学会概要

1.学会の意義

1)学問としてのプロジェクトマネジメント

「プロジェクトマネジメント」は馴染みのある言葉である一方で,これを厳密に定義することが 難しい言葉の1つです.これは,これまでにプロジェクトマネジメントをサイエンスとして議論し,整理されることが無かったためと考えられます.

欧米を中心とした多くの大学などで,プロジェクマネジメントの名を取り入れた科目,コースの設定はなされていますが,プロジェクトマネジメントを学問の体系として,研究を推進しているところはあまりみられません. 当然,プロジェクトマネジメント学を中心的専門領域とする当学会は世界でも貴重な存在となります

 

2)実学としてのプロジェクトマネジメント

プロジェクト・マネジメントを実践されている企業や団体での当学会への期待にはたいへん大きいものが感じられます.プロジェクトマネジメントは,世界的にも企業の目標達成や,経営の成否に直接関係するものとして認識されてきています. これまでもエンジニアリング,建設,情報,通信,製造,サービスなどの領域では,実務として継続的に取組みがなされてきました. しかし,近年の情報技術(IT)の急速な発展とともに,とくにITシステム構築の分野では先進的な企業を中心として,経営層のトップからも体系的なプロジェクト・マネジメントへの取組み姿勢が極めて明確に打ち出されています.

こういった,各企業のプロジェクト・ベースのビジネス遂行の必要性から生じる強いニーズにも応えられるよう,当学会では例として次のような活動が考えられています. これらを通じた成果への期待としては,企業の生命線ともいわれるプロジェクトマネジメントの質的向上や,参画企業内のエンパワーメントに結びつけられることです.

業界共通の基礎知識体系としてはPMBOK(Project Management Body of Knowledge)があります.これはいわばデファクト・スタンダードとなってきました. この存在意義はたいへん大きく,実学としての発展や具体的な成果に大きな寄与をしています. 実プロジェクトで日々得られているデータやノウハウは,この体系のどこに位置づけされ,経営にとってどのような効果を生むかなどについて追求することで,さらにこの知識体系を発展させることが期待されます.

企業でのプロジェクトマネジメントの適用分野からみると,PMBOKだけでは必須知識としての不足感が否めません. そこで,データに裏付けられたどのような経験則がPMBOKの周囲に実在し,それらは学問的に検証できる普遍的なことなのか,あるいは適用分野を限ってのことなのか,などの実際に沿った研究も進めたいと考えます. 当学会は幸い,データの豊富な多くの企業の参画を得ており,経営者からのニーズも強いこのような面での研究成果が期待されます.

世界的にITシステム構築プロジェクトの失敗の率はきわめて高いと報告されています.この分野のプロジェクトは日本でも多数実施されており,企業にとっても社会にとっても失敗の影響ははかりしれません. 多数を占めるIT分野の会員により,急速に発展しているITシステム構築プロジェクトに的を絞った研究成果の発表とその活用が期待されます.

2.学会への参加者

1)大学・研究機関の研究者

科学,工学など学問的成果に基づいてプロジェクトマネジメントを研究する新しい学問領域の設立が始まっています.研究者としては,次のような活動が歓迎されると考えられます:

現在と将来の多くのプロジェクトに対して,科学・工学的,社会科学的あるいは政策科学的適用方法論的知識を適用することにより,いろいろな事実に基づいて分析的に新しいプロジェクトマネジントを明らかにすることを期待できるでしょう. 研究成果を学術論文として発表し,相互利用を可能とすることにより,成功のためのプロジェクトマネジメント全体を探求するコミュニティの形成が行われるでしょう.

大学施設や研究施設を構築しサービスを提供する場合に,これらをプロジェクトとして設計し実施することにより,高度のプロジェクトマネジメント技術・手法を実現して,世の中に対して本当にインパクトのある優れた研究成果を実現できると期待できると思います.

2)公的機関の実務家

運輸・環境・通信・行政などの公的機関を担当される実務家にとって,街単位のプロジェクトから国家的あるいは世界的,社会科学的あるいは政策科学的視野が必要な複雑なプロジェクトマネジメントを行わなければなりません. 現在のプロジェクトマネジメントをさらに効果的に成功裏に完了しつつ,21世紀の新しい科学・技術の政策等をふくめて,大規模社会投資を成功させるには,従来型のプロジェクトに囚われないプロジェクトマネジメントが必要になり,そのための新しい技術的基礎を確立する必要があるでしょう. そのようなプロジェクトを依頼する側からの研究も大いに歓迎されます.

3)民間企業の経営者・実務家

プロフェッショナルとしてプロジェクトマネジメントを実践されている方々の学会への加入は,大いに歓迎されます. 自己のスキル,知識,思考の幅を広げるチャンスがあるだけでなく,積極的に活動されることにより,PMを極めるため,あるいは成功のための継続的な動機づけとなります. また,経営者の方々にとっては,経営や社会まで左右するといわれるプロジェクト・マネジメントに関する活動によって,自社の関係者への強いエンパワーメントと,適切な判断への寄与が期待されます.法人会員としてのご入会も大歓迎です.

4)大学院生・学生

新しい学問領域としてのプロジェクトマネジメント学の研究に効果的に参加できます.この学会では,次の活動が出来るようになります:

プロジェクトマネジメント固有の研究や応用事例などを踏まえた現実のプロジェクトマネジメントについて学び,学術論文として発表することができます. 日常の学習から卒業研究,修士・博士研究において,プロジェクトマネジメントの観点を取り入れること,あるいは,よりよいプロジェクトマネジメントを研究利用することで,研究の高い目標を達成できると期待されます.

3.学会設立の経緯

 「プロジェクトマネジメント学」(Project Management Science)に対して研究者と実務家に期待が高まり,戦略的課題を科学知識によって解決しうる実践的学理体系と方法論に関心が深まっています.  学会は非営利・営利組織を問わず社会が要請する学問体系,能力開発,方法論を追求する任務を帯びている.  当学会は産業界,官界,学界の理論,実務知識と科学知識を融合し,日本から世界に向けてプロジェクトマネジメントを発信する組識として設立いたします.