質やリーダーシップがDXプロマネに求められているかを,DXプロジェクトを分析し,特徴と課題を洗い出しながら論じる.


ポジティブ心理学の強み診断ツールを活用した効果的なチーム作り

坂上 慶子、 坂上慶子


昨今の情報システムの急速な発展と利用の拡大に照応し,困難度が増す一方の情報システム開発プロジェクトにおいて,プロジェクト・チームが一定以上のパフォーマンスを上げ続けるためには,メンバー一人ひとりが自己の強みを発揮し,チーム・ポテンシャルを引き出すような環境づくりを考慮することが急務である.ポジティブ心理学の強み診断ツール「VIA-IS」を用い,24の徳性から「特徴的な強み」とされる上位5の強みを,チームの中でどのように活かすことができるか考察する.強みは,実際に行動に移して初めて「強み」になり,使い過ぎると「弱み」にもなり兼ねない.チームでお互いを補い合うことで「強み」をさらに強めるための取組みを紹介する.


大学生の怠惰傾向がコーチングに及ぼす影響の分析

佐久間 脩、 武田 善行


コーチングはスポーツ分野やビジネス分野など多数の分野で研究されている.本研究では大学生の学業怠惰傾向測定し、なまけ傾向尺度の3因子とコーチングの関連を調査する.実験では、コーチング前になまけ傾向尺度と,コーチング前後に多面的感情状態尺度に回答をしてもらい,コーチング前後の多面的感情状態尺度の数値を比較する.実験結果となまけ傾向尺度との関連を調査することで,なまけ傾向尺度がコーチングに及ぼす影響を明らかにした.


プロジェクトマネージャが表現できない潜在リスクの見える化への取り組み

櫻井 大和


ビジネスマネジメントプロセスは商談発生から保守までのプロセスを規定したものである.その中でプロジェクト成功に向け重要な位置づけにあるのが,プロジェクト計画書であり,スケジュール,体制,リスク,課題などを記載して運用してきた.運用の過程で,プロジェクトマネージャが表現できない潜在リスクとして,次の2つの課題傾向が見えてきた.①計画書作成が形骸化し,プロジェクト成功への戦略不足,リスクヘッジ無しのプロジェクト運営をしている.②計画者本位で計画・実行し,ビジネス全体におけるミッションが曖昧となり,俯瞰するとプロジェクトが危機的な状況に陥っていることがある.今般,本課題への施策を実施し,改善効果が得られたため,その活動内容と今後の取り組みを報告する.


若手リーダーがチームマネジメントを行う際の期待と課題

迫 佳志


IT業界ではエンジニアの高齢化が進んでおり,これまで以上に若手の活躍がプロジェクトの成功に向けて重要な鍵となっている.本稿では, 実際のアプリケーション開発プロジェクトにおけるチームリーダーの経験を交えて,若手がリーダーロールにアサインされた際の期待されていることや課題を整理し,プロジェクトで活躍するためのポイントを考察する.


AI活用サービス開発における段階的検証手法の提案と適用

佐々木 克浩、 小堀 一雄、 大西 壮輝


AI技術の進歩により,AIを活用した新規サービス創出を試みる企業は飛躍的に増加している.AI活用サービスは,サービスの価値とAIの精度が直結しているため,高精度なAIが要求される.一方で,学習を要するAIを活用する場合,プロジェクト開始前にその精度を推測することが困難であるので,プロジェクト開始後にAIの精度を検証する必要がある.ここで,一般にAIの検証プロセスでは,時間をかけるに従い精度が向上する確率は高くなるが,精度向上には限界もあるがゆえ,時間はかけるも精度が向上しないという問題が発生する場合がある.そこで本稿では,AIの検証プロセスにおける時間の有効活用を目的とした段階的検証手法の提案と,実案件において8種のAIを3か月で検証した際の適用結果を述べる.


レガシーマイグレーション案件における低コスト化施策の取り組み事例

佐々木 美佳、 永井 浩二、 奥本 祐喜


現在、官公庁システムの開発の多くは一般競争入札であり、価格競争が一層厳しくなっている。当社が長年に渡り、保守を行っている官公庁システムの更改開発も同様に一般競争入札となった。本開発の受注は、当社の継続的な成長に不可欠であることから、価格競争に勝つために開発工数を通常より50%削減することで受注を獲得した。 厳しいコスト制約があるプロジェクトの実行過程において、様々な低コスト化施策に取り組んできたことに加え、新規参画した若手社員による更なる改善施策により一定の成果を獲得することが出来ている。 今回、これら取り組みにおける失敗や課題、成功理由等について分析・評価を行った。その結果を今後の低コスト開発に向けたインプットとなるよう提言するとともに、その成果を報告する。


不正侵入と対策

佐藤 直樹


情報セキュリティの事故・事件は会社の信用と会社の経営にも大きな影響を及ぼすので、経営陣が真剣に対処しなければならない重要な問題になってきている。今日のビジネス環境では、セキュリティマネジメントはビジネスマネジメントと同様に重要である。特に、企業機密とその管理状況に関して情報セキュリティ監査を実行することによって機密の情報漏えいや不正侵入に起因する事故を防止することが重要である。 監査の一法としてサーバー室等各部門を図式化することによって,各部門や部屋への通路で発生するリスクを事前に想定することにより,効率的な監査も検討した。しかしながら情報セキュリティ監査で不正侵入してくる侵入者を時系列的に察知し把握することは容易ではなく、一応のリスクは予知できるが、さらに不正侵入者の様に動的に動く対象をダイナミックにとらえる手法について論じる。


情報システムにおける保守運用作業の品質向上の新手法「アイデアソン型フレームワーク」の提案

佐藤 光、 徳永 達也、 長谷川 秀之、 水内 祥晃、 中島 雄作


近年、情報システムのネットワーク、サーバ等のプラットフォームレイヤにはクラウドを採用して統一化、一元化を追求することで、コスト低減を図ることが一般的となっている。これまで筆者らは、時系列化思考フレームワーク、SEARCHフレームワーク、SAFETYフレームワーク、ディベート型フレームワーク等の斬新な運用品質改善のためのフレームワークを開発してきた。しかし、運用ミスを真にゼロにするための新たなフレームワークを考案しなければならなかった。そこで、新規の斬新なアイデアを考え出すアイデアソン手法を適用して、保守運用作業の細部のリスクまで見逃さないフレームワークを考案した。


保守プロジェクトにおける本番作業品質向上の対策に関する考察

佐藤 雅子


保守プロジェクトを運用していくにあたって、移行作業やメンテナンス作業における本番作業の品質は顧客満足度に影響する重要な観点である。本論文では実際のプロジェクトで実施してきた本番作業品質向上に向けた対策とその作業結果を元に、どのような対策が効果的であったのかを考察する。


全社的リスク管理の視点を導入したチェックリストの提案と有効性の確認

佐藤 優至、 田隈広紀、 下田篤


プロジェクトリスクマネジメント計画に全社的・長期的リスクを補完するチェックリスト及びその適用方法を提案する。まず「ERM実施体制チェックリスト」等を基に47件の全社的リスクマネジメントの実施項目を抽出した。次にその全項目に対し、プロジェクトにおける「重要度」と「検討度」を実務経験者8名から収集した。そして「重要」でありながら「検討されにくい」項目と見なされたものを、「ERM的視点から補完するべきプロジェクトリスク項目」として抽出し、リスクマネジメント計画時に利用するチェックリストを作成した。さらに過去の大型システムトラブルを基に、このチェックリストの適用効果を事例研究法にて考察した。


IT受注プロジェクトにおいてウォーターフォール型開発から、アジャイル型開発へ移行した方法と考慮点

佐藤 美一


ウォーターフォール型の開発手法で進めてきたプロジェクトが、開発フェーズの終了とともに体制の縮小が図られた。 体制の縮小に伴いチームごと縦割りの開発体制、スキル保持者の離任による顧客に対するプレゼンスの低下などの問題が発生した。 この状況を改善するためアジャイル開発手法のひとつであるスクラムを導入した。 本研究ではスクラムを導入した経験を踏まえ、スクラム導入、運営の方法と考慮点、およびスクラムを導入した効果について論じる。


PBLでのチーム成立期における適切なコミュニケ―ションに関する一考察

三瓶 あすか、 下村道夫


Project Based Learning(以下,PBL)とは複数人で取り組むプロジェクト型学習であり,高い教育効果が得られることから教育機関等で注目されている。一般に,PBLでのチーム構成は,初対面,知り合いなどの様々な親密度をもつメンバーであるため,メンバー構成によってはコミュニケーションが不十分となったり,一部のメンバーだけで密にコミュニケーションを取りすぎてしまったりといった問題が生じ得る.このような問題を抱えたままプロジェクトが進行すると,進捗が悪くなったり,成果物の質が低下したりすることに繋がる.本稿ではチームを構成するメンバーの親密度に応じた適切なコミュニケーションのあり方について考察し,留意すべきコミュニケーションの方法に関する形式知をデシジョンテーブルとして提案する.


RPAを用いた非定型業務の改善活動に関する一事例

塩月 英美、 杉本泰弘、 吉末裕利志、 田代修一、 中島雄作


情報システムの保守運用において,TCO(Total Cost of Ownership)削減は永遠のテーマである. 一方,RPA(Robotic Process Automation)を用いた業務効率化の取り組みが,近年,非常に盛んであり,それらの多くは定型業務に着目した事例である.筆者らの担当する会計システムの保守運用業務の特徴は,ユーザからの個別の作業依頼が多く,それらは非定型業務であることである.QCDの面で多くの問題を抱えていた.そこで筆者らは,通例では不向きと言われているRPAを用いて,これら非定型業務の改善を行った.


シナリオ型PM育成PBLの学習効果

重岩 洋介、 飯塚亨、 奥川翔平、 長島有希子、 朴炳旭、 平山英希、 広川敬祐


東京都の公立大学である産業技術大学院大学は専門職大学院として企業が必要としている人材の育成に取り組んでおり,2年次には実社会で役立つスキルやノウハウの修得を目的にPBL(Project Based Learning)型教育を導入している. 「プロジェクトマネジメント・コンピテンシーの向上」を目的としている酒森PBLでは,前期はウォーターフォール型,アジャイル型という異なる開発手法を用いたシステム開発プロジェクトを題材にしたオリジナル教材やPMBOKをベースにした知識体系ツールを活用した演習,後期では新たな目標・課題を設定し,その達成に向けて取り組んでいる. 本発表では,前述のオリジナル教材がどのようにプロジェクトマネジメント・コンピテンシーの向上のために活用されているかを述べる.


マイグレーションにおける品質保証計画

重見 憲一、 中川 光正


マイグレーションの品質保証についての参考文献のほとんどは、レガシーマイグレーションをベースに記載されたものであり、品質保証の考え方は、システム設計書に対してマイグレーション結果を現新比較にて検証するものである。したがって、テスト仕様書はシステム設計書に対して作成される形になるため、 テスト網羅性は重要なファクターとなりテスト工数は新規開発と同等の工数を要する。 では、レガシーマイグレーション以外も同じ考え方、工数をかける必要があるかもしくは用意できるかというとそうではない場合がある。しかしながら品質保証計画においての考え方を整理した参考文献はみあたらない。本論文ではレガシーマイグレーション以外の品質保証について一例を示す。


複数金融規制・複数金融当局・複数ベンダー体制により複雑化したプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネジメント手法の考察

七田 和典


近年,大手金融機関は同時に複数の金融規制や金融当局要請に対応する必要があり,それぞれ異なるマイルストーンが設定された個別プロジェクトが乱立し,複数ベンダー体制かつ相互に依存関係のあるタスクが発生するなどプロジェクトが複雑化している.本稿では大手金融機関2社の実プロジェクト対応を事例に複数金融規制・複数金融当局・複数ベンダー体制により複雑化したプロジェクトを成功裡なサービスインに導いたプロジェクトマネジメント手法の有効性について考察する.


「メンタルヘルス研究会 10年間の歩み」報告

柴田 浩太郎


2009年に活動を開始したメンタルヘルス研究会は,今年で10周年を迎えることとなった.この10年の活動の中で,100回の定例勉強会,9回のワークショップ(熊本,札幌,東京,ソウル,大阪,沖縄,千葉,金沢,岡山)を開催させて頂き,たくさんの方々とともに「プロジェクトにおけるメンタルヘルス不調の予防対策について」議論を重ねることができた.今回この集大成として,これまでの活動内容と研究成果を報告するとともに,次の10年に向けた活動方針について報告する.


システム基盤運用におけるステークホルダーマネジメント

渋谷 花梨、 中村 将、 野林 修一


プロジェクトを成功へ導くために,ステークホルダーの協力/支援は欠かせない項目のひとつである.ステークホルダーからの協力を得られるような良好な関係を保つために,ステークホルダーへの働きかけが必要となる.一昨年からの2年間,約700台ものサーバを抱える金融機関システム基盤の運用/保守を行う中で,顧客とのステークホルダーマネジメントを行い,プロジェクトや顧客に対するエンゲージメントを高めることができた.結果として,入札案件であった次期システム構築案件を獲得することができた.本稿では,ステークホルダーマネジメントを行うにあたり取り組んだことやポイントを報告する.


持続的な価値創造のためのレディネスの研究

下坂 光、 北 寿郎


キャプラン&ノートンが提唱したStrategic Readiness(戦略実行のレディネス)は、戦略実行に必要な組織内部の無形資産が準備万端整っているかを測定する尺度である。本研究では、この戦略実行のレディネスを拡張し、持続的な価値創造に必要な資源や組織能力を、21社の価値創造事例を用いて分析する。さらに競争環境や事業戦略によって、準備万端整える必要のある資源や組織能力が異なることを示し、競争環境や事業戦略に沿って組織がどのように変化すれば良いかを考察する。あわせて日々変化する環境下でのプロジェクトの成功のために、組織がどのような資源や組織能力を整えておくべきかを本研究の最後に提案する。


パフォーマンス向上のためのEVMの活用事例のご紹介

神野 和司


プロジェクトと個人のパフォーマンスを向上させるために,EVMの新しい活用方法を提案する.プロジェクトメンバのスキルとパフォーマンスの向上はプロジェクトを通して得られることが多い.そこで,パフォーマンスの強化を目的にモニタリングツールを試作し実際のプロジェクトで実践した.本稿では,当該ツールが提供する各種EVMグラフを中心に活用事例を紹介する.また,実装計画中のEVMグラフなどに関する今後の展望について述べる.


プロジェクトマネジメント意思決定に関する行動経済学アプローチの展望

菅谷 博文、 野間口 隆郎、 伊藤 守、 折方 孝雄、 吉田 知加、 貝増 匡俊


 プロジェクトの成功率を高めるため,各企業においてはモノづくりのプロセスへの改善と共に,プロジェクトマネジメントに対しPMBOKなどの適用により組織的マネジメント力強化や,PMの育成などの対策を行っている. しかし,プロジェクトの成功率向上について真の改善はなされていない. プロジェクトの成否には, PMの意思決定が大きく影響すると考える. PMは,プロジェクトという不確実性の高い状況において,プロジェクト推進のための意思決定を迫られるからである.   本研究では,この意思決定について,行動経済学の視点でとらえることの有効性を検証するため,サンクコスト効果などによる認知バイアスをその代表的な理論として適応を試みた.その結果,行動経済学の理論を適応できる可能性が示された.


スクラムチームに対する客観的且つ属人性の低い評価手法の提案

杉浦 由季、 小堀 一雄、 大西 壮輝


 昨今、日本のエンタープライズ領域でもスクラム開発の普及が進んでいる。それに伴い、国内のスクラム開発人材を育成する取り組みが盛んになっている。  アジャイル開発人材の育成では、組織やプロジェクトチームがウォータフォール開発とは異なる思想や行動を理解し習得する必要がある。この際、習得の度合いを計測したいというニーズがあるが、計測する方法が確立されておらず、スクラム開発の指導者が知識と経験に基づいて評価をしているのが現状である。この際、指導者の思想や熟練度によって評価に差が生じやすいため、プロジェクトチームや指導者が複数活動する組織で評価の一貫性を保つ事が課題となっている。  そこで本稿では、スクラム開発における定量的な管理メトリクス値や事実に基づく客観的且つ属人性の低いスクラムチームの評価方法を提案する。そして、ある実際のスクラム開発におけるスクラムチームの習得度合いに関して本提案手法で評価した結果と、複数のスクラムコーチによる評価結果を比較することで、提案する方法の有効性を検証する。


トラブルプロジェクトの早期発見にむけた予兆管理

杉本 吉宏


オフショアリソースを活用した開発,システムユーザ・要件の多様化,さらには顧客のコスト意識の向上などの背景も加わり,開発プロジェクト自体が複雑化している傾向がある.そのため,開発プロジェクトにおいて,特にコミュニケーションパスが複雑化し,成功に導くことの難易度が向上している.本論文では,過去自身が直面した複数のトラブルプロジェクトの経験をもとに,特徴を分析,未然に防ぐためのフレームワークを提案する.


高信頼性システム開発プロジェクトにおけるリスク・マネジメント

鈴木 二郎


システム開発プロジェクト成功の鍵は,超上流工程(PMBOK Guide[1]上のプロジェクトマネジメント・プロセス群における立ち上げプロセス群ならびに計画プロセス群)で如何に実現性の高い計画を策定できるかに掛かっている. 社会公共性が高く高信頼性が要求されるシステムでは,稼働後の運用においてエンドユーザが安心してシステムを使用できてこそ,ステークホルダーの満足,信頼を勝ち取ることができ,更なる将来への可能性を生み出すことができると言える.高信頼性システムは経年変化への対応や顧客ビジネスの拡大を目的に幾度と稼働中システムでのエンハンス開発が発生する.そして,その都度立ち上がる開発プロジェクトにおいて要求事項を達成する上で,多くの異なるリスクが発生し,そのリスクの顕在化を最小限に抑える仕組みと工夫が必要となる.本稿では,リスク・マネジメントを重視した,高信頼性システムのエンハンス開発の事例を報告し,リスク計画およびリスク・コントロールの有効性について検証する.


PPPマネジメントの一般化モデルの考察

関口 明彦、 関 哲朗、 吉田 知加


プロジェクト,プログラム,ポートフォリオマネージメント(PPPM)の導入は,従来の単一プロジェクトによる局所的,個別的な目標の達成から,複数のプロジェクトとオペレーションの相互依存作用の下で,これらの完了から遅延を伴って実現されるベネフィットの最大化に成功確保の意味を転換させている.一方で,PPPMの相互依存関係や構造については,一般化,構造化されていない.結果,PPPMの適正な運用の指針が得らえないばかりか,ベネフィット最大化の仕組みについても明らかにされていない.本研究では,PPPMの一般化モデルを示すとともに,各階層の目的,目標の根拠と適切な変更の実現に向けた相互依存関係を提示し,ベネフィット最大化の構造を明らかにした.これにより,PPPMの普及と実用化の基礎を示すことができた.


PBLを促進するためのリーダシップ育成法の検討

関根 晴矢、 武田善行


近年,課題発見および解決のための批判的思考力や判断力を向上させ,チームワークやリーダシップのような汎用的能力を育成するための方法としてPBL型授業の導入が盛んに行われている.本研究では,PBLにおいて見られるリーダシップの傾向を明らかにし,強化すべき課題を発見することを目的とする.システム開発プロジェクトを行ったメンバを対象に,プロジェクトリーダに関する評価を行った.結果として,技術課題解決でのリーダシップが高く評価されること,自己の作業に集中するあまり他人の緊張度やモチベーションのコントロールが不十分なことを明らかにした.


オープンソースプロジェクトに対する開発工数予測のための確率微分方程式モデルとその応用

曽根 寛喜、 田村 慶信、 山田 茂


ソフトウェアプロジェクトの開発工数を推定することは,進捗状況を管理する上で非常に重要となる.特に,オープンソースプロジェクトにおいては,開発者のスキルレベルの違いや開発環境などの要因が,オープンソースソフトウェア(Open Source Software,以下 OSSと略す)のデバッグプロセスと品質へ影響を与えることが多く,OSS開発に必要とされる投入開発工数は,時間の経過とともに複雑に変動していくものと考えられる.本研究では,Wiener過程に基づく開発工数予測モデルからコスト効率指数(Cost Performance Index,以下 CPIと略す)および変動係数を提案し,CPIおよび変動係数からプロジェクトの安定性について考察する.


テストデータ生成のための業務制約定義支援方法の提案

空林 徹朗、 内田吉宣、 鹿糠秀行


金融業務向けなど高い信頼性が求められる開発プロジェクトでは,品質確保のためにテスト工数が大きいという課題がある.テスト工数の削減技術として,データベースを有するシステムをテストするためのテストデータをデータベース設計書等から自動生成するツールがある.しかし,顧客業務仕様を反映したデータ定義(業務制約)は自動生成の元となる情報が無く,述語論理式等の専門知識が必要な機能を用いて別途定義する必要があった.本研究では,業務制約の定義作業の効率化を目的に,定義作業の一部を自動化すると共に有識者でなくても定義可能な支援方法を提案する.テストデータ生成までの作業が効率化され,テスト工数を削減できると考える.


クラウドファースト案件におけるフルスタック型パーソナルプロジェクトマネジメント事例

高橋 美里、 宮本 雄二、 遠藤 幸二、 山内 貴弘


クラウドを前提とした,いわゆるクラウドファースト案件では従来型のシステム構築プロジェクトにはないスピードが求められている. すなわち提案, 設計, 構築, ディプロイといった工程にアジリティの高い活動が求められ, これら活動実施にあたっては,多数メンバーによる分業体制というより, 少人数もしくは個人によるフルスタック型のプロジェクトマネジメントが必要になっている. 本論文では全国規模でクラウドを活用する外食産業のお客様に対して, 若手技術者による提案からディプロイまでの一気通貫のフルスタック型のパーソナルプロジェクトマネジメント事例を紹介するとともに, それを支える組織のあるべき仕組みについて検討するものである.


在宅ワーク社員のタスク予実管理による要員マネジメントの効果

高橋 康之、 石川 裕治、 津川 拓也


近年の社会的な働き方改革の推進に伴い、在宅ワークを行う会社員が増加傾向にある。 その際、メンバー個々の業務管理を適正に行うことが必要であり、業務の見える化を進めるため、日々のタスクとその所要時間の予実管理を行うためのフォーマットを作成し、業務開始時・終了時にメンバー間で共有を図った。予実時間の記録管理を継続して行うことにより各タスクの予定時間の見積精度向上や、生産性向上が達成できるという仮説を立て、蓄積された予実データの傾向や乖離状況を分析することにより仮説検証を行った。本成果を展開することで、常に全メンバーと対面していない状況においても要員のマネジメントを適切に行うことができることを示す。


OLAを軸にした情報システム運用マネジメントの一提案

竹内 陽一、 今村公嗣、 岩井俊英、 篠原有紀、 三橋彰浩、 藤原俊紀、 吉田正倫、 中島雄作


筆者ら運用チームリーダは,情報システムの保守運用における,サービス提供者の内部目標(OLA(Operational Level Agreement))を,自己決定理論に基づいて作成した.それを軸にして,配下のメンバが背伸びせずに気軽に取り組める,小集団の身の丈にあった継続的サービス改善活動を興したかった.この活動をPDCAサイクルになぞらえ,各段階でどのようなノウハウがあるのか考察した.さらに一部システム運用の現場で実践を始め,一定の成果を出しているので,本稿にて紹介する.


テキストマイニングを用いたステークホルダの欲求レベルの抽出
-欲求連鎖分析を用いたステークホルダエンゲージメントマネジメント支援-

竹山 侑輝、 牧野友祐、 加藤和彦


 ステークホルダマネジメントはプロジェクトの成否に大きく関わる重要なマネジメントである.しかし,現状では,ステークホルダマネジメントに寄与する実用的なツールや方法が少ない.前報では,欲求連鎖分析を用いたステークホルダエンゲージメントマネジメント支援方法を提案し,ステークホルダの欲求を可視化した.  本報では,ステークホルダの参画意識を把握及び促進するためにステークホルダの欲求レベルを定義しテキストマイニングを用いて,その抽出を行った.更に前報で提案した支援方法に適用し可視化を試みた.


上位プロジェクトマネージャによるプロジェクトマネージャの候補生育成について

田中 隆宏


プロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネージャを育成するためには,業務知識を付けた上で,業務経験を積ませながら育成していくことが必要不可欠である. プロジェクトマネージャは,1つの大規模プロジェクトを長期間継続して経験していく場合や,多数の小規模プロジェクトを並行して担当していく場合など様々である.その中で,当発表では,多数の小規模プロジェクトを並行して実施した場合について,実際のプロジェクト事例を挙げ,効果的なチームの体制作り,メンバー育成やメンバーのモチベーション向上への取り組みについても交えながら,どのようにプロジェクトマネジャを育成していくかの提言を行っていく.


DX時代における金融機関のシステム開発PMに求められる能力に関する考察

田中 雄二


 デジタルトランスフォーメーション(DX)という用語が広く浸透し始め、金融機関でもFintech業者を取り込んだDXを狙った案件(DX案件)のプロジェクトが増加している。それらのDX案件をマネジメントするプロジェクトマネージャは、単にデジタル技術そのものに関する技術や知識を要求されるだけではなく、DX案件がPM知識エリアに与える影響を理解してマネジメントする能力が求められる。  DX案件がプロジェクトマネジメントへ与える影響を予測し、DX案件をマネジメントする上でPMに求められる能力を考察・整理し、特にステークホルダ管理に注目し実際の事例と対応例を紹介する。


テレワークとニアショア開発を活用した働き方改革と地方創生への期待

千田 貴浩、 千田貴浩


昨今,労働人口減少に伴い,働き方改革が急務となっているが,AI(Artificial Intelligence)やRPA(Robotic Process Automation)を活用した労働生産性向上に向けた取り組みは見られるものの,そもそもの働き手の増加を促す取り組みが芳しくない.働きやすい環境の整備には,多くの時間やコストを必要とするケースが多く,導入を困難としているからである.働き場所や時間の制約を受けず,柔軟な働き方ができるテレワークや,地方で生活しながらシステム開発を遂行できるニアショア開発は,新たな働き手の創出に有用であり,今後の発展が多いに期待される。本稿では,ICTを活用したテレワークとニアショア開発のプロジェクト事例を紹介するとともに,働き方改革通じた地方創生への期待について述べる.


プロジェクトマネージャ育成の取組について
― PM交流会の推進 ―

辻川 直輝


弊社はIT系のプロジェクトの企画,提案,設計・構築(ソフト開発,サーバーやネットワークの設計・構築,ケーブル配線工事,建設工事等),運用,保守までITシステムをトータルにサポートしている.プロジェクトマネージャ(PM)の必要性は謳われているが,各現場でプロジェクトの成り立ちが異なるため,現場のリーダークラスに具体的なPM像をわかり易く展開できないという課題がある.また,現場の実態についてPMが自由に相談できる機会が十分ではない.そこで, 既知を増やし相互に現状を意見交換すること,第一人称で考えPM相互の議論を深めることを目標として,PMの交流の場を企画した.知識を深めるための幹部講話,ディスカッションを深めるための問題事例と課題対応,ワールドカフェの試行,振り返りの充実に積極的に取り組んでいる.ディスカッションの質や受講者の満足感が向上するように,課題認識を持って改善を図っている.PM育成のために2016年から推進してきた『PM交流会』の活動状況及び今後の取組について、途中経過を2018年春に報告している.本稿では,その後の進展や,2018年度に入ってからの新たな試みについて状況,課題について報告する.


フューチャーセンターを活用したITベンダーとの協業の促進

角田 仁、 角田仁


近年,システム開発プロジェクトにおいて,ステークホルダー・マネジメントの重要性が増している.ステークホルダーと良好な関係を維持して円滑にプロジェクトを遂行していけるか否かで,プロジェクトの成否を分けることも多い.一方,プロジェクトの現場においては,各メンバーのコミュニケーション能力など個人の力量に頼っているのが現状である.その解決策の一つとして,東京海上日動システムズではフューチャーセンターを組織的に利用している.同社ではシステム開発プロジェクトを実施する際に同社とITベンダーで協業する場合が多いが,立場が異なるために互いの信頼を得ることが難しく,そのためにフューチャーセンターを活用している.同社のあるプロジェクトでアンケート調査を実施したところ,フューチャーセンターの活用により両者の距離が縮まると回答した人が95%に上った。また、フューチャーセンターに適した目的としては一体感の醸成や暗黙知の共有といった回答が多く,それに適した開発工程としてはプロジェクト実施前や実施後との回答が多かった.


PMO組織設計運営およびプロセス改善活動に関する事例報告と知見
― APAC圏事業会社を事例として―

中島 康二郎


APAC圏は世界の中でも最も急成長している市場のひとつであり,多くの日系IT企業も域内各国に現地法人等を設立し,市場に参入しようとしている.その中で,各国のIT関連プロジェクトやプロダクト供給を確固たるものとするために,現地法人等社内にPMO組織を設立することは有効な施策の一つと考えられる.本稿では,インドネシア事業会社におけるPMO組織の立ち上げと運営の中での事例と得られた知見について報告する.ソフトウェアプロセス改善実施における初期アプローチ,方針,運営時の実際的な要領,また,様々な文化的背景を持つ従業員に対する教育といった観点で整理を行った.結論として,人事制度を含む会社組織の全体方針との連携,インドネシアにおける文化的要素の考慮,などの重要性を指摘する.


初年次に受講した専門科目としてのプロジェクト実践 ―2年間のプロジェクト活動は教育効果があるのか―

長町 紗希


京都光華女子大学キャリア形成学部では、プロジェクトマネジメントを学び、実践するプロジェクト科目が1年次、2年次必修で開講されている。1年次では全員が同じテーマ(学園祭)でプロジェクトマネジメントを学び、チーム協働力を体験した。2年次では、4つのテーマから自分の関心のあるテーマを選択し、企業と連携したプロジェクトを実践した。今回の発表では、1年次、2年次で学修したプロジェクトマネジメントの実践事例を紹介し、1年次と2年次での相違点、2年次で成長を実感した点を報告する。後期には、2年前期で実践した活動を客観的に評価し、改善点を明確にする計画である。


チームのモチベーションを向上させるためのマネジメント

仁科 伸隆


多様化・複雑化するプロジェクトの中で,チームメンバーのモチベーションの低下が直接プロジェクトの品質低下に繋がる事例を経験してきた.チームメンバーのモチベーションの維持は,プロジェクトの成功に向けて重要な鍵となっている.本著では,モチベーションが低下する原因を分析し,プロジェクトマネジャーとして実施しているモチベーション・マネジメントの内容を紹介する.


産官学連携プロジェクト実践事例 ―京都三条会商店街とファミリー層を中心とした住民交流―

野口 夏奈


京都市と(公財)大学コンソーシアム京都では、大学・学生と地域が『コラボ』して京都のまちづくりや地域の活性化に取り組む企画・事業を支援する「大学地域連携創造・支援事業(愛称:学まちコラボ事業)」を実施している。また、京都光華女子大学キャリア形成学部では、1年次、2年次必修で全員がプロジェクトマネジメントを学修する。今回の発表では、京都光華女子大学が京都三条会商店街との連携で「学まちコラボ事業」に採択されたプロジェクト活動の具体例を紹介し、イベントでの広報面、さらに、これらの活動を通して身についた力やプロジェクトマネジメント知識の応用について報告する。  


学生視点でプロジェクトマネジメントを学ぶ意義 ―3年間の学生生活と就職活動―

野田 帆南


京都光華女子大学キャリア形成学部では、プロジェクト科目を1年次、2年次で必修のカリキュラムとし、プロジェクトを実践することによりプロジェクトマネジメントを学修する。1年次では、学生にとって身近な学園祭でパフォーマンスの実現をテーマに、パフォーマンスのプロを目指す外部団体との連携などを通してプロジェクトマネジメントを学んだ。2年次では、企業と連携したプロジェクトを実践することで、社会人が求めるマナーや成果物の品質レベルの高さを実感した。これらの経験で得た教訓、身についた知識やスキルを自分なりに分析し、3年次以降の学生生活への影響や後輩指導、就職活動でどう活かされたかを報告するとともに、学生視点でのプロジェクトマネジメントを学ぶ必要性および重要性について考察する。


営業部門向けプロジェクトマネジメント研修の実施成果について

野元 拓也


システム開発技術者にとってプロジェクトマネジメントの重要性はかなり浸透してきた.一方,営業部門にとってはプロジェクトマネジメントの認知度は未だ十分ではない.その様な状況下で,プロジェクトの受注活動の段階から高リスクの受注案件が増加している.それらのプロジェクトはシステム構築が開始すると,リスクが顕在化しトラブルプロジェクトとなるケースが多い.その原因の一つは,営業部門のメンバがプロジェクトマネジメント,特にリスクマネジメントやステークホルダとのコミュニケーションマネジメントに対して十分理解できていない事にあると想定した.その為,本対応策として営業部門メンバを対象としたプロジェクトマネジメント研修を企画し実施した.しかし実際に本研修を実施したところ,受講者の多くが問題意識を持ち,質の高い受注を目指していることも分かった.それに応える為,見直しと改善を繰り返した.本論文では営業部門向けに実施した本研修について,その実施概要,および実施にあたって工夫した点と実施後の受講者の反応について論じる.また本実施結果を踏まえて,今後の改善点にも言及する.


システム開発における生産性評価の一例とQCDの観点を含めた生産性評価方法の提言

伴 和哉


「働き方改革」に記載の労働生産性の向上や人工知能,ロボティクスに代表される作業の自動化による生産性向上など,“生産性”という言葉に注目が集まっている.システム開発における生産性評価も行われているが、評価が難しいケースもあり,また,生産性評価の際に陥るジレンマも存在している.システム開発のテスト自動化プロジェクトを一例とし生産性評価を試みるとともに,QCDの観点から生産性を評価する方法について考察する.


女子大生が学ぶプロジェクトマネジメントが与える影響と正課外活動での活用

彦惣 唯衣


京都光華女子大学キャリア形成学部では、プロジェクトマネジメントを学び、実践するプロジェクト科目が1年次、2年次必修で開講されている。1年次では、学生にとって身近な学園祭への模擬店出店をテーマに、チーム協働力を体験した。今回の発表では、1年次で学修したプロジェクトマネジメントの具体例を報告する。また、同時進行で取り組んできた「オープンキャンパス学生スタッフ活動」では、2年生で企画リーダーとなり授業で学んだプロジェクトマネジメントの知識を活用している。これらの活動を通して、身についた力やスキルについて、またこれからの目標について報告する。


CSV (共有価値の創造) 実現に向けたソーシャル・プロジェクトマネジメント手法の活用

平井 均、 高橋 正憲


企業を取り巻く環境は厳しさを増し、マーケットの急激な変化に適応できず、市場から撤退せざるを得ない事例も発生している。一方、高齢社会白書(内閣府、2017)によると、日本では、少子高齢化が進み、65歳以上の高齢者が2025年に全人口の30%を超えると推計されており、生産人口の減少による経済の減退が懸念されている。持続可能な成長のためには、絶え間ない新規事業開発や起業を促進することが必須である。PorterとKramer(2011)は、経済価値と社会価値を同時実現するCSV(共有価値の創造) こそが、競争に勝ち抜くために不可欠なモデルだと提唱した。本稿では、社会課題を解決するビジネスの創出やスタートアップ活動において、CSV実現の成功率を高めるためのソーシャル・プロジェクトマネジメント手法の有効性について論じる。


ボードゲームによる実践向けプロジェクトマネージャ訓練への取り組み

広瀬 優、 広瀬優、 三原克史、 岡田久子、 関純、 新野毅、 内田吉宣


実践現場で活躍できるプロマネ人財を育成・強化するためは,プロジェクトで起こり得る事象に対して迅速かつ的確に意思決定を行うための感性(暗黙知)を磨く必要がある.この能力は、方法論を主体とする知識体系(形式知)の習得のみでは養うことができず,実践訓練による醸成が必須であるが,その模擬実践訓練の場としてボードゲームを開発した.本ゲームでは,カードを駆使して「偶発的かつ不明瞭な問題」を「制限されたリソース(持ち札,メンバー)」で最善の解決手段を導き出す,また,起こり得る問題を想起してリソース(持ち札)を有効活用する,といったプロジェクトマネジメントスキルの訓練を可能にしている.


地方都市における商店街の活性化と百貨店の役割プロジェクトについて

古井 幹也


近年、商店街の衰退が激しい。特に地方における商店街はインターネットショッピングの台頭や郊外型大型店舗、コンビニエンスストアなどとの競争により衰退し、いわゆるシャッター通りと化している。行政も地方活性化の名のもと様々な施策がなされてきたが、十分と言える状態にはなってはいない。また、百貨店は商店街とともに街の発展とともに寄与し、その街の顔とも言える存在になっている。しかし、その百貨店もここ数年において店舗の撤退や廃業などが続き、今後は、商店街と同様に衰退の道を辿っていくだろうと言わざるをえない。しかし、一方では現在においても集客、購買力だけにとどまらず、街のランドマークとなっている地域が存在する。百貨店が単なる商業施設としてではなく、その街にとってくつろぎの場所や空間を提供しつつ、ある種の誇りとなっている。その理由としては、百貨店がその街の司令塔もしくはセンターとなり商店街とともに街をデザインする役割も備えてきたことが考えられる。本研究においては、商店街の発展における百貨店の戦略を示すことで百貨店の存在意義と役割を明らかにしていきたい。


監査部による“問題プロジェクト”に対する取り組み
― PMOの“問題プロジェクト”への活動に関する監査 ―

北條 武、 加藤 英明、 平松 省史


当社の“問題プロジェクト”への対応は,品質保証部 PMOを中心に長年継続して取り組んでいる.また,当社の内部統制委員会で決定される重点リスクの一つにも,この“問題プロジェクト”が複数年にわたって挙げられており,品質保証部 PMOを中心とした“問題プロジェクト”への対応は,全社リスクマネジメントの一環として位置づけられる.全社リスクマネジメントにおける取り組みに対して,監査部は独立した立場でその活動の効果を客観的に評価し,必要に応じて指摘や助言を行っており, “問題プロジェクト”への活動に対しても同様に行ってきた.本稿は,品質保証部 PMOを中心に取り組んでいる,“問題プロジェクト”に対する活動を監査部が評価する取り組みについて述べる.


海外買収会社における品質プロセス適用推進活動の効果と課題

馬 超、 李ていてい、 栗林晴男、 浜田和也


日立製作所のシステム&サービスビジネス統括本部は海外事業拡大に伴い,日立グローバル品質保証体制の確立,及び各海外法人による品質保証活動の自立実施を目的に,2015年より品質保証関連規約を全海外法人に展開している.海外法人を取り巻くビジネス環境を考慮し,強みを殺さないようにテーラリングしながら品質保証関連規約の展開を推進している.品質保証関連規約は,品質保証体制の確立,ガバナンス強化,品質マインド醸成,品質管理プロセス適用等の各種施策から構成されている.東南アジア地域の買収会社においては,各種施策を実行することで現地の品質保証活動の成熟度を年々高めることができた.本稿では,上記会社の事例を取り上げ,適用した施策とその効果および今後の課題について述べる.


リーダーの自信に影響される成功感の差異に関する研究

巻嶋 一、 武田善行


これまでリーダーシップに関する様々な研究がなされてきた.その多くはリーダー行動の有用性,すなわちその効果に関するものであった.本研究では,リーダー行動が観測された際のリーダーの自信と,それに応じた成功感を抽出し検討した.リーダーの自信を,リーダーとして必要と考えられる役割行動を適宜,確実に実行できたと自負している度合いと定義する. PMを経験したことのある学生を対象に質問紙調査を行い,因子分析を実施する.それにより,自信を高く持つ者ほど,高い成果を達成する局面を確認する.


ソフトウェアテストの実践的な教育プログラムの開発事例

町田 欣史、 浅原 舜平、 熊谷 一生、 秋山 晴美、 内海 卓哉


ソフトウェアテストのスキルを向上させる施策の一つとして、長年にわたり研修を開催してきた。研修後に受講者の理解度を測る方法として、簡単な筆記試験を解いてもらい、その点数で評価することがあった。しかし、この評価方法では、単に記憶していれば高得点が取れてしまうため、学んだことを実践できるかどうかまでは測れなかった。そこで、ソフトウェアテストの研修後に簡単なアプリケーションを開発する演習を行い、その中でテストケースの作成やテストツールを利用したテスト実行を実践することを試みた。その結果、実践力や応用力が身についたかどうかを的確に評価でき、さらに研修での教え方に問題がある点が明確になった。


ISMS認証取得後の維持・改善の効果的実践方法について

松川 正


当社は,新たな成長を目指して国内外の競合に遅れを取ることなく互角に戦っていくため,生産性・品質・顧客満足度の向上を掲げ,国際水準に適合したIT部門となるべく,ITガバナンス強化に着手した.その施策の一つとして,ISMS認証の取得に向けて2015年10月に活動を開始した.ISMS認証については,認証取得までの過程にも考慮点は多々あるが,認証取得後に組織内に情報セキュリティに関わる動作を定着させ,また,社員のモチベーションを維持し続けることも肝要な点と考える.そこで本稿では2016年11月に認証を取得した当社での実例をもとに,認証取得後の2年間の定着活動に大きな効果を発揮した2つの観点を取り上げ,ISMS認証取得後の定着活動の確実な促進の一助となる情報共有を目的に報告を行う.具体的には「経営層の関与」及び規程類を日常のセキュリティ動作レベルまで詳細化した「ISMSルールブック」について,その具体的な施策と効果について述べる.


リーダー人財育成における白熱メソッドについて

溝部 国男


持続的な企業成長の実現に向けては、管理職を中心とした現職リーダーに加え、課長代理等の中堅層を次世代リーダーとして早期育成することが課題である。弊社では、次世代リーダーとはスキルとマインドを兼ね備えた人財と定義し、早期育成にあたっては一方的な知識詰め込みではなく、育成する側・される側の双方向の白熱した議論や対話を伴うやり方が有効ではないかとの仮説を立てた。このため、次世代リーダー育成を目的に「データ関西白熱教室」という場を立上げ、職種別の専門性を考慮し、「開発系スキル講座」「営業系スキル講座」「マインド講座」の3講座を開講した。各講座では、リーダーとして押さえるべき普遍的な原理・原則の伝授をはじめ、講師陣が長年の経験を通じて培った知見やノウハウの共有や現場事例を使ったディスカッションなど独自の工夫を凝らした。今回、5年目を迎えた「データ関西白熱教室」の取り組みと今後の展開について述べる。


ボトムアップ改善活動につながるOLAの一提案
- SLAが未整備なプロジェクトで苦労する運用リーダへの提言 -

三橋 彰浩、 今村公嗣、 岩井俊英、 篠原有紀、 竹内陽一、 藤原俊紀、 吉田正倫 、 中島雄作


情報システムの保守運用において,サービス提供者とその利用者との間での合意事項をSLA(Service Level Agreement)として文書化し,サービス提供者の組織内ではOLA(Operational Level Agreement)として文書化し,ITサービスのモニタリングと継続的な改善活動につなげることは理想である.しかし現実には普及が進んでいない.そこで著者らは,自己決定理論を取り入れてボトムアップの改善活動につながるようなOLAを作成した.本稿では,ボトムアップ改善活動につながるOLAの一提案について述べる.


アプリケーション保守開発プロジェクトにおける継続的な生産性向上事例

皆川 恵一


アプリケーションの保守開発プロジェクトはコストプレッシャーに晒されやすく,その結果として生産性向上が強く求められる.一方で,アプリケーションの保守開発プロジェクトはシステムのライフサイクルの限り継続して実施されるため,既に一定の改善を果たしているケースにおいてはプロジェクト側の改善余地や改善活動実施の余力が失われ,繰り返し要求される期待に沿うことが難しくなっている.そういった中で,生産性向上の施策を検討する観点を再整理し,プロジェクト実施側の努力のみならずユーザー及びシステムの改善に繋げた事例を紹介する.


他社構築システムの保守引継ぎにおけるプロジェクトマネージメント事例

宮崎 浩樹


他社が構築したシステムの保守を戦略的にリプレースしたプロジェクトに参画し,保守引継ぎ作業を行った.他社が構築したシステムの保守を引継ぐケースはほとんど前例が無かったこと,また,当システムは品質問題により,全国から問合せが多発している状態であったため,引継ぐには非常に高いリスクがあった.このような状況下で,リスク回避策を立案し,計画的にプロジェクトを遂行し,課題解決に向けた施策を着実に実施することにより,無事に保守引継ぎを完了できた.また,引継ぎ後のシステム保守においても,日々の改善活動により問合せ件数半減を達成することができた.本稿では,リスク回避方法や課題克服への取組みと工夫点について述べる.


新人研修における実プロジェクト活用PBLの一考察

宮田 寛子、 五味史充


昨今,Project Based Learning(以下,PBL)は標準的な手法として新人研修に多く取り入れられている.当社も以前から,「システム開発演習」として2週間程度のPBLを新人研修の集大成として組み込んでいる.チームで模擬顧客を相手に開発から納品までプロジェクトを通じ成果物を完成させる経験は,達成感が得られ効果はある.しかし研修のキャパシティの都合で,プロジェクト形式でおこなわれるも開発手法を学ぶに留まり,プロジェクトの本質には迫れていない.本年度は一部の新入社員に対して5か月間に渡る実プロジェクトのPBLを「Fastpath」と名付け,導入している.この新しい試みの設計思想,期待効果と課題を従来PBLとの比較で整理し,真の成長につながるプロジェクトの活用可能性を考察する.


開発効率向上への影響要因に関する考察

宮本 由美、 草刈敏幸、 清水理恵子


一般的に,標準化された作業プロセスに従った開発を繰り返すことによって習熟度が増し,開発効率が向上する傾向がある.したがって、開発にかかる工数を見積もる際には、開発期間中の開発効率の向上を見込むことが多い.しかし,同じ作業プロセスに従って開発を繰り返しても,しばしば開発要員の間で開発効率の向上に差が生じる. システム開発のプロジェクトにおいてQCD(Quality, Cost, Delivery)を達成するためには,見積時の想定通りに開発要員の開発効率が向上することは重要である. そこで,我々は開発効率向上と習熟度評価の関係性に着目し,開発効率向上への影響要因に関して考察する.


技術開発プロジェクトの意思決定におけるバイアスの影響

森 良弘、 北 寿郎


人間の情報収集・処理能力は有限であり、意思決定時に一定のバイアスが働くことは避けられない。経営層のバイアスが原因で経営意思決定を誤った例は多く報告されているが、本研究では技術者や技術者集団の意思決定におけるバイアスに着目して文献や事例の分析を行った。その結果、技術者には二種類のバイアスが存在することが示された。一つ目は人間が意思決定においてリソースを節約しようとする本能的反応に起因した錯覚系のバイアスであり、技術の将来性を無意識のうちに見誤らせる。二つ目は認知的不協和系のバイアスで、対抗技術が現れた際に技術者が自分の技術の優位性を過信してしまう心的合理化反応である。このようなバイアスは、技術の分野に特有の資源配分プロセスを通じて企業戦略にまで影響を与える可能性があることを論じる。


要件定義工程を自工程完結に導く3つのアプローチ

森田 敦子


下流工程で,RD工程が起因の問題が発生しているプロジェクトが多く見られる.第三者監査部門として,RD工程の品質確保に貢献すべく,RDドキュメント検査を実施している.この検査により,RDドキュメントにおける要件要素の充足度向上に一定の効果を上げている.しかし,要件要素の充足度が高くてもRD工程起因の問題は発生する.問題発生の原因はRD工程の計画が十分に行われていないことにあり,その真因はRD工程の計画の難しさにあることが分かった.本論文では,プロジェクトを成功に導くよう,RD工程が自工程完結するための3つのアプローチについて述べる.


中小企業のプロジェクトにおける失敗要因の分析と分類

保田 洋、 西村 治彦


 プロジェクトマネジメントではQCD(品質:Quality,コスト:Cost,納期:Delivery)という言葉がよく使われる。プロジェクトマネジメントにおいて、QCDは重要なマネジメント要素であり、プロジェクトを成功させるために守らなくてはならない項目でもある。  著者らは中小企業への支援活動を行ってきたなかで、ほとんどの企業がプロジェクトを上手く回せないという、問題を抱えている状況が見受けれた。そこで、失敗したプロジェクト内容と要因に関する報告を収集し、プロジェクト毎にQCDへの影響の重み付けを行った。さらに、失敗につながるキーワードを報告から抽出し、失敗要因の分析と分類を実施した。


PMのあるべき姿のモデル化
― 問題プロジェクト事例分析から得た再発防止の取り組み ―

山田 佳邦


当社では2016年度より2年間に渡り,ソフトウェア開発に関わる主要な問題プロジェクトの事例を分析し,再発防止に役立てる取り組みを行ってきた.分析結果を元に,問題を発生させないためのプロジェクトマネジャー(以下PM)のあるべき姿を12の機能ブロックで構成されるモデルとして定義した.モデル化によりPM自身による診断と弱点の発見,PMを遂行しうる人材の選別,および,プロジェクトを推進する組織の弱点発見等の活用が期待できる.本稿ではPMモデルを用いた診断,人材育成を中心に,問題プロジェクト発生防止の取り組みを紹介する.


ITxOTシステムのグローバル体制での開発事例

山村 喜恒


複数の国のメンバーからなるグローバル開発体制では,文化的な背景の違いの認識,コミュニケーションの円滑化,作業内容に応じた柔軟な体制づくりなど国内案件以上にプロジェクトマネジメントが重要になってくる.本稿では,鉄道の車両センサー情報を収集・分析して,運行監視と部品の予防保守を実現する保守支援システムをイギリス,インド,ベトナム,日本のチームが協力して開発した事例を通じて,多国籍メンバでシステムを開発する際の課題や体制づくりの勘所について考察する.


街づくりプロジェクトとソーシャルプロジェクトマネジメント
~IoTを活用したプロジェクトへの展開~

山本 智昭、 吉田憲正、 竹久友二


 現在、当研究会では、社会インフラプロジェクトの事例研究として、総務省の「ICT街づくり」や東日本大震災の復旧・復興の街づくりを研究テーマとし、ICTプロジェクトマネジメントの視点から,知見・知識の集積を行い,知識や理論の体系化を試みている。  このようなプロジェクトを「どう立ち上げ、どういう点に注意しながら、どう発展させていくか」についてはノウハウが必要でありながら、知識の共有化が図られていない状況にある。  当研究会では、その対応として、「ICTスマートタウン」プロジェクトの設立側に立ち、導入・展開における基本的な考え方、留意事項などを実証プロジェクトの成功例・失敗例などから整理し、ガイドラインを作成た。  これにより、新たな「ICTスマートタウン」プロジェクトの考え方と手法を広く社会に発信するとともに、それによる地域活性化を推進することを目的としている。


審査から抽出した弱点の強化による組織としてのプロジェクトマネジメント力向上

吉枝 努


 筆者が全社PMOとして担当する領域でSIプロジェクトの審査が年間300超行われている。多くのプロジェクトは問題なく遂行されているが、中には問題を発生させ費用面で大きな影響を出しているプロジェクトもある。個別の改善対策は行われてきているが、組織として見た場合にはある程度の問題プロジェクトが発生し続けている。  問題発生の原因を近年のより高いレベルのマネジメントが求められる点と捉え、組織内に不足するマネジメントスキルを教育にて補う。審査で問題指摘された事項を収集整理し、教訓としてプロジェクトマネジメント教育資料を作成した。それを用いて、プロジェクトマネージャを対象に教育を行った。また審査側にも審査時の観点を間接的に教育している。  教育アンケート、教育後の審査における問題指摘数の量にて効果測定を行っている。


受注前プロセスのフェーズゲート管理方法改善による組織のマネジメント力強化

吉田 顕治、 長島祥子


日立グループでは,引合~本番稼働までのプロセスをフェーズに分割し,フェーズ間に設けたゲートでそこまでに至るプロセス・次フェーズ移行のための条件の達成状況を審議し意思決定を行う「フェーズゲート管理」というマネジメント手法を採用している.当社では,受注後の開発プロセスを重視し,主に受注・設計・製造・本稼働フェーズのゲート実施に注力してきたが,受注前のリスク洗い出し不足やゲートでの指摘事項対応の刈り取り漏れ等により不採算化する案件が多く発生した.この問題に対し,教育・PMO強化・ルール整備・ツール支援などの多面的な施策により受注前フェーズゲートの管理方法を改善し,組織のマネジメント力強化を図ったのでその活動内容について報告する.


文系女子大学におけるプロジェクトマネジメント教育の意義

吉田 咲子


京都光華女子大学は、2007年に「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP):文部科学省」に選定いただきキャリア教育に取り組んできた。その取り組み目標のひとつに「社会人基礎力の養成」があり、大学教育としての手法を模索した。就職活動に直面する学生からの相談に応える形でプロジェクト活動を支援する経験から、PBL(Project-Based Learning)教育に効果を見出し、キャリア形成学部では2014年度入学生からプロジェクト科目を1年次・2年次必修で履修するに至った。その経緯とプロジェクト科目の到達目標、実践テーマ事例、授業内容と時間外活動について報告する。また、この科目を履修し就職した卒業生の感想を紹介する。


システム開発プロジェクトにおける分散開発環境の
適用可能性に関する研究

吉田 知加、 関 哲朗、 関口 明彦


プロジェクトの成功確保のための手法の1つはco-location,すなわち,開発拠点の集中による効率の確保にあった.変則的ではあるが,Scrumは情報システム開発のリスクヘッジとアジャイル開発の目標を同時に達成する,局所集中開発拠点の一例と言える.一方で,最近の政府主導による働き方改革は,労働者が多様な働き方を選択できるように促している.実際,IT関連の大手企業は,テレワークやサテライト・オフィスにおける就業を推進し,中堅以下企業では作業スペースの縮小による原価低減を図るための在宅勤務を奨励する企業も出てきた.一般に拠点の分散はQCDに対する悪影響は否めない.本研究では,従来の拠点集中型開発環境整備とは異なる昨今の状況に対し,分散開発プロジェクトの必要性を示し,多様な働き方を期待する労働者の期待に応える環境の提案を行うことで,新しい情報サービス産業の労働環境の在り方を考察する.これにより,経営者と労働者の双方の労働環境,開発環境に対する考え方を実証的に考察する基礎を得る.


ソフトウェア再利用が改修プロジェクトの生産性に与える影響の実証分析

吉村 直人、 野中 誠


ソフトウェア改修プロジェクトの工数を精度良く見積もるためには,生産性に影響を与える要因を把握することが重要である.本研究では,改修プロジェクトにおいて,ソフトウェアの再利用が生産性に及ぼす影響を実証的に示す.直近2年間のプロジェクト実績データを分析した結果,プロジェクト外部から導入された再利用コードが多い場合と,既存コードの流用が極めて多い場合に生産性が低下していることが示された.また,小規模改修プロジェクトの生産性が低いことが示された.特に,既存コードの流用が極めて多い場合は,基本設計フェーズと製造フェーズの工数が他に比べて増加していることが示された.


ベイジアンネットワークを用いたリスク構造化手法の提案

渡邊 明日香、 武田 善行


プロジェクトにおいて,リスクはつきものであり,プロジェクトの成否に大きな影響を与える要因の1つといえる.しかし,リスクが顕在化すると軽微なリスクへの対処を怠ったことが原因で,重大なリスクにつながることがよくある.細かなリスクを適切に対処するためには,リスクの早期発見が重要である.本研究では,自然言語処理を用いてリスクに関係のある単語の抽出を行い,ベイジアンネットワークを用いて原因と結果がお互いに影響を及ぼしながら発生する現象をネットワーク図という形で求める.結果として,リスク間のかかわりを可視化する.また,大きなリスクに発展する可能性のあるリスクを明らかにし,リスクの早期発見・対処が可能な構造化を導き出す.